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借入をしない土地活用のポイント

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「ビルの修繕費が予想外にかかりそうだね。子供たちは不動産経営したことないしね。」とC社長。先代のときに建てた築70年の本社兼賃貸ビルを保有しています。土地は社長の個人名義ですが、建物は会社の所有です。

C社長と奥様、次女は、都内の自宅で同居しています。長女は結婚して、サラリーマンのご主人と海外に赴任をしているので、今後どうしたものかと思案中です。

 

1.建替えか、リノベーションか

ビルが老朽化してきますと、当然ながら修繕費など増えてきます。リノベーションするか、それとも建替かえてしまうのか。建替えるにしても、解体費、立退き費、建物の建築コストなどが予想外にかかるようです。C社長の悩みは尽きません。

メインバンクの担当者も買い替え、建替え、リノベーションなど色々と相談にはのってくれます。銀行としても絶好の商売チャンスですから、支店長も前のめりです。仲介会社や建築業者さんも熱心に営業をかけてくるのですが、今一つ気が進みません。

会社として借入は嫌だし、奥様も子供たちも会社経営や不動産経営に関心がないので、きっかけをつかめぬまま、今日にいたっています。ただ、奥様と次女のこれからのことを考えると定期収入は確保しておきたいので、なるべく手間をかけずに、土地を活用する方法を検討中、ということでした。

借入をしないで、一定期間経過後に、土地が返還される仕組みで検討してみました。

 

2.定期借地と土地信託

土地を売却せず、建物を自分で建設しないで有効利用をする方法として定期借地権を活用する方法と、土地信託を活用する方法が考えられます。

定期借地権とは、借地権の一種ですが、通常の借地権と異なり、当初定められた契約期間で借地関係が終了し、その後は更新できないもののことです。
土地の所有者が、定期借地権として借主に土地を貸して、一定期間後に土地を返還します。

土地信託とは、土地の所有(委託者)が、土地を信託銀行や信託会社など(受託者)に信託して、所有者の代わりに土地の有効活用を行い、その利益を所有者に交付するものです。信託期間が終われば、土地は所有者に返還されます。

定期借地権でしたら、土地を一定期間貸すだけです。土地信託でしたら、信託会社などに土地を信託して、後はお任せになります。

そもそもどのような活用事例があるのか、どう違うのか、など疑問が湧いてくると思います。

 

3.豊島区の新庁舎建設

豊島区では現在の庁舎の建設にあたり、色々な報告書を公開しています。昔の資料なのですが、検討状況をまとめた「新庁舎整備の検討のまとめ―整備方針(案)-」のなかに定期借地権方式と土地信託方式を比較した表があり、分かりやすくまとまっています。収入、収益性についてのコメントは下記のとおりです。

【定期借地】
・収入:貸付料(地代)
・収益性:土地信託方式と比較すると収益が少ない可能性もあるが、事業着手前に額が確定する

【土地信託】
・収入:信託配当
・収益性:区が行う場合、事業収益に税がかからないなど、一般的に定期借地権に比べ収益性が高いが、入居率等により配当額が変動し、事業着手前に収益額が確定しない

結果として豊島区は、収益性を追求できるが実績配当の信託方式でなく、収入が確定している定期借地権方式を採用しています。

ちなみに、前回のコラム、前々回のコラムで路線価評価額(相続税評価額)と時価のことを話題にしました。昔の数字になりますが、報告書に記載された金額を比較してみますと、旧庁舎の路線価評価額101億円に対して、売買評価額は440億円と記載されていました。

 

4.大手町プレイスと東京ミッドタウン

一方で、昨年に土地信託を活用した事業で、不動産業界の注目を集めたものがあります。
東京駅近隣の千代田区大手町にある超高層ビルの「大手町プレイス」です。国がフロアの大部分を実質的に保有する土地信託物件です。

国立印刷局や逓信総合博物館などが入居するビルなどがありました。入居者が順次移転した跡地を信託銀行が土地信託として受託した後、再開発してできた複合ビルです。

国有地は、土地のまま民間に売却されるのが一般的です。たとえば、東京・六本木の防衛庁の庁舎跡地を民間に売却して、「東京ミッドタウン」として再開発されました。土地を直接的に民間に売却しています。

ところが「大手町プレイス」は、国が土地を民間に売却するのでなく、土地を再開発してから売却をしています。つまり、国有地に付加価値をつけて、売却収入の最大化を図っている点が、これまでの国有地の売却と異なります。

豊島区の新庁舎建設では収益性より安定性でしたが、大手町プレイスの場合は収益性重視ですので、信託が活用されています。

 

5.まとめ

どちらが有利かというより、目的は何か、で手段がかわるということになります。 安定性は定期借地、収益性は土地信託が有利、ということになります。

そもそも定期借地や土地信託は、あまり馴染のある制度ではありませんし、どの土地にも可能なものではありません。まず、活用が可能かどうか、を確認する必要があります。

C社長が望むことは、自分の代では売却したくないこと、配偶者や子供達に負担がないこと、利回りよりも安定性ということでした。大きな方向性が決まりましたので、後は手段ごとに比較していくだけです。

ただ、自分で全てを手配し、判断して、選択をして、選ばなかった業者さんにお詫びの連絡をして、となると大変です。やはり、良い相談相手を窓口にしたほうがよいと思います。
では、良い相談相手の条件とはなんでしょうか。

  • 相談者と家族の意向を十分にくみとること。
  • 手段と目的をまちがえないこと。
  • 自分のサービス、商品を背負っていないこと。
  • 中立的な立場であること。
  • 長い時間軸や大きな視点でアドバイスができること。

大事なところは、以上かなと思います。

土地活用というと自分で借入をして、建物を建てるということを考えがちです。しかし、借入せずに、自分の目的を達成する方法があるかもしれないですよ、というコラムでした。

 

 

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