資金繰りが苦しくなる会社の3つのパターン
多くの社長は、売上を増やせば潰れない会社になる…、資金繰りの心配もなくなる…と考えます。
しかし、それは間違いです。売上を増やすことイコール「潰れない会社になる」では、ありません。「売上を増やすこと」と「潰れない会社になること」は、別次元の話です。
会社が潰れるのは、会社のお金が尽きた時です。しっかりとお金が残る仕組みがあるからこそ、事業は永続していきます。
ですから、社長は絶対に資金ショートさせてはいけません。資金繰りの悩みは、すぐに解決しなければならない一大事です。
ところが、多くの社長が資金繰りの問題を解決出来ないまま何年も過ごしています。なぜでしょうか?
「売上を増やせば、潰れない会社になる」と誤解している点に加え、資金繰りが苦しくなる根本原因を正しく把握出来ていないことが挙げられます。また、対応策が悪い場合もあります。
資金繰りが苦しくなる要因は大きく分けて3つです。
1つ目は、純粋な入出金のタイムラグの問題です。
多くの企業では、材料の仕入、外注費の支払いなど、先に支出が発生します。製造業であれば、商品・製品が完成して、店頭に並び、お客様がお買い上げをして入金されます。
入金がないまま支出が増え続ければ、当然、資金繰りは苦しくなります。特に、受注型のビジネスや下請けモデルだったり、入金方法が手形だったりすると、さらに入金までの時間軸が伸びます。
この場合、可能な限り支出より入金が先に来るように、ビジネスの導線設計を全体的に見直す必要があります。お金のもらい方や支払い方、ビジネスする相手など、ゼロベースで再設計するのが近道です。
その上で、どうしても解消が難しい場合は、銀行借入を上手に活用していきながら、手元資金を蓄えていくことが先決です。
2つめの要因は、「そもそも利益が出ていない」ケースです。一言で言うと「経営すればするほど、資金が減っていく」状態です。
最も深刻かつ、早期に対処しないと状況はますます悪化していきます。
これは、社長の経営判断そのものに根本的な問題があります。売上高から売上原価を引いた粗利が、固定費を賄うために必要なレベルに確保出来ていないからです。
粗利の金額が少ない、売上の絶対量の不足、値付けが間違っている、固定費が重すぎるなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。
まずは全ての要因をリストアップし、優先順位と重要度を考慮した上で、段取りよく手を打っていく必要があります。時には、厳しい決断も必要になるかもしれませんが、大切なのは、早くスタートすることです。
3つめの要因は、「毎月の借入金の支払金額が重すぎる、ペースが早すぎる」パターンです。
過剰な設備投資を銀行借入で賄っていたり、赤字を銀行借入でしのいでいたら雪だるま式に増えていたりします。
この場合、返済よりも、手元資金を留保して、経営の安定を図ることが先決です。なぜなら、手元資金が枯渇した状態だと、社長自身が不安すぎて思考停止に陥るからです。
人間は、誰しも一日24時間です。100%事業に専念できる社長と、いつも資金繰りの心配している社長とでは、どちらがより良い経営ができるでしょうか。
事業経営において、資金の余裕は心の余裕です。無理に借入金返済を急ぐのではなく、借り換えなどを銀行と相談して、「経営のことを考える時間を確保する」のが先決です。
大切なことは、社長自身が財務の視点から資金繰りの課題と向き合い、正しい優先順位で根本的な課題解決をすることです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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