志とは
コンサルティングの仕事以外にも私は大学から非常勤講師の仕事をいただいています。その関係で若者たちと就職に関わる話をする機会も少なくないのですが、人生の節目に関わる課題だけに、若者たちはいつの時代も真剣に自分たちの未来と向き合おうとしています。「志とは何ですか?」「夢と志はどう違うのですか?」大学生からそんな質問をぶつけられたら、あなたならどう答えますか?
これは学生であろうと社会人であろうと、はたまた経営者であっても、個人にとっては依然として重要な問いかけです。なぜなら志こそが全ての行動に対する原動力になるからです。志によって他と交わり、志を果たすために社会でビジネスをする。つまり、志の向く先は常に外、そして他人であることが夢との大きな違いである、夢はあくまで自分中心に語るもの、自分のあるべき未来を可視化するプロセスから生まれるものである、私はそんなふうに説明しています。
なかなか難しい区別に聞こえるかもしれませんが、企業経営に落とし込んでみると意外とすっきり整理することができます。経営戦略の元になる経営理念を構築するとき、夢を起点に考えると、議論の軸は「自社がどうありたいか」に終始することになります。世の中には実際そういう会社も存在しているのですが、社訓には「自社がどうありたいか」「社員にとってどういう会社になろうとするのか」みたいなフレーズばかりが載っています。それはそれで悪いことではないのでしょうが、世間からは果たしてどう見えるのか、と思ってしまいます。
他方で志を軸に考えると、それはすなわち社会への貢献や還元が色濃く表れるものになります。半ば自然と対顧客、対地域社会、対株主といった様々な切り口から、貢献や還元についてのあり方を説明する内容になるのですが、そのような視点で語られた言葉こそ経営理念の表現としてふさわしいと言えるのです。
「でも、社会貢献を前面に出すと、収益の追求がおろそかになりませんか?」という疑問を呈されることもよくあります。よく知られた言葉ですが、かの二宮尊徳が語ったといわれる「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である。」に象徴されるとおり、「経済なき道徳」、つまり収益を追求しない社会貢献は寝言にすぎない、と言えましょう。
志を高く持つこと、そしてそれを理念化し、経営に心棒を通すこと。そこに集まる人々の力を最大限発揮させ、やがては社会を変えて行くこと。それこそが経営の醍醐味であり、そのためのスタート地点こそが「志」なのだということを、ぜひとも再認識いただきたいと思います。
志高清遠。「しこうしょうおん」と読みます。志、高く、清く、遠く。私の座右の銘です。ビジネスを通じて志を実現しようとする経営者を、当社は常に全力でサポートしています。
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