第57話 お客様の方から、声をかけてもらう方法
「うちは、お客様の要望にこたえ続けてきたのですが、気づいたら先生からご指摘があった『よろず屋』になってしまっていたようです。」
当社にご相談にこられた経営者のコメントです。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
こちらの会社は、特定の業界向けに様々な機器を販売する商社です。もう、何十年とご商売を続けてこられて、お客様のご要望にあわせて品ぞろえを増やしていったそうです。
ここ数年は、既存のお客様からの注文も減ってきており、ご商売が厳しくなってきているとのことでした。
既存のお客様だけでは、この先も厳しさが増していくことは見えていたので、なんとか新規の取引先を増やさなければならない状況で、当社の本を読まれたり、セミナーに参加されたりして今後の展開を考えていたとのことでした。
そこで冒頭のコメントにあるように、気づいたら「よろず屋」になってしまっており、非常によろしくない状態に陥っていると感じたそうです。
既存のお客様のご要望にこたえながら、商品・サービスの品ぞろえをふやしていくことは、ある意味では正しい判断で、それなりに売上に貢献することと思います。
しかし、一方で、これを続けていくと、何をやっている会社か分からなくなってしまったり、特徴のない事業に見えてきたりすることがあります。これを当社は、「よろず屋」と呼んで、そうならないように啓蒙しています。
「よろず屋」にならないことを推奨する理由のひとつは、新規のお客様の選択肢に入りづらいからです。たとえば、飲食店で、ラーメン、うどん、カレー、焼き魚、ハンバーグ、てんぷらと並んでいるお店で、一見すると特徴がない「よろず屋」的なお店があったとします。一般的にこのようなお店は、カレー一筋でこだわりの品を提供しているような尖ったお店と比較すると、新規のお客様の獲得に苦戦します。
また、そのような「よろず屋」的なお店で、仮にお客様にどれがお勧めですか?と聞かれると決まって「全部お勧めです!」と答えていたとします。そうすると、商品(メニュー)が記憶に残りにくくなってしまい、リピートにもつながりにくくなってしまいます。
もちろん、ご商売のスタンスですから、そのような「よろず屋」的な品ぞろえが全て悪いということではありません。考えなければならないポイントは、常に新規のお客様は、競合店と比較してお店を選ぶということであり、「よろず屋」は、新規客を取り込みにくい状況になりがちということです。
「よろず屋」の回避を考えるときに、この競合という視点が常に重要な要素となります。特に、苦境におちいってしまい、そこから抜け出す戦略を考える際には、目を背けてはいけない要素となります。
しかし、実際には、競合視点がなく、お客様に喜ばれることをしようと、いろんな発想で売上アップを考えて商品・サービスを広げるものの、なかなかその先の新しいお客様に広がっていかないという状況を招いてしまいます。これまで、そういう失敗例をたくさん見てきました。
この繰り返しをいつまでやっていても、カテゴリーキラーは生まれません。カテゴリーキラーは、競合他社を圧倒する、強い商品・サービス・事業のことを指します。
商社であれば、品ぞろえやそれに付随するサービスに一貫性を持ち、「〇〇といえば、ABC商事だね」というように、競合を圧倒するポジショニングを意識してつくっていく必要があるのです。
では、〇〇といえば、の〇〇は何なのか?ここを、綿密に市場環境を踏まえて設計する必要がありますし、長年のご商売の中で、常に競合環境は変わっていきますので、状況に応じて変化させていくことも大切です。
ここで気をつけなければならないことは、競合をしっかりと意識されている場合でも、あまりにも競合の勢いが強くて、競合と同じようなことをしてしまうケースです。
例えば、大手企業が、自社の領域まで入ってきて、売上シェアを奪っているようなケースです。中小企業がそのような大手企業を見ると、うちも同じことをやって巻き返そうと思ってしまいがちです。これは、カテゴリーキラーの考え方の逆を行うことになります。つまり、競合との同質化です。相手が自社より弱ければ、話は別ですが、相手が自社より強い場合に同質化してしまっては、大手企業の思うつぼです。状況は、益々厳しくなるでしょう。
これは、本当によくあることで、当社のコンサルティングでもその間違いに気づいてもらい、軌道修正してもらったケースが複数あります。
ひとつわかりやすい例で説明いたします。
以前、個人店のラーメン屋さんのコンサルティングを行ったことがあります。その個人のラーメン屋さんは、ある日、道をはさんで反対側に大手のラーメンチェーン店が出店してきました。そして、自店の新規のお客様がどんどん減っていき、経営状態が悪化しました。
そこで、この個人店の経営者が考えていたのは、大手のラーメンチェーン店を見習って、若者向けのメニュー開発し、品ぞろえを増やすという案でした。これは、非常に危険で、まさに「よろず屋」となり、大手のラーメンチェーン店と同質化を招いてしまいます。
当社は、この考えを否定して、個人ラーメン店の強みをしっかりと活かした、メニューの再構築を提案しました。大手ラーメンチェーン店には、絶対にまねできない、そういう領域で勝負することを強くお勧めしたのです。
結果としては、この施策が非常にうまくいき、新規客が増え、経営状態もみるみるよくなって、事業を継続することができました。(詳しくは、当社のお客様の声のページをご覧ください)
この話をするとラーメン屋さんのお話だから、あまり関係がないと思われる方もいらっしゃるのですが、業界を変えても私どもが見ている視点は同じということです。
もし、あなたの会社の商品・サービスが何屋かわからなかったり、何屋かはなんとなくわかるが、一番の売りがわからなかったりしていれば、それは「よろず屋」的な傾向になっている可能性があります。
その場合は、せっかくの新規のお客様は、あなたの会社の前を素通りするだけで、いつまでも声をかけてもらうことはないでしょう。とても、もったいない状況になっています。
全てのお客様との接点で、しっかりと、あなたは、何者なのか?何が売りなのか?そういったことが、しっかりと伝わっているか今一度確認していただければと思います。
もし、この「よろず屋」という課題を突破して、あなたの商品・サービス・事業がカテゴリーキラーとなることができれば、新規のお客様は、向こうから声をかけてくれるようになります。私どもは、これまでに何度もそのような突破体験をされた会社を見てきました。
もし、あなたがもう一歩突き抜けた売上成果を生み出したいと考えているとすれば、「よろず屋」という点について今一度よくよく考えて頂ければと思います。
あなたの会社の商品・サービスは「よろず屋」になっていませんか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
村松 勝
【追伸】
当社の経営者セミナーでは、カテゴリーキラーを生み出していくやり方から、効果の高い販売方法まで、一連の流れと重要ポイントについて、4時間かけて丁寧に解説しています。
厳しい現状から抜け出し、自社商品・サービスをもっと市場に浸透させたい、業界の中で、確固たるブランドにしていきたいと本気で考えている経営者にお勧めします。
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