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『ジェンダー』考

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指します。人間社会での男性と女性の役割の違いによって生まれる性別のことです。

一部の現代人は、古代人に比べると体力的な男女差を意識することなく役割を果たせる環境になりました。そういった背景や、性別(sex)とジェンダー(gender)の組み合わせの多様性を受け入れようといった考え方も一部の国で広がってきています。

いっぽう私たちの社会には、体力が必要な役割を専ら女性が担っていて、男性はほとんど体力を必要としない役割に専念しているという現実も存在しています。経済の中でのジェンダー(gender)には矛盾が内包されているのです。

経営者の方と話す機会の中にもジェンダー(gender)を考えさせられることがあります。世相を表す「生の声」です。最近出会った「シーン」をご紹介します。

 

総合不動産系N社の巻

 

 

N社は総合不動産系の中堅どころです。新卒の定期採用もされていて、最近では男女比率は半々ぐらいになっているようです。採用の話題から、N社長の「男女観」が漏れてきました。

 

N社長「以前はね。数年で退職しちゃうことが多いので、女子はちょっと。。。って感じがあったんですけどね。最近は変わってきました」

吉岡「確かに以前はそうでしたよね。女子は自動的に採用条件が違ってたりしましたよね。N社では、どのように変わりました?」

N社長「もちろん採用条件は同じですが、むしろ女子のほうがいいかなって」(声をひそめて)「最近は、そんなに昔ほど結婚したり出産したりしないんですよ。。。」

吉岡「へー。そうかもですね(笑)」「仕事ぶりではいかがですか?」

N社長「女子のほうがいいですね」「男子は時間がかかる。のんびりしてます」「その割に辞めたりするんですね。これが」

吉岡「辞めちゃうのは転職ですか?」

N社長「そうです。何がしたいのかふらふらしてる」「能力が同じなら、圧倒的に女子が優秀です。肝がすわってる気がします」

吉岡「N社は福利厚生もちゃんとしているから、女子にも人気なのではないですか?」

N社長「そうですね。リモート勤務なんかも女子のほうが上手にできますね」「男子はイマイチなのでここのところ会社としてはリモート比率どんどん下げてます」

吉岡「リモートが定着したほうが会社も都合がいい面があるのでは?」

N社長「男子はね。いろいろ迷惑かかるんですよ。他の人に」「なんですかねえ。この違いは。。。」「かといって、このご時世で男子にだけリモート禁止って訳にもいかないですし」

 

その後「男子のやらかした、いろいろあった事」も聴かせてもらいました。平均年齢が高くて、比較的規模の大きいN社の場合は、女子をオフィスから隔離しているほうがよく働けるのだそうです。また、その環境条件を好んで入社希望も多いとのこと。なんだか、分かるような気がする話です。

 

                                          ↑「能力が同じなら、圧倒的に女子が優秀」とN社長

 

 

 

マルチ工務店E社の巻

 

 

E社長は二代目経営者です。先代から引き継いだ会社は、あたらしい取り組みにも多くチャレンジしています。先代の時代から外部の専門家との連携が上手な会社で、最近では大工職の若い社員も増えてきました。

 

吉岡「若手の社員大工さんも増えてきて、頼もしくなってきましたね」

E社長「ようやくアフター・リフォーム事業でも黒字が出せるようになってきました」

吉岡「新築部門とアフター・リフォーム事業で社員大工さんも担当を分けているのですか?」

E社長「分けています。若い人たちは、新築よりもリフォームとかリノベーションをやりたい人が多いんです」

吉岡「E社の場合、新築のほうが花形という感じありますけど。。。」

E社長「そうなんですけど。。。若い人の目で見た新築部門は面白くないみたいなんです」

吉岡「え。どういうところが面白くないんでしょうか?」

E社長「なんだか制約ばっかで大変。自由度がないイメージみたいです」「確かに以前と比べてルールや書類もどんどん増えてくるし、土地も総額も上がってきて予算に余裕がないし。。。というところはありますよね」「その点、リフォーム・リノベーションのほうが大変だけど表現の自由があるということを言いますよね」

吉岡「なるほど。確かにそうかもしれない。」「女子の大工さんもいらっしゃると聞きましたが、どうですか?」

E社長「そうなんです。頑張ってくれてます」「でも、どうしても先輩大工さん(男子)のようには動けない。やっぱり体力的に限界を感じてしまうので、職種を現場管理とか設計とかに変えてもらえないかという相談がきてます」

吉岡「それはありますよね。仕事の性質上、先々もリモート勤務とか無理ですしね」

E社長「そうそう。やんちゃでふらふらしてる男の子よりずっといいんですけどね。彼女は」

吉岡「イマドキの男の子もやんちゃな子が入ってきますか?」

E社長「いやあ。男の子はそんなのばっかですよ。お盆に帰省したら帰ってこなかったり。。。まあ時間がかかりますわ。社会的なところから教えないといけないですから。。。」

 

こちらでも「男の子たちのやらかした談」の数々を聴かせていただきました。男女ともに若い人たちが「新築」よりも「リフォーム・リノベーション」をやりたいというのは意外だったのですが、時流かもしれません。確かに「新築」の世界には「大人の事情」といった数々の制約が、屋上屋のごとく重なってきているような印象を持ちます。若い人は冷静にそこをよく見ているのかもしれません。

 

↑「現場女子」の体力的なハンディと限界に悩むE社長

 

 

 

個性派工務店H社の巻

 

 

H社は小さいながらも「ピリッとこだわった家づくり」を標榜する工務店です。また、今の時代でも好調を続けている工務店でもあります。H社長とは、お互い営業マンであった時代からの知人です。久しぶりに会って話す機会が持てて、近況をH社WEBサイトのスタッフ紹介を見ながら聴かせてもらった際のことです。

 

吉岡「H社のスタッフの人は皆さん長いんですか?」

H社長「そうですね。結構長い人が多いですよ。写真は若いままですが(笑)」

吉岡「女性スタッフも結構いらっしゃいますが、パートタイムとかですか?イベントの際の休日出勤とか、どうしてもありますよね。そういうときはお願いできてます?」

H社長(指差しながら)「この人は、営業マン時代からずっと一緒にやってもらってる人なので、時間外勤務とか、休日出勤とか融通きかせてやってくれてます。本当助かってますが、最近うちみたいな小さい会社にまで労働基準監督署が来たりして」「何かとうるさくなりましたよねー」

吉岡「そうですね。政府主導でいろいろやってますよね」「小規模な会社ではやりくり大変ですよね。結局社長がいろいろやらなくてはカバーできないですよね。コンビニみたいに」

H社長「そうなんですよ!本当に」「潰す気か💢って感じです」

H社長(また指差しながら)「でもね。この人とか、この人は、実はフルリモート勤務なんですよ」「この人なんかは家を県外に建てちゃってて遠いんです」「女性のほうが、限られた時間で「結果」を出す意識が絶対強いですよね。リモート向きですよ絶対」

吉岡「へー。すごいですね」「イマドキな感じですねえ。すごい」

H社長(小声になって)「しかし、最近LINEとかで仕事のやり取りするでしょう?あれ、時間外勤務の証拠になるんじゃないかってビクビクしてたりして。。。かといって電話する時間帯じゃなかったりするし」

吉岡「いやー。それってあるあるかもしれませんね。完全に証拠ですよそれ」

H社長(小声から大きくなって)「そうでしょう。やっぱり」「やばいですよねー」

H社長「でもね。いまさら元には戻れないですよ」「うちはリモートのひとやこっそり休日出勤してくれるパートさんでもってるようなもんですから」

H社長「労働基準監督署の目を逃れるのにも、リモートがいいです。ぶっちゃけ」

吉岡「社員ではなくて、フリーランスになってもらって、仕事はこれまで通りっていうパターンもありますよね」

H社長(また指差しながら)「このひとは、そのパターンなんですよ。実は」

吉岡「おー。進んでますね。H社は」「WEBサイトを見る限りはぜんぜん分かりませんけど、それで安定して仕事がまわってくれるなら、それに越したことはないですものね」

H社長「そうなんですよ」

H社長(また小声になって)「給料が高いの安いのとか、誰がいくらもらってるのだとかも、お互い分からないからいいんです」

吉岡「なるほどー」

H社長(さらに小声になって)「全員集合の懇親会とかはとても危険なんですけどね。酔った勢いでいろいろバレちゃいそうで。最近コロナでやらなくていいので安心ですけど。。。」

吉岡「はー。いろいろ心配事がありますね」

 

ローカルエリアを営業基盤とするH社長が、様々な労働形態を組み合わせて事業運営をされているのは、とても意外でした。しかし、人材確保が厳しい地方都市こそ現代の労働環境を活かすか否かが、会社の発展の鍵を握っているのです。

 

女性だけに「ガラスの天井」・・・2018年には東京医科大など10大学の医学部入試で女性受験生らを不利に扱う得点操作などが発覚しました。おそらくは慣例として長い間続けられてきたものでしょう。その中でも見事医学部に合格し、医師となって活躍されている女性は相当な方々かと思います。

3人の社長の話の中からも、共通して女性に対しての「高評価」と「期待感」が感じ取れたのではないかと思います。中小企業だからこそ大変な面もありますが、中小企業だからこそ制度に縛られ過ぎずに、うまく立ち回りたいものです。人材の面では特にそのように思いました。

 

 

↑「リモート対応力」でも女子に軍配があがる?

 

 

↑「高リモート率」で労働基準監督署対策をするH社長

 

 

 

社長の会社では「働きかた改革」に取り組んでおられますか?「働きかた改革」は「働かせかた改革」でもあり、社長自身の問題でもありです。なぜなら、それによって社長の「働きかた」が大きく変わるからです。

 

 

 

 

 

 

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