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コロナで進む旅行のデジタル化(アメリカ編)

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

本コラムは、丁度2023年初にあたり、実はロサンゼルスの空港で書いています。非常に久しぶりの海外出張ですし、私自身も国外に出て良いものかどうか非常に迷いましたが、テクノロジーの世界の動きを見ていると「もはや止まってもいられないので動き出すモード」になっていると判断した為、意を決して米国行きの航空券を予約しました。

今回の出張の目的は、毎年年初にラスベガスで開催されているテック系の巨大展示会「CES」の展示視察及び併催カンファレンスへの参加です。CESには過去4回程参加しているはずなので、慣れていると言えば慣れていますが、いかんせん15年ぶりの参加であるため、訪米の環境自体が大きく激変しており、恥ずかしながら大いに戸惑いながらの旅路になっています。

さて、CESの中身については追々まとめて解説するとして、今回のコラムのタイトル「旅行のデジタル化」について、見聞きしたことと雑感を述べたいと思います。

大いに参考になったのは、「何をするにもデジタルファーストである」ことです。いくつかの驚きや気づきがあったのですが、そのうちの2事例を紹介しましょう。

一つ目の驚きは、まず展示会自体がデジタルツールを上手く活用することで参加者や出展社に大きなメリットを出している点です。日本の展示会でもスマートフォンアプリを活用する動きはありますが、徹底してデジタル化している点が異なります。まだ荒削りの部分はあるのですが、面白いのが「オンライン参加との垣根を無くす」という考え方です。何しろ巨大な会場がいくつもあり、その間の物理的な移動に時間と労力がかかります。聞きたいキーノートスピーチがあったとしても自分が今居る展示会場から離れている場合は移動時間だけでも渋滞の中の移動や巨大な会場の中での徒歩移動を含めると1時間弱かかり、かなりの時間を消耗してしまうことになります。

日本の展示会であれば「オンライン会場はオンライン参加者向け」という割り切り方をしていることが多く見かけられますが、CESはひと味違います。現地参加している人でも、離れた会場のキーノートやカンファレンスを「なんなら、移動せずにアプリでその場から聴講しては?」というノリで機能を提供しています。これは巨大な展示会で右往左往する参加者にとってはとても負担が減る改革ですね。聴講者がオンライン側に行ってしまい、会場参加の数が減るとスピーカーに対して失礼だ、という意識が働いていることが日本で中途半端になってしまっている原因でしょうか?デジタルと現場参加の境目を無くす…。これはコロナで我々も気がつかされたデジタルのうまい活用方法だったはずです。日本でもこのような割り切った使い分けをするように英断頂きたいものです。

二つ目の驚きは、ホテルです。ホテルのオンラン予約は全世界どこでも進んでいます。しかし、関心したのは「今日はチェックインされる日ですね。オンラインでチェックインすると、フロントでの手続きが不要になりますよ。」という案内が来たことです。メールで来たその通知には「チェックインする」のリンクボタンが書かれており、それをクリックすると宿泊カードに記載する情報の入力画面と、クレジットカードの登録画面が現れ、それらを入力すると最後にQRコードが表示されます。そのQRコードをホテルのフロントに並んでいる自動鍵貸し機にかざすとルームキーが出てくる仕掛けです。もうちょっと進んだホテルの場合、宿泊者のスマートフォン自体がルームキーになってしまいますので、フロントに行く用事が全くありません。何らかの追加サービスを使った場合には、先に登録したカードに全てチャージされるようになっています。チェックアウトもオンラインでボタン一発で済みますし、カード式のホテルでもカードを返すポストがあるだけです。領収書はチェックアウト直後にメールで送信されてくるので、不便が全くありません。

実際、私はオンラインチェックインでしたので難を逃れましたが、ホテルのフロントの前にはオンライン処理をしなかった人達が数十名も並んで長時間待たされていました。それに比べるとQRコードを端末にかざしてカードが出てくるまではものの数十秒です。列もありませんでしたのでストレスフリーでした。少し使い方が難しかったので、となりの端末の操作を苦労していた人をアシストしてあげましたが、QRコードをどこのカメラで読ませているのか構造が理解できれば非常に簡単でした。日本では法律なども含めて様々な制約があるので、ここまで割り切ったサービスの提供は困難なのだと思いますが、海外から来る観光客にとっては日本の宿泊業のやり方はいかにも古くさく前時代的なものに見えるでしょう。少し恥ずかしくなりますが、それがおもてなしの魅力だと言うことなら話は別ですが…。

これら二つに共通して言えることは、「顧客接点をデジタルの力で改革している」ということです。「人不足に対応するための社内デジタル化」ではなく、かなり積極的に顧客接点をデジタル化し、その結果として顧客の利便性が圧倒的に改革され、その副産物として人件費が減る、という構図です。業務効率化の発想しかなかったら、このような施策を考え出すこともできなかったはずだ、と言えるのです。

ホテルにチェックインするところまでで関心した驚きがいくつか発生しているので、この後の米国滞在中に色々と発見がありそうです。それも追々紹介していきたいと思います。

 

 

 

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