同族会社と駅伝の襷(タスキ)
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
駅伝のタスキ
お正月のスポーツイベントの一つに駅伝があります。
実業団駅伝では大迫選手の出場、箱根駅伝では駒澤大学の3冠が注目を集めました。
駅伝といえば、襷(タスキ)です。
今をときめく株式会社星野リゾートの星野佳路社長がファミリービジネスについて、次のように語っています。
「ファミリービジネスとは駅伝である。そこにおけるスチュワードシップは、タスキをつなぐ駅伝走者の心構えだ。」(『星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書』より抜粋)。
スチュワード(steward)とは、執事、財産管理人(女性形が「スチュワーデス」)です。
スチュワードシップの直訳は「受託責任」となります。
「受託責任」と言われるより、「タスキをつなぐ駅伝走者の心構え」と言われる方が、しっくりきます。
サラリーマン社長であれば、自分に与えられた任期を優先して考えます。
しかし、同族会社(ファミリービジネス)の経営者には、「先代から受け継いだものを次の世代につなぐ意識」があります。
任期が2期4年、3期6年などのサラリーマン社長をリレーとするならば、任期の長い同族会社はまさに駅伝です。
スチュワードシップ
アウトドア用品の製造販売を行うPatagonia(以下、「パタゴニア社」)の創業者が保有株式を信託しました。
パタゴニア社は、信託した後の事業運営について、「Patagonia Purpose Trust(信託)によるスチュワードシップが加わる」と説明しています。
パタゴニア社の経営陣や幹部は、創業家ファミリーから、株主としての「タスキ」を受けた「Patagonia Purpose Trust(信託)」に対して、創業者の理念、価値観に基づいた事業運営を求められる、ということでしょうか。
パタゴニア社は、今後、売上げの最大化は目指さないが、これから50年間、さらにその先も自社の価値観に沿って収益性の高い事業を計画していると宣言しています。
我が国では、株式を公開し、経営をプロ経営者に任せ、売上を拡大していくのが企業の完成形のような意識とは、違う方向性です。
ファミリービジネスとしての誇りを感じます。
進化する信託という仕組み
そして、パタゴニア社は、非営利法人と信託が株主(オーナー)となる仕組みを「斬新な会社所有形態」と表現しています。
まさに、斬新なアイデアであり、斬新な手段なのだと思います。
信託の面白いところは、既存の仕組みや方法では対応できない事態や問題が生じたときに、新たに解決する手段として検討される手段だと言うことです。中世に始まった「信託」という仕組みは、今も昔も、既存のやり方では対応できない社会的なニーズに対して、時代を切り開く手段である所に存在意義があります。
なお、今後パタゴニア社は、いわゆる事業承継を考える必要はありません。
創業家ファミリーという個人が株主ではなく、非営利法人と信託が株主だからです。
まとめ
ファミリービジネスとは駅伝であり、「信託」という仕組みが、創業者の思いを、世代や時間をこえて引き継いでいくための道具になることを書きました。
「信託」という仕組みは、作られておしまいということではなく、運営していくための工夫も必要であることを付け加えさせていただきます。
オーナー経営者として自分が築き上げた、あるいは受け継いだ価値観、理念、思いを次の世代に遺すことを考えてみてはいかがでしょうか。
その時に「信託」という仕組みは、強力な力を発揮します。
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