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続『翼の王国』考

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

小さくなって、また大きくなった『翼の王国』

 

1960年創刊、ずっとA4版であったANAの機内誌『翼の王国』は2021年4月号からANAのアプリを入れるとスマホで見れるようになり、紙媒体はA5版に変更されて小さくなっていました。それ以来スマホの表示が基準になって、紙媒体がそれに合わせるような形になったのです。紙媒体のサイズが小さくなっただけでなく、コンテンツの文字の大きさや段組みなどもスマホのスタイルに統一されていました。

 

※前回のサイズ変更については 『翼の王国』考 をご覧ください。

 

『翼の王国』には名物特集とも言える「おべんとうの時間」という記事があって、搭乗して着席するといつも最初に見るのです。この記事はもう4冊もの単行本シリーズになっているそうです。徹底して同じテーマで集積されていくと、価値を増していく良い例ではないかと思います。

いつものようにANA便に乗り込み、CAさんに機内誌をお願いしました。そしたら『翼の王国』が再び大きくなっていたのです。やっと小さいのに慣れた頃でしたが、今度はB5版に変更されました。2022年10月号からのことです。

 

                                          ↑新旧のANA機内誌『翼の王国』(左から右に新しくなっています)

 

↑新旧の記事の違い(左が旧、右が新、写真ページが連続するとお弁当が映えませんね)

 

 

 

↑ANAアプリで見た『翼の王国』の『おべんとうの時間』(左が旧、右が新)

 

↑ANAアプリで見た『翼の王国』(左が旧、右が新、文字の大きさと段組みも元に戻っています)

 

 

 

アナログ回帰に見る『役割分担』

 

「ANAとお客様を”つなぐ”メディア」としてコンテンツを一新したほか、サイズをこれまでのA5からB5に拡大、発行部数も1万部増やしたそうです。ANA運航便で希望者に配布するほか、新たに国内外空港などのラウンジに約4,000部を設置するとのことです。

ANAアプリで見れるダウンロード版も15,000回のダウンロードを見込まれています。これまでの発行部数は70,000部とのことですから、今後B5版で80,000部となり現状では紙媒体のほうがずっと多いということですね。どうもダウンロードは伸び悩んでいるようです。意外でしたが、これらはアナログ回帰の動きとも取れます。

考えてみると、アプリのインストールやコンテンツのダウンロードそのものが面倒だという人は多いかもしれません。特にポイントなどがもらえるわけでもない場合はなおさらです。最近は何でもかんでもアプリで、スマホがアイコンだらけ、通知もうるさいので入れるのを制限している人も増えたのかもしれません。

 

 

↑A4版『翼の王国』日本語ページ(安定のお弁当の時間ページ。ページは右から左に進みます)

 

↑A4版『翼の王国』英語・中国語ページ(外国語ページは英語と中国語併記でした。ページは左から右に進みます)

 

 

A5版と冊子のサイズがコンパクトになった分、外国語ページは英語・中国語それぞれに独立しました。ページ数は同じではありませんが、3ヶ国語版が3つ合体したような構成になっていたのです。ページの方向は共通で、英語版・中国語版の表紙は中ページ内になっていました。

A5版の初期は194ページありましたが、終盤には162ページになって中国語版お弁当の時間は無くなっていました。中国からの乗客は激減したままですから、現状に対応したものと思われます。中国からの来日が回復すると、また復活するのかもしれません。

 

 

↑初期のA5版『翼の王国』日本語ページ(文字の段組みがスマホ的で単調です)

 

↑初期のA5版『翼の王国』英語ページ(同じ記事でも言語で感じが変わるものですね)

 

↑初期のA5版『翼の王国』中国語ページ(最近は中国語版お弁当の時間は無くなっていました)

 

 

新たなB5版は、以前のA4版を踏襲する構成になっていました。ページ数は132ページです。サイズはひとまわり小さいですが、デザイン上は元に戻った形です。外国語ページは英語と中国語併記に戻りました。表表紙は日本語、裏表紙は外国語になっていて、ページカウントの順は言語によって左右反対になっている構成です。

ANAの国内線旅客数は2019年3月期には4,432万人でしたが、2022年3月期は1,795万人、国際線旅客数は2019年3月期には1,009万人でしたが、2022年3月期は82万人にとどまっています。厳しい状況が続く中で、機内誌についてもコスト削減と広告収入の確保の両面で様々な葛藤があったものと思います。試行錯誤の中で、デジタルと紙のあるべき役割分担が見えてきたのかもしれません。

 

 

↑A4版とB5版『翼の王国』表表紙(日本語版の表紙です)

 

↑A4版とB5版『翼の王国』裏表紙(外国語版の表紙です)

 

 

 

↑B5版『翼の王国』日本語ページ(日本語版は103ページ、外国語版は29ページでした)

 

↑B5版『翼の王国』英語・中国語ページ(英語と中国語併記に戻っていました。言語によるレイアウトの違いで苦労されていますね)

 

 

 

「DX」に踊らされていないか

 

 

コロナ以降「DX」なる言葉が多く聞かれます。「DX」は「digital transformation」のことです。なぜ「DT」ではなく「DX」と表記するのか? というと、英語圏では接頭辞の「Trans」を「X」と書く慣習があるためだそうです。

経済産業省による「DX」の定義では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」だそうです。

なんだか1回読んだぐらいでは、よくわからない用語です。世間では「DX」だと思ってやっていたら、それは単なる「IT導入」だった。というような事象が頻発しているようです。それは、経済産業省の音頭に乗って「DXやらないとやばいですよ」といった「国が推進している安心感」と「経営者の不安をあおる手法」を組み合わせて受注するIT関連企業がたくさん存在するからです。

ひょっとすると『翼の王国』も『DX未遂』だったのかもしれません。 『翼の王国』をアプリで見れるようデジタル化することで、お客様の利便性増進やコストダウン・省力化ができました。というのは単なる「IT導入」です。そこからビジネスモデルそのものの変革を起こし、事業構造そのものが優位に刷新されることを「DX」と呼ぶのです。

『翼の王国』の場合もアプリ化することで広告収入が桁違いに増えたり、eコマースでの物販売上げが拡大して旅客数減をカバーできるようなことになれば「DX」の成功事例となるのです。「DX」とは「結果」なのです。「DX」そのものは買えないのです。買えるのは「IT導入」だけです。

実は「DX]を成し遂げるのは、やっぱり社長なのです。

 

ANAの営業利益は2019年3月期には1,650億円、2022年3月期は▲1,731億円です。『翼の王国』ファンのひとりとして、業績回復を祈りたいと思います。

 

 

 

社長の会社では「DX」に取り組んでおられますか?もしかして、それは単なる「IT導入」だったりしないでしょうね?

 

 

 

 

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