組織を自分の体のように動かす。そのために社長に必要なこととは?
この日は、クライアントお二人との食事会です。お二人は、初対面の関係です。
不定期ですが、私は、この様な場を設けるようにしています。
ある域を超えた経営者同士の話のレベルは高く、そして、意気投合するのも早いものです。
この日の話題も、お互いのビジネスモデルの話から「大手企業の給与体系」や「上場の目的や手順」など、多岐に渡りました。
少し話題が途切れた時に、A社長が真顔になり言いました。
「先生、お陰様で、見える世界が変わりました。」
B社長も続きます。
「そう、本当に見える世界が変わりました。」
お二人が頭を下げられます。私と当社の社員にとって、言われて最も嬉しい言葉です。
事業を成功させるためには、ダイナミックに組織を動かす必要があります。
そのためには、社長は『巻き込み』の能力を備える必要があります。
我々が使っている社員は、非常に高い知識を持っており、また、良識を持った人間です。
その人達は、『納得したい』という欲求を持っています。その欲求が満たされた時に、気持ち良く、前向きに行動することができます。また、そこに会社からの「自分達への誠実さ」を感じることになります。
逆にその欲求が満たされない時には、彼らは、「ロボット」になります。考えることを止め、言われたことだけをするという状態になります。これが、静かな抵抗に成る時もあります。おかしいなと思っても、口を閉ざすようになるのです。
そして、優秀な人は、もっと強い欲を持ちます。それだけでは満足することはなく、プラス『参画したい』と思うものです。これこそが、優秀な人が優秀である所以です。
いずれにせよ、我々は、知識も良識も持った高等な人間を相手にしているという認識を持つ必要があります。だから、その人達の協力を引き出すために、『巻き込み』が必要になるのです。
我々『サービス型事業』を行っている中小企業にとっては特に必要になります。その顧客満足度は、その完成物でなく、そのプロセスで多くは決定します。そして、それらは、非常に管理がし難いのです。
そのため、自分達で品質を保つこと、また、自分達で課題に気付いてもらうことが必要になります。そのためにも、本人達の『納得』がより重要になるのです。
社員を巻き込むためには、二つのものが必要になります。
その一つが「ツール」です。
計画書であったり、案件を管理する表であったり、マニュアルであったりです。言い換えれば、『仕組み』です。仕組みがあるから、そこにある考え方や手順、そして、進捗を共有することができます。だから、社員は、納得もでき、参画することができるのです。そして、自分達で業務を回すことも、改善をすることもできるのです。
もう一つは「スキル」です。
社員を巻き込むためには、そのプロセスを構築する力が必要になります。
「起きた問題の分析から社員を参加させよう」、「素案の段階で、他の部門の意見を聴こう」。
このプロセスによって、社員はそれを「自分事」として受け取りやすくなります。また、その後の実行力も高まることになります。この巻き込みのスキルが社長には必要になるのです。
この逆をやれば、社長は、『孤立』することになります。
・問題が起きれば、自ら駆け付け、状況を確認しすぐに指示を出します。
・そして、その指示は口頭です。
・作成した管理表やマニュアルを、社員に「これでやってください」と渡します。
・会議では、その多くを社長が話しています。そして、その会議には、10名という沢山の社員が参加しています。
・ある日突然、新しい方針や新しい取組みを発表します。それは、「ずっと考えてきたこと」かもしれません。しかし、社員にとっては、「突然」に映ります。
これらの行為で、社員が「自分事」と受け取るはずがありません。その結果、その多くを社長が抱えることになります。
社長には、「仕組みをつくる能力」と「巻き込むスキル」が必要になるのです。
これが、年商数億円から年商10億円、社員十数名から社員数十名に進む時に必要になります。いままでの規模であれば、社長が先頭に立って指示を出せば、組織全体がそれで動いてきました。そして、社長は、全体を掌握することもできました。
これからの規模は、それでは動かないのです。社長が指示を出しても、それで末端の社員までが動くことはありません。そして、全体を掌握することは無理になります。すべての実行に時間がかかり、精度も悪くなります。
冒頭のお二人も、大変苦労をされました。
お二人とも、創業者です。当社に来られた時、すでに、A社長は、健康サービスで二十数店舗を展開していました。B社長は、住宅関連サービスで、年商3億円を越えていました。
この規模で多くの問題が発生するようになっていました。創業期とは、全く異なる力が必要になっていたのです。
それは、正に仕組化と巻き込み力です。その力が無いから、この先に進めないのです。
その能力を開発しなければなりません。学び、そして、自分の技とする時なのです。
しかし、当然、それは簡単ではありません。つい最近まで、上手く行っていたのです。
能力を開発するとは、新しい神経を繋ぐ行為とも言えます。
勉強する、楽器を練習する、ゴルフを習う、これらはすべて、「新しい神経」を作ることを意味します。そこでは、繰り返しが必要になります。そして、その時々に正しいやり方に修正する必要があります。それを何度も繰り返しているうちに、徐々に神経が繋がり始め、徐々にそれができるようになるのです。
先に進むためには、それと同じことを、する必要があるということです。
お二人の社長は、それをやり切りました。
その過程で何度も言われました。「先生、すぐに戻ってしまいます。」と。
意識していないと、社員に口頭で指示を出してしまっています。問題が起きると、仕組みではなく、人に向かってしまいます。そして、マニュアルを自分で作ってしまいます。
それでも、辛抱強く続けられました。それを忘れないように、見える所に戒めを書いたメモを貼っています。そして、矢田から直接、何度も考え方や動き方のアドバイスをもらいます。
それを続けたのです。
その結果、大きく変わったのです。
その結果、見える世界が変わったのです。
世の大手のビジネスモデルやその仕組みが解るようになりました。いままでの経営者仲間とは話が合わなくなった一方で、上のステージの経営者と話が出来るようになりました。
そして、会社が変わったのです。社員が悠々と動くようになりました。それぞれの現場で管理者が適宜の判断をしてくれています。問題が起きると、その解決案が上がってきます。
社長が変わった。その結果、会社が変わったのです。
読者の方々は、聞き飽きた言葉だと思います。しかし、これが、真理なのです。
社長が、自分の中に新たな神経を獲得した。その結果、自分の動きが変わった。
そして、その神経を更に、組織に張り巡らせるために、仕組化と巻き込みに取り組む。それを諦めずに続けることで、会社全体に神経が繋がった。そして、管理者や社員の動きが変わった。
これが真理なのです。
夜7時を越え、店内が騒がしくなってきました。
勤め帰りのグループが多くみえます。
A社長は、「お伝えし忘れていました。」と言い、グラスを机に置きました。
「先生、先月、過去最高の売上げを更新しました。」
非常に嬉しい報告です。この過去最高の売上げも嬉しいし、それ以上に、この売上の意味が全く違うのです。組織が動いての売上げなのです。
新たな神経を繋ぐ、新たな思考パターンを獲得する、新たな技を身に付ける。
これは、世の中が思っているほど簡単なことではありません。そこには、いままで生き残るために必死に身に付けたい習慣や技がすでにあるのです。
当社のサービスでも、やはり、それを主眼に置いています。
「どうやったら、気持ちよく(心が折れることなく)新たなそれを身に付けてもらえるか」スタッフとも何度も打ち合わせを行い、改善を積み上げてきました。
その目的があるために、「考える余地の多いテキストや課題」になっています。繰り返し見て、頭に刷り込めるように説明動画を提供するようにしました。そして、すべてのコンサルティングを、一対一で行うようにしています。それが、我々が出した答えです。
「このサンプルをそのまま写してください」や「集合研修のような大人数」では、多くの人は変われないのです。ましてや、「社長の代わりに作成しますよ(経営計画書、マニュアルなど)」など以ての外です。我々は、「変われないもの」を提供したくないのです。変わるとは、それほど大変なことなのです。
本当に、見える世界が変わります。
自分を取り巻く世界も変わります。
変わる時が来ています。
ぜひ、動いてみてください。
組織を動かす、社員を活かす。
一人でも多くの経営者に、この喜びを感じて欲しい、と心から願っています。
(まとめ)
- 年商数億円社長は、仕組化と巻き込みを覚える必要がある。
- そのためには、それを絶えず意識し、繰り返し行うことである。たまには戻ってしまうが、諦めない限り、必ず変わっていくことができる。
- その時には、見える世界が全く異なるものになっている。そして、会社が変わるのである。
- そこに近道は無い。心から優秀な経営者がもっと飛躍してほしいと思う。
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