会社の理念はなぜボケる
最近、巷でよく「パーパス経営」というコトバを耳にしませんか?会社の存在意義や経営の目的などを端的に表すことによって経営の方向性を明示しようとする考え方のことです。考えてみれば当たり前のそんなコトバが流行るほど、企業はその方向性や考え方を明らかにすることなく社会と付き合ってきたのが今までの姿だったと言えるのかも知れません。
そういう視点で見てみると、依然として企業のホームページに書かれている「経営理念」には抽象的な美辞麗句が目立つように思えます。「地球にやさしい」「人と社会に奉仕する」「未来を考える」など、何を言いたいのか具体性に欠けたコトバのオンパレードです。いったいなぜこんなことが起きるのでしょうか?
そもそも理念と言うコトバ自体がかなり抽象的な概念であることも一因だと思われますが、それ以上に大きな理由として「企業が旗幟鮮明(きしせんめい)に理念を発信することのリスク」に対する懸念が挙げられます。そんなこと言って、それで何かあったらどうするんですか、といった思考回路が具体的な発信をどうしてもためらわせてしまう。
先日、とある企業研修会で環境経営について講演させていただく機会がありました。とても真面目な社風の会社で、環境問題についてもしっかりと取り組もうとされていてとても好感が持てたのですが、議論の中で「環境問題に取り組む中で、逆効果を生むリスクにはどのように対応したらよいか」という疑問が呈されると、途端に場の空気が重たくなるのです。
これはつまり、環境に良い対策を調達するためには今までより長距離の輸送が必要になる、と言うような場合のことで、輸送距離が増える分だけCO2排出量が増えてしまう、といったトレードオフの関係をどう説明するのか?という課題のことです。
長いこと製品を使い続ければ、頻繁な買い替えに比べて明らかに環境負荷は減少するはず・・、なのですが、古い製品は新製品に比べると省エネ性能が劣ったり、燃費が悪かったりするのもまた事実なわけです。さて、会社の理念はどちらを向くべきなのか、それを旗幟鮮明にする意義はどこに・・?
そう考えれば考えるほど、理念レベルではとりあえず「地球にやさしい」とでも言っておくのが無難である、と言うような判断になるのだろうと思われます。
私はそれをあえて「旗幟鮮明にせよ」と言っています。は顧客のニーズにフォーカスするために他なりません。アップルがそのデザインやセンスで売れるように、環境経営の世界では顧客はその会社の理念を買いに来ると言われています。製品ではなく理念を買おうとする顧客ニーズにこたえるために、まず理念をこそ具体的に語ろうというものです。その象徴的な存在がSDGsであり、それを具体的にかたることでこそ顧客の要求に正面から答えることになるのです。
世の中にこれだけSDGsに対する理解が広まってきている中、理念の世界でそれを真正面から語れずに相変わらず「地球にやさしい」などと言っている会社は、「イケてない」「どこかでビビってる」「時代遅れ」といった厳しい評価を浴びることになります。
こうなると経営者の感性が問われる事態です、そうであればこそ是非、この機会にSDGsへの取り組みを真面目に考えてみることを強くお勧めします。
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