人で稼ぐ組織を創るリーダーが、新たなシステムを導入する際に気を付けることとは?
「一体こんなシステム、誰が欲しいって言ったんだよ」
数年前、ある企業が大枚はたいて導入したシステムの使い勝手がすこぶる悪く、ある社員が会社に対して口にした皮肉です。
コロナ騒動があってから、会社の業務改善を図る為のサービスやシステムを提供しよう、取り入れようとする動きが目立っています。
店舗ビジネスにおいてそれはセルフレジや自動清掃であったり、クラウド型のグループウェアやリモートサービスなどが挙げられます。
「伊東さん、AIの発注ってどうなんですか?」
先日、ファミリーマートのAIの発注支援という報道をご覧になったある社長からの質問です。
各企業が開発したシステムが自社に大きなリターンをもたらすのか?
企業全体を成功に導かんとするトップとしては情報収集に余念がありません。
社長の中には動物的カンで「これはいける!」と思ったら即「GO!」とイケイケの方もいらっしゃれば、徐々に動き出す企業がチラホラ出始めてから「じゃあウチも」と様子見重視の方もいらっしゃいます。
では人で稼ぐ企業を創らんとするリーダーが業務改善を外部に求める場合に一番重要視しなければならない事とは何か?
それは「自社の一貫性を強められるか」の一点です。
目指すべき会社の未来像が、働く誰もが経営者のように「何としてでも自分の組織は存続させるぞ!」という思考力と行動力に優れた人達だらけにしたいということであれば、分析に分析を重ねられる詳細なデータが抽出可能なシステムは取り入れても、深く考えなくても良い自動発注などのシステムは避けるべきです。
また逆に「経験の浅い人達でも当社では活躍でき、次第に重要な仕事を担っていけるエスカレーター式のキャリアステップを重視する企業にしたいのであれば、詳細なデータを抽出できるシステムよりも、自動発注などのサポート型のシステムを取り入れた方がいいからです。
つまり、何にしても我が組織をどうしていきたいのか?
一番先に固めておかなければならないのは「こんな組織にしていきたいんだ!」という未来像なのです。
そしてそれは言語化できていて、伝えやすく、理解しやすいに越したことはありません。
「社長は会社をどのようしていきたいんですか?」
この質問に「それは・・・大きくしていきたいし・・・社員が働きやすいかんじ・・・」などスっと言えない状態はよくありません。
例えば孫正義氏が福岡の小さな雑居ビルで、みかん箱の上に乗り、たった2人のアルバイトに言った言葉ですが
「豆腐屋さんの心意気でやるぞ!豆腐を1丁、2丁と数えるのと同じように、1兆、2兆と数えられるような規模の会社にする。」
ところが、多くの経営者はこの自社をどうしていきたいのか?というイメージを明確化、言語化しないままの企業が多いです。
「何年もやってきてるんだから今さら言語化なんてしなくても・・・」
「日々のやり取りでどんな会社にしたいのか? それはもう皆に伝わっているはずだ」
できることならば、誰でもいいので一人の社員やスタッフに「この会社はどんな会社になっていくんですか?」と聞いた時「それは〇〇です!」とはっきり、即答されるくらいが望ましいものです。
そして最も避けるべきは、新たなシステムを導入してうまくいかなかったのは、自社のイメージを固めていなかったから、ではなく「社員やスタッフの本音を引き出せなかったからだ」と捉えて動いてしまうケースです。
「社員にどんなシステムが欲しいのか?事前にじっくり耳を傾けてみよう」
その末路はよろしくない事が待っています。
「変だな、何人もの社員が『そのシステムは良いと思います』とか『きっと売上を上げられます』とか賛同者が多かったはずなのに・・・なぜ取り入れたシステムを誰も使わなくなったんだろうか?」とか「中には「以前の方が使い勝手がよかった」とまで言われている・・・などです。
つい、会社の投資を決めた人達としては「いやいや、君達が欲しいと言ってたじゃないか!」と怒りたくなってしまうものです。
実は冒頭で不満を言っていた社員が所属する企業は、実際にこのような行動をとっていたのです。
なぜ耳を傾けて、十分に議論してから導入を決めたのにうまくいかないことが多いのか?
それは、人が何かを欲する時は「こんなのが欲しい」と説明できる人が少ないからです。多いのはその逆で「そうそうそう、こんなのが欲しかったんだ」だからです。
人の力で躍進する組織を創らんとするリーダーに必須なのは、メンバーよりも先の先を見据え、それを明確にし「こうしていくんだぞ!」と全員を力強く導くことです。
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