米中のはざまにおける「ASEAN各国のスタンス」とは.. ~分析における「3つの視点」の大切さ~
2022年11月14日。インドネシアのバリ島で、米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席による初めての対面「首脳会談」が開かれました。2010年にGDPで中国が「世界第2位」になって以降、米中における覇権争いは激しさを増していますが、その裏にはどのような背景があるのでしょうか?
昨今の米中関係の悪化は「必然」とも言えます。陸続きでありながら、(陸上に)国防上脅威が殆ど存在しない米国は「海洋国家」と位置付けられます。一方、ユーラシア大陸の内陸部にある中国は当然「大陸国家」。「大陸国家」は、力をつけてくれば必ず海洋に進出していくという特性を持っていますが、(逆に)「海洋国家」は自らのフィールドを守るため、進出してくる「大陸国家」の動きを封じ込めるという行動を取るのです。つまり、GDP世界第1位の米国(海洋国家)と新たに力を付けてきた中国(大陸国家)との対立は、「地政学上」避けられない現象なのです。これは【鳥の目】による俯瞰的視点で見れば明白です。
次に、トランプ前政権以降の米中関係悪化で、それまで米国が中国と行っていた取引の一部はASEANや南アジアに流れています。また、2022年1~9月の中国におけるASEANからの輸入割合も2ポイントも上昇しているのです。すなわち、昨今の米中関係の悪化の結果、大きな恩恵を受けているのはASEANなのです。このような常に動きつつある世の中のトレンド(潮流)を認識する【魚の目】的な視点も極めて重要です。
それでは、米中のはざまに位置する「ASEAN(10ヶ国)」は、どのようなスタンスを政治的に取っているのでしょうか? 米国が(中国への対抗を念頭に)主導するIPEF[インド太平洋経済枠組み]への関与度合いを見ても分かるように、ASEANを「一括り」にして捉えることは容易すぎます。個別の事案においては国益の観点から、都度判断を変えることはあるものの、「一般的には」ASEAN各国は下記の4グループに大きく分けられるのです。
- 米国寄り(ベトナム・シンガポール)
- 中国寄り(カンボジア・ラオス)
- 両国に接近(タイ・ブルネイ・インドネシア・フィリピン・ミャンマー)
- 一定の距離(マレーシア)
「ASEAN」という7億人の巨大市場を単純に「一括り」として見ていませんでしたか? それぞれの国には、国特有の歴史や政治体制、社会環境などがあるというのは【虫の目】によるきめ細かな複眼的視点で見れば当然のことです。
年末の忙しい時期にこそ、改めて【鳥の目(俯瞰的)】・【魚の目(体感的)】・【虫の目(複眼的)】の3つの視点から、自らおよび自社ビジネスを見直してみてはいかがでしょうか?
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