価値の源泉
あるクライアント(インストラクター)の話です。その方は個人向けにサービスを提供されています。提供期間は数か月と決まっていますが、一般的に見れば割と高額なサービスです。単純に金額だけ聞けば、比較的楽に儲かりそうなイメージです。
面談にて「1日当たり対応可能数」や「一人当たり利用日数」などをヒアリングしながら、売上高の上限値がどれくらいになるかを算出します。加えて、粗利や固定費も確認していきます。この方の場合、仕入はほとんど発生しませんが、スペースが時間貸しなので結構な費用(変動費)がかかります。固定費については当人の人件費や光熱費、広告費などで、そこまで多額にはなりません。
さて、どんな結果になったでしょうか。ここで金額を明記するのは避けますが、売上高の上限は意外にも低く、月間で数十万です。さらに、粗利率や固定費などから算出した月間必要売上高は、売上高の上限とほぼ同額です。
どういうことか。要するに、今のままではギリギリまで頑張っても、最低限の費用が賄えるほどの売上しか取れないということです。言い方は品がないですが、このままでは高い確率で「貧乏暇なし」の状況に陥ってしまうでしょう。ご本人にもそう伝えました。
マンツーマンのサービスは顧客満足度が高くなるものの、どうしても効率が悪くなります。体一つですから自ずと対応数も限られてしまう。値付けが間違っていれば、フル稼働で頑張っても何も残らない。それどころか赤字になってしまうこともあります。
今回のケースではまだ費用は賄えましたが、それでも人件費は最低限で見積もった結果です。「はたらけど はたらけど 猶 わが生活 楽にならざり…(石川啄木)」のような状態を自ら作っているようなものです。
とはいえ、単純な「値上げ」では既存客が離れ、見込客が集まらない状態を招いてしまいます。もっと売上が取れなくなり、事業の継続すら危ぶまれる状況に陥るのです。
商品・サービスの価格は「自社」「顧客」「競合」の3者のバランスで成り立ちます。自社は当然原価以上の価格設定が必須ですが、あまり欲をかいて高額にすると顧客が買ってくれず、価格の低い競合の商品に流れてしまうでしょう。
安くしすぎれば利益が出ず、高くすると売れなくなる。3者のバランスは実に微妙です。しかし、競合より高い価格でも顧客の支持を得ることは可能です。その方法は、自社の商品・サービスに十分な「付加価値」をつけ、それを顧客に漏れなく正しく伝えることです。
付加価値は「有用性(顧客の役に立つ)」「希少性(他にはない)」「適合性(相性やタイミング)」で構成されます。いかに競合を出し抜いて顧客が喜ぶ付加価値をつけられるか。そしてその付加価値を漏れなく正しく伝えられるか。ここまで考え実践することで、初めて誰もが納得する「適正価格」が実現するのです。
経営者のみなさん。自社の付加価値は何か改めて見直し、言葉にしてみましょう。もしわからなければ、ご愛顧くださる顧客に聞いてみてください。彼らは必ず的確な答えを持ち、さまざまなアドバイスとともに何でも教えてくれるでしょう。
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