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過小評価は禁物!システム導入プロジェクトのリスク

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

導入するシステムもITベンダーも決まり、後は粛々と導入プロジェクトを進めれば良いところまでたどり着いた会社の社長が、「鈴木先生のおかげで、後は部下に任せても大丈夫なところまでたどり着けました」とお礼を言われました。私は即座に「まだ全然手を抜くことはできませんよ」と返してしまったので、社長にはきょとんとされてしまいましたが、実際のところ部下への完全丸投げはこの段階ではできないのです。

よくある誤解なのですが・・・プロジェクトがスタートした後、そのプロジェクトの運営は全てITベンダーが行うもの、と判断してしまう人が多くいます。実際、ITベンダーはプロジェクトマネージャー(以後PM)を任命して推進してくれるのですが、PMのミッション範囲はあくまでも「当該システムの導入に関するタスクの推進」でしかありません。「そんなことは解っているよ」と言われそうですが、会社社内の調整や検討作業については、PMは宿題を渡してくるのみであり、その宿題の進捗を手助けしてくれることは無いのです。

どういうことかと言うと・・・、例えば会計システムの入れ替えプロジェクトであれば、今までの会計に関するデータを新しいシステムに取り込めるように整備しないといけませんが、そこには取引先マスター情報や、注文・請求といった情報が含まれています。取引先マスターがきれいに整備されていれば少しは楽かもしれませんが、長年事業を続けてきた会社であれば取引先マスターには重複もありますし、社名が変わってしまった取引先もあるので2重に登録されている会社もあります。備考欄に注意書きをいくつも書いてあり、取引の都度担当者が例外的な手作業を行っていることもあるので、その注意書きの移行も必要になります。

これらは社内の関係者が手分けしてデータを用意しなければなりませんが、ITベンダーのPMはアドバイスはしてくれるかもしれませんが、基本的には宿題として出すのみで、納期管理しかしません。

これらの作業は単純なものではなく、結構複雑にいくつかのタスクをこなす必要があるものもあります。つまり、宿題を出された段階で、その宿題を完了するためのタスクの洗い出しや担当割り振りなどを社内メンバーが担わなければならないのです。それが比較的簡単で単純なものであれば良いのですが、事情によっては結構難易度の高い作業になることがあります。

その難易度に応じて、失敗やミスのリスクは変わります。ITベンダーのPMが管理するタスク以外の、社内タスクで失敗が起きれば、それはプロジェクト全体のリスクとなります。しかもそのリスクはITベンダーのPMにとって責任外です。つまりそこで発生した失敗については、導入者側が全ての責任を負うことになります。

これ以外にも、PMが想定するタスクが社内の仕事に複雑にからみついてしまい、PMが考えるほど簡単に処理できないタスクが隠れているリスクも存在します。これらが顕在化した際、プロジェクト全体に致命的な影響を与える可能性もあるのです。

少し脅かしてしまいましたが、現にほとんどのプロジェクトではITベンダー側の立場のPMが関与していないところでリスクが顕在化し、納期遅延やコストアップにつながったり、プロジェクト停滞を引き起こした事例はいくつも経験しています。

ベンダーを決めてプロジェクトが動き始めたとしても上記のような危険性が存在するので、社長はしばらくは目を離せない状況が続きます。「導入の決済をしたのだから、社長の仕事はここまでだ」と思い込んでしまうのは、大きな誤解です。是非心配りをされるよう、お勧めします。

 

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