クオリティタイム
最近、30代の経営者とお仕事をする機会が増えています。自ら起業したり、あるいは事業承継直後だったり…。状況はそれぞれ全く違いますが、話をしていて思うのは私の30代当時と比べると皆さん「優秀だなあ」ということです。自己嫌悪に陥るくらい、頭の回転も飲み込みも早い。
ただ、総じて経験が少ないこともあり、経営者としての「自信がない」と仰る方が大半です。傍から見れば十分役割を果たしてそうに見えますが、本人的にはまだまだといったところなんでしょう。
もう一つ気になる点は、皆さんおしなべて疲れている。もちろん、働く人は誰でも疲労から逃れられません。とはいえ、若い社長たちは目の前の業務、次々に現れる細かな問題の対処量が多すぎるのか、「今のことで精一杯」な感じがあふれ出ています。
30代の経営者たちは冒頭でお伝えした「優秀」に加え、「真面目」という印象も強く残っています。これはもちろん良い特性なのですが、常に手を抜かず、100点を目指していると心身ともに疲弊してしまいます。彼らは優秀な分できることも多く、真面目なため仕事が断れない。結果どんどん自分に負担が集中し、ますます二進も三進もいかない状態になるのです。
するとどうなるか。「ビジョン」が描けなくなります。これは30代経営者だけの問題ではありませんが、特にエネルギー溢れる若い世代が「将来のありたい姿」を描かなければ、地域や都道府県、国にとっても明らかな損失になってしまうでしょう。
「今の仕事」をするのは社員の役割です。経営者の役割は「将来をつくること」。この点、経営者として現状が俯瞰できていなければ、重要な経営判断ができなくなるばかりか、そこにあるチャンスも逃してしまいます。
ではどうすればいいのか。私がまずお伝えするのは、最低でも月に1回、2~3時間ほどの時間を強制的に空けることです。そこを「緊急ではないが、重要なこと」を考え整理する時間とする。私が学んだ和仁達也先生の言葉を借りれば、「健康的な強制力」を使った「クオリティタイム」の場づくりです。
そうでもしなければ、絶対に時間は取れません。経営者は常に「緊急かつ重要」「緊急だが重要でない」ことが目の前にガンガン積み上げられ、時間が吸い取られていきます。他の誰かが整理整頓してくれるわけではありません。自分で仕分けをするしかないのです。
その価値基準を持つため、また広い視野で物事を判断するための「クオリティタイム」は経営者にとって欠かせない時間です。時間がないのは自分の責任です。他人のせいではありません。経営者の皆さん、ぜひ健康的な強制力を働かせ、自らを養う時間をつくりましょう。
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