成功への近道

「店舗レイアウトを見直したい」「商品パッケージデザインを変えたい」「新商品を開発したい」…店舗経営者からよくある相談です。これらに共通するのは、「減少した売上を何とかして伸ばしたい」という想いです。もちろん、いずれの相談も重要な論点であり、状況によっては率先して実施すべき施策でしょう。

とはいえ、「今はそれをやっている場合じゃない」ということがほとんどです。なぜか。そもそも大半の店舗が儲からない収益構造になっているからです。今のまま売上を伸ばしても、売れば売るほど費用も増え続け、最悪大赤字になるような店舗も少なくありません。

ところが、店舗経営者は冒頭のように「具体的に見えている課題」を優先し、自分自身で、あるいは専門家に相談しながら解決を図ろうとします。相談された一部の専門家もそれを鵜呑みにし、「自分の得意分野」の中から「状況の違う他社の成功事例」を出し、「効果の怪しい部分的なアドバイス」に終始します。

その結果、やっても効果が出ない施策が実施され、さらに課題がこじれてしまう事態になってしまいます。この点、どんな店舗でもまずやるべきは「お金の流れ」を把握することです。全体から店舗ごと、商品ごとなどに分解していき、粗利率や固定費、利益の正確な把握が必須となります。

お金の流れを把握した後は、売上に関係しない固定費の削減、および変動費（仕入れや材料費など）の見直しを行います。売上に関わる施策の検討に入るのはその後です。経験上、多くの人が最初から売上アップを画策しますが、大抵の場合失敗します。

一部の経営者はすぐに答えを欲しがり、一部の専門家も自分が持つ答えで安易に解決を試みようとします。しかしながら、本当に成果が出る方法は「面倒くさいこと」の積み重ねでしかありません。店舗レイアウトを変えたり、パッケージデザインを変えたり、新商品を投入しただけで簡単に成果が出るはずもないのです。

というより、相談を受けて店舗を確認すると、レイアウトもパッケージも商品構成も特に問題ない場合が多いと感じます。そんなことではなく、地道にお客様の顔と名前を覚え、SNSなどを活用して関係性を構築し、日々の活動をもれなく発信し、商品の幅は広げず得意分野に絞り込み、言葉で価値を伝える努力を怠らないといった当たり前の事を積み重ねることが先決です。

経営に一発逆転ホームランはありません。他社のキラキラした成功事例に惑わされず、自店の商品を愚直に磨き上げ、付加価値をもれなく言語化して伝え、顧客との良質なコミュニケーションを積み重ねてください。結局はそれが成功への一番の近道です。