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メタバースは幻影か現実か?

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

本コラムではあまりテクノロジー系の話題に触れることは少ないですが、最近新聞に出ない日は無いといえるメタバースについて持論展開したいと思います。

メタバースは色々定義がありますが、仮想空間の中のアバター(自分の分身の様なものです)を通じて活動を行うことを意味します。よく例に挙げられるのが、双眼のゴーグルをかけて仮想空間の中を歩くと、知人(のアバター)に出会えて会話ができる、といったものです。これをビジネスにまで展開しよう、という動きがメタバース界隈では活発で、大手企業がメタバースにショールームを出した、といった報道もちょくちょく聞きます。また、FacebookがMetaに社名を変え、社運をかけてメタバースに取り組もうとしている話も聞きます。

さて、これを中小企業はどう使っていくのか?私はおそらくビジネスには使い物にならないと考えています。まず、ゴーグルが最初で最大の障壁です。私は今売れ筋のゴーグルを2機種ほど購入して試してみましたが、いずれも装着して数分で気分が悪くなり、長く使うことはできませんでした。医学的には色々解説できるのだと思いますが、まず重たすぎる。そして左右の目の焦点の微妙なずれを修正しきれない。レンズの僅かなゆがみも人間の頭脳では許容できない。そしてさらに見える風景と姿が単なるコンピュータグラフィックであり、どうしても居心地が悪い。こんなことがすべて重なって生理的に受け付けられないのだと思います。ゴーグルの技術が進化すればこれらの問題は多少改善されると思いますが、おそらく抜本的に解決することは不可能でしょう。

もちろん、これには個人差がありますし、それが平気な人はVRゲームにも没頭できます。しかし、使い手を選ぶ様な道具が必須となってしまうのであれば、これはビジネスに持ち込むことはほぼ不可能だと思います。社員にゴーグルをかけることを指示しなければならない業務になった場合、必ず労災の問題がつきまとうでしょう。「ゴーグルを使う、という選択肢もある」程度の扱いが限界ですので、仕事を全面的に仮想空間に持って行くことはできません。

このようにメタバースに対しては、かなり冷めた見方をしていたわけですが、Googleが開発しているProject Starlineの情報を知った時には少し衝撃を受けました。検索すればすぐに動画や取材記事が出てくると思いますが、要するに遠隔地とのビデオ通話の次世代版です。専用のビデオ通話ブースが必要だそうですが、遠隔地の人があたかも机の向こう側に座っていて、生で会っているかのように会話ができる、というものです。どのような技術を使っているのか定かではありませんが、取材記事によると「目を合わせる」ことが可能だそうです。

WEB会議をうまく使えない人が一定数いますが、このような方は「どうもうまく使えない」というぼんやりした不満を訴えています。人間が対面で会話する際には5勘をフルに使っています。WEB会議の場合はマイク・スピーカー、1台のカメラ、という3種類のデバイスが扱える情報しか使えません。カメラと目線を同じにすることはほぼ不可能なので、目線を合わせることは物理的に不可能です。これらが多少なりとも改善できるのであれば、遠隔コミュニケーションは本物の商売に使える可能性が出てきます。「込み入った相談なので対面でお会いしたい」という依頼を受ける人もいらっしゃると思いますが、それが劇的に減るかもしれない…。込み入った話もできるシステムが登場するなら、売り方が難しいものも遠隔で売ることが可能となるでしょう。

メタバースという単語をタイトルに使いましたが、少し話しを発展させすぎたかもしれません。
しかし話題のトレンド一つに注目してしまい、それだけに注力することは危険です。
幅広く様々な技術トレンドを掴んで自社のビジネスへの応用をリアルタイムに考える。これは日本の会社にとって欠けてきた行動だと思います。
是非、様々な技術情報にキャッチアップできるよう、アンテナを高く上げておくことをお勧めします。

 

 

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