最適なコンサルティングを今すぐ活用する!

果てしなき収納力との闘い(その4)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

 

果てしなき収納力との闘い(その3)からつづく

 

 

やっとのことで完成したガレージ上の2階倉庫。暑い時期ですから作業中は汗だくでした。水分補給しても、すぐに汗になってどんどん出ていくのが恐ろしいほどで、夏の日中の外仕事では危険を感じる気温です。

特に、倉庫の中の仕事は続けて作業しているとフラフラになりました。何しろ、鉄板1枚ですから壁の天井も表面温度はかなりの温度に上がっていました。体が触れると飛びのくぐらい熱かったですから。

作業中は扉を開けて、ずっと扇風機を回していました。しかし、立って作業していると頭が天井にすれすれになるぐらいしか、室内の高さがないので頭が暑くてどうにかなりそうでした。

 

新しい「2階倉庫」の温熱環境

 

そうして、さんざん暑い思いもしましたので断熱材まで入れることになった訳ですが、果たして効果はあったのでしょうか?手持ちの放射温度計で測ってみることにしました。

倉庫の壁はシルバー色の鉄板なので、かなり日光を反射します。家にいると、夕方なのに倉庫のある東側から太陽の光が射してきます。お昼過ぎに表面温度を測ってみると、直射日光の当たっている西側壁面で49.1℃ありました。そりゃ作業中暑い訳です。鉄板1枚のときは内側もほぼ同じ温度になっていたでしょうから、シャレにならない温度です。

すぐに室内に入って同じ場所の内側(断熱材表面)を測ってみまたら、31.7℃でした。実に17.4℃下がっています。作業中も断熱材を入れてからは体感温度と汗のかき方が全然違っていたので効果は実感していましたが、予想以上のパフォーマンスでした。

続いて室内の天井面も測ってみましたが、壁面とほぼ同じ31.8℃でした。おそらく外側の温度は壁面以上に屋根面のほうが高いと思われますが、実際の測定値は低く出ていました。これは、放射温度計を直角になる位置関係で測定できなかったのが原因だと思われます。

ちなみに、断熱材の厚みは天井80mm、壁40mmです。天井が低くなるのが気になっていましたが、壁より厚くしておいて正解だったようです。

 

 

↑晴天の日の午後。反射すると眩しい倉庫の西側壁面

 

↑表面温度はかなり上がっています

 

 

↑倉庫室内の同じ西側壁面

 

↑内部表面温度は、外側に比べて17.4℃下がっています

 

 

↑倉庫室内の天井面。断熱材あらわし仕上げです

 

↑こちらも内部表面温度は、ほぼ西側壁面と同じです

 

 

 

「計測値」と「体感温度」の関係

 

倉庫内の室温は、ガレージの上に設置した段階で計測を開始しました。家じゅうあちこちを測るのに使っているのと同じワイヤレスの温湿度計を使用しました。ワイヤレスの温湿度計については、暑い寒いの『モノサシ』1 で詳しく紹介しています。

今回、ガレージの上に設置した状態では壁や天井面は鉄板1枚でしたが、完成時には断熱材入りになりました。断熱材が入る前後でざっとどのくらい温度に違いがあるのかどうか、見てみました。断熱材が入る前後では時期や天候など違いがありますので、外気温と倉庫室温との差の1週間平均値で比較してみました。結果は以下。

 

①最高温度(外気温と2階倉庫室温との差の1週間平均値)

 

断熱材なし➡︎断熱材あり −3.3℃  

 

最高温度は断熱材が入る前後で3.3℃下がりました。焼けるような鉄板の熱さの影響が減って昼間のピーク室温が下がったということかと思います。しかし、思ったよりは差が小さい気もします。

 

 

②最低温度(外気温と2階倉庫室温との差の1週間平均値)

 

断熱材なし➡︎断熱材あり +2.9℃  

 

最低温度は断熱材が入る前後で2.9℃上がりました。昼間とは逆に天空放射冷却などの影響で夜明け前に室温が下がるのが断熱材によって軽減されていると考えられます。

 

 

③平均温度(外気温と2階倉庫室温との差の1週間の平均値)

 

断熱材なし➡︎断熱材あり +0.1℃  

 

平均温度は断熱材が入る前後でほぼ同じということです。外部要因の影響が軽減され、結果として最高温度が下がり、最低温度が上がったことで相殺されて平均温度としては変化なしになったようです。

 

室内に空調機器などの熱源はいっさいない訳ですから、妥当な結果ではないかと思います。体感的にはずいぶんと涼しくなったのですが、客観的に数値で捉えると以上のような結果でした。

 

 

以前、温熱環境の勉強会で、

 

体感温度=(室温+表面温度)÷ 2 

 

という簡易な計算方法を教えてもらいました。この計算式に従うと、単純に倉庫内側の天井面や壁面の表面温度が17.4℃下がったということは、同じ室温だったとすると8.7℃体感温度が下がったという計算になります。室温の最高温度の差は3.3℃でしたが、真夏の暑い時期、8.7℃の体感温度の差はかなりの違いを感じるはずです。(体感温度の計算式については、暑い寒いの『モノサシ』2 をご覧ください)

 

外気温の平均値は断熱材が入る前後では断熱材を入れてからの期間のほうが2℃高くなっていましたので、断熱材の効果については一定の信頼性はありそうです。

 

 

↑外気温のグラフ(2022年7月12日〜2022年8月11日)

 

↑ガレージ上の2階倉庫内部の室温グラフ(2022年7月11日〜2022年8月10日)

 

 

 

比較して考える「2階倉庫」の存在価値

 

これまでお客様宅の倉庫をいくつも提案してきましたが、今回のように「中に入れるもの」と「1年を通じた室内環境」を意識したことはありませんでした。「家の中でなくてもよいものを入れて下さい」といった、あまりデリケートではない「何か」を収納するといった漠然とした考えでした。「考え及ばず」というか、浅かった訳ですね。

自宅には、ガレージ奥に新築時から使っている1階倉庫があります。こちらもワイヤレス温湿度計で常時計測しています。1階倉庫は今回完成した2階倉庫や外気温に比べると、室温の変化の幅はずっと小さいです。これは、

 

●直接日射を受ける面積が屋根面だけで小さいこと
●背面・床面ともにコンクリート・土に接していること

 

が大きく影響していると思います。しかし、実はこの1階倉庫たまに激しく雨漏りしてしまうのです。なので湿気を嫌うものは置いておけません。。。そういう事情もあって、今回の2階の倉庫はがんばった訳です。

 

↑ガレージ奥の1階倉庫内部の室温グラフ(2022年7月11日〜2022年8月10日)

 

 

↑1階倉庫は背面と床面がコンクリート・土に接しています

 

 

 

 

社長の会社ではお客様宅の倉庫をつくることがありますか?その際、中に入れるものによって場所や仕様の選択をされていますか?

 

 

 

 

 

 

 

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。