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「DX」…実は日本でしかバズっていない?

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

DX推進、英語ではDigital Transformationですが、この2文字がバズっているのは日本国内だけ、という現実があります。意識的に極端に言っているので異論も当然あると思いますが、少なくともDXという単語が政府やメディアで持ちはやされているのは日本だけ、と言っても過言は無いと私は受け止めています。

毎年1月にアメリカ ラスベガスで家電関係のショー「CES:正式名称Consumer Electronics Show」が開催されています。(※:近年主催者は正式名称を使わない傾向にある)

このショーは歴史が非常に長く、第一回は1976年開催だったそうで、以後毎回毎回何らかのイノベーションに繋がる製品やトレンドに関する情報を発信し続けてきました。私が見学・記憶している範囲でも、BlueLayの規格に則った製品が発表ラッシュを迎えたものCESでしたし、90年代後半は最新のCPUを積んだパソコンが所狭しと並んでいました。ところがどんどんトレンドは「家電」の範囲を超え、車のデジタル化が進行すると同時に車載機器やGPS関連機器、コネクティッドカー系のソリューションが発表されたり、テロ防止のための(日本人からみると)武器や装備など、およそ家電とは思えないものの発表の場に変化したりもしました。要するに「新しいテクノロジーならなんでも展」に変革していったのです。

本題からだいぶ外れた話をしている様に思われるかもしれませんが、そのCESのホームページの中を検索しても、実はDXというワードもしくはDigital Transformationという熟語があまりヒットしないのです。展示物一つ一つを細かく見れば、当然DX関連商品やサービスはそれこそ星の数ほども発見できます。しかし、それらが「DX推進の為のXXX」というアピールをしていないケースが多いのです。キーノートスピーチでもDXが主題のものはほとんど見当たりません。

ところが同時期に開催されている日本のエレクトロニクス関係のショーでは、そのホームページにDXのワードが数多く並んでいますし、ショーに伴って開催されるスピーチについてもそのタイトルの多くにはDXという単語が使われているものが多数。政府の官僚のスピーチも、DXをなんとか進めるんだ、という一種の気概が表面に出ているタイトルのものばかりです。

これら日米のショーにおけるDXの扱いの違いはいったいどこに由来しているのでしょうか?どこにも正解があるわけではないので、これは私の見解ですが・・・

 特に米国では、わざわざDXという単語を使わなくとも、普通にDXを進めているから

だと考えています。デジタル技術を使って商品やサービス、社内を改革し、それによって社会全体の構造の変革を追求する。この動きや考え方を国民の多くが肌感覚で理解し納得している。だからわざわざDXなどという単語を使う必要はどこにも無い。一方日本では企業のデジタル化が遅れていることについて政府も経済団体も把握しており、それをなんとかするために丁度流れてきたDXという単語(数年前はIoTという単語も)を唱えて、「これが日本に必要な改革なのだ」と必至にアピールする必要がある、という違いがあるのだと考えています。

日本のこの「DXを頑張ってバズらせる必要性」について批判するつもりは毛頭ありません。当社も微力を尽くしてDXの考え方の普及には力を注ぎたいと思っています。しかし、そうでもしないと改革に向けた一歩を踏み出せない日本企業については根本的な問題を抱えていると思いますし、企業変革を自ら興してゆく原動力の低さについてはもっと違う議論が必要ではないかとも考えているのです。

DXに次いで、GXも話題沸騰中です。これも官民そろってアピールをされているわけですが、いかんせんその動きは遅い。DX推進も含めて「ご近所が動けば自分も動く」という日本特有の横並び意識がそうさせているのでしょうか?ビジネスが国の中で完結し、量産した製品を輸出していれば良かった時代はとうの昔に終わっています。世界の中の自社のポジションを明確に意識し、世界的な流れの中でどう自社の舵取りをしてゆくべきなのか?について常に考える姿勢が必要だと思うのですが、多くの企業が横並び意識による現状維持による様子見に徹しているのではないか、とさえ危惧してしまいます。

先日、中国企業による日本への軽規格EV投入のニュースが流れました。大企業である日本の自動車メーカーの考えていることを私が批判する立場ではありませんが、ハタから見ていてもEVに対する取組があまりにも遅かった・軽視していたことは火を見るよりも明らかだと思っています。もし「もう少し様子を見てから判断しよう」と自動車メーカーが考えていたのであれば、それはDXと同じで「横並びを意識していたのではないか?」と勘ぐってしまいます。そうではないと信じていますが。

話が脱線しまくっていますが、様子見や現状維持思考でDXが進んでいないのだとすれば、それはとても大きな間違いです。自社体力を超える投資など必要ありません。今すぐできるDXを少しずつ進めること。これしか道は無いのだと思いますし、そんな議論を皆さんとできると良いのではないかと考えています。

 

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