「利益を上げなさい」 ストレートに言えますか?
「伊東さん見て下さい、こんな量になっちゃいましたよ」
A社長が見せてくれたスマホには、成果を出す過程において生み出された大量の「ボツ案や下書き、試作品などの山」を撮影した画像でした。
A社長を一言で表現しますと寡黙な方。会社自体も常に世の中の変化を的確に分析し、目立たず、騒がずも稼げる静かな一手を打ち出してこられています。
会社が順調に成長を遂げていると、反対派が現れるのはよくあることですが、過去に怒鳴り込んでこられたクレーマーから、関係者数名が約4時間拘束されたことが数回あったそうですが、毎回会社は至って冷静。何もかもを華麗に受け流す会社の態度に疲れたからか、張り合いが無くなったからか? やがてそのクレーマーはライバル企業はどこなんだ?と聞いてきて、その企業を次なるターゲットとしていなくなったほど。
よって、今まで重ねてきた会社の努力を口にすることもない冷静な方なのですが、そんなA社長がなぜ大喜びでそうおっしゃったのか?
それは、「今までの努力の方向性を大きく変えて、挑戦したことがない領域で悪戦苦闘し、はじめて大きな結果を出せたから」
私はチェーン経営で、利益を上げていくことは「筋トレ」のようなものだと捉えています。その理由は、鍛えたい箇所に合ったトレーニングをしなければそこの筋肉がつかないから。
腕力を鍛えたいのであれば、腕立て伏せや鉄アレイなどの道具を使うのが効果的でしょうし、持久力を鍛えたいのであればジョギングを日課にするのもいいでしょう。
よって、当たり前ですが「ジョギングしてたら、いつか腕っぷしも強くなるだろう」と考える人はまずいません。
ところがチェーン経営において、そんなお考えの方がたまにいらっしゃいます。
社員やスタッフには日々「売上を上げなさい」「目標個数を売りなさい」と口では言っておきながら、頭では「会社の利益を上げていきたい」というお考えです。
断言します。「売上と利益は別物です」「売上を上げなさいと言っているうちは利益が大きく上がっていく事はまずありません」
ここで経営者の貴方に質問です。
会社が求めているのは何でしょうか?
それはどの企業も必ず「利益」と応えるでしょう。なぜなら企業とは営利追及集団だからです。質問が当たり前すぎて「バカにしてるのか?」とお怒りになる方もいらっしゃるかもしれません。
私が言いたい事は単純で、会社の「利益」を上げていきたいのであれば、日々従業員に言い続けなければならないのは「利益を上げなさい」ということです。
その理由は「利益を上げる力がいつまで経っても、鍛え上がっていかないから」
かつて日々鍛え上げていた箇所をある日大きく変更し、それから30年。今なお成果を上げ続けているチェーン企業があります。それはコロナ禍においても過去最高益を更新したスタジオアリスです。
22年度の決算説明において、営業利益の前期比は127.1%と大きな伸びでした。来期の営業利益の予測は+9.7%という大きな数字を打ち出しているほど、強気の企業です。
この企業が「こども写真館」という新たな事業を起ち上げる前はDPEショップのチェーン店でした。今ではターゲットは子供。店舗はショッピングセンター内に構え、スタッフは女性が95%となっていますが、昔は駅前に店を構え、店名は「〇〇(苗字)写真館」、そして店員は男性が当たり前と言う時代でしたから、その変わり様は180度と言ってもいいくらいではないでしょうか?
注目すべき点は「こども写真館」という新たな路線に大きく舵を変えた時、その後に襲い掛かってくる課題の山を乗り越えられるのか?と踏みとどまることもなく、前進できたところです。
襲い掛かってきた課題とは
・古い写真館さんから「あんなの写真館じゃない、邪道だ」と非難された
・どうしたらスタッフがお子さま対して、恥ずかしがらずに接することができるのか?
・お子様の着付けやヘアメイクの領域まで踏み込めるのか?
・旧来の写真屋のイメージが定着している中、お客様がお店へ入り易くするには?
・スマホで気軽に毎日写真を撮る時代。それでもお子さんのいる家庭の需要を取り込めるのか?
今でこそ我々は「あぁ、あの企業ね」「子供の写真を撮るならあの企業だな」というイメージが定着していますが、それまでの道のりはどんなに険しかったことでしょう。
私は利益を上げていきたいのであれば、社員やスタッフには「利益を上げなさい」と言い続けるべきだ。と言いましたが、「そう簡単に言われても・・・」と思われる経営者も多い事でしょう。
なぜなら「売上を上げなさい」ではなく「利益を上げなさい」に路線変更した際、その後にどんな課題がやってくるのか? 鋭い経営者であれば、もうすでにその課題の正体はいくつか視覚に入っていることでしょう。
まず挙げられるのは
・社員、スタッフのドン引き。「会社は急にえげつなくなった」と捉えられるかも?
・同業他社から「あの企業のマネジメントは邪道だ」相手にするなと言われたり
・各リーダーが「そんなこと部下に堂々と言えない・・・」とビクビクされることなく、胸を張って言い続けられるには?
・転職サイトが儲かっていて当たり前の時代。「利益を上げなさい」と言っておきながらどうしたら辞められる事もなく「この会社こそ私の天職だ」と思ってもらうには?
・利益は売上と違って結果がすぐ出ない。「君は実に良い結果を出したな」などモチベーションを上げてもらいたいのに、どうやってマネジメントすべきか?
課題をいくつか挙げてみましたが、他にも経営陣を立ちすくませてしまう恐ろしい課題はいくつもあることでしょう。
しかしスタジオアリスのように、稼ぐ企業は臆しません。
まるで「誰も通ってない道なんだから、苦労するのは当たり前」と涼しい顔のまま、いきなり一歩を踏み出し、会社に襲い掛かってくる課題を1つずつ丁寧に克服していくのです。
それによって「君の出した結果は凄い利益だね」「君のもいいよね~、どうやって思いついた?」などと、経営陣が身を乗り出すような結果が、組織の誰からも日々出続けるようになります。
日々鍛え上がっていくのは「売上の上げ方」ではなく「利益の上げ方」
「経営者が真に求めていた鍛えたい箇所の筋肉」が徐々に形成されていき、更に数年後、数十年後には「誰もが本気を出したくなり、経営者が長期間手を掛けずとも、利益が勝手に上がり続けていく組織」となるでしょう。
貴方の企業はいかがですか?
経営者が求める鍛えたい箇所に日々、筋肉が順調についていってますか?
「売上を上げていこうとしてるんだから、利益もいつかは・・・」と期待していませんか?
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