工務店の『アフター』考(その3)
住まいの『アフター』考(その2)からつづく
施主の「2大懸念」
営業マン時代に見込客の方々から、心配顔でよく尋ねられたことがあります。圧倒的に多い質問です。それは、「どうして、普通の家よりアフターのリスクを冒してまで「デッキ」や「造園」が必要なのか?」と言うことでした。自分の家を持つと、アフターメンテナンスにも自分で責任を持つということを意味します。長期の住宅ローンを抱える中、ただでさえ経年劣化によるアフターメンテナンスが心配なのに。。。という心情には同意できます。
しかし、この質問は私にとってはとても良い質問で、答えは単純明快なものでした。答えは「デッキ」や「造園」が入居後の将来の居心地を高めてくれるからです。ただし、時間の経過を前提とした視点で設計されなくてはいけません。入居してから数十年の後の在宅時間が長くなっている頃の生活の豊かさも、提供価値なのです。そのためには「デッキ」や「造園」は不可避であるから提案しているのです。
そう言われても、激しく傷んだ状態が放置されている他人の家を見るにつけ、お施主様の「心配事」は増幅されていくことが通常です。その「心配事」を「安心」と「期待」としてもらえるよう、数十年経過した未来を体感してもらう必要がある訳です。その一端として自宅の様子を発信し続けているのです。
具体的には、今ご覧になっている弊社ウェブサイトのコラムまたは、新建新聞社が運営する住宅実務者のコミュニティ【チカラボ】にて投稿しています。いずれも、テーマ:続・家づくりの玉手箱となっている記事がそれにあたります。
↑住宅実務者のコミュニティ【チカラボ】 https://chikalab.net/rooms/136
↑弊社ウェブサイトのコラムの「6つのテーマ」 https://tamatebaco.co.jp/column/
「人に頼むメンテナンス」と「自分でやるメンテナンス」
やり方を知って、可能な限りセルフメンテナンスを実践することで、機械的に行う定期メンテナンスによるロスを回避することができます。(工務店側は機械的な定期メンテナンスでまとまった金額の受注をしたいのですが)そして「回避したロスでもっと良くするリノベ的アフターへとシフトしましょう」というのが「プロの住まい手」発想です。
戸建住宅においても、マンションのように定期的な点検と定期的なメンテナンスを提案するのが一般的になりつつあるようです。しかし、区分所有であることによる縛りのあるマンションに対して、自分でメンテナンスの時期・規模・依頼先(セルフ含む)を選択・決定できるのが100%自己所有である戸建のメリットのひとつです。
マンションの大規模修繕では、計画どおりに定期的な大規模修繕が行われることが前提のようです。しかし、賢明な管理組合では詳細な状況診断の上、工事の実施時期を柔軟に調整(この場合は遅らせる)して修繕積立金の有効使用を行なっています。
こういった取り組みの背景にはマンションの修繕費用の高騰、修繕積立金の確保についての甘い見通しが原因になっている面もあります。盲目的に計画通りの大規模修繕を実施して行けば、定期的な修繕積立金に加えて所有者が高額な一時金を負担しないと資金不足になってしまう管理組合も多くあるからです。
区分所有であるマンションでは多くの所有者の同意をもって何事も決定されていきます。なけなしの修繕積立金から盲目的に多大な負担をし過ぎてしまい資金的な「破綻」をきたしている例も実は多くあるのです。「技術的なことはシロウトなのでわからない」と言っていては、管理会社や工事会社から「カモ」にされてしまうかもしれないという事です。
誤解のないよう断っておきますが「定期的な大規模修繕がよくない」と言っているのではなく「その時点での必要性・妥当性に目を向け判断することが貴重な資金の防衛策になり得る」ということを論じているのです。誰だって歯医者に行って抜かなくていい歯を抜かれたりすると、イヤですよね。歯を抜いて入れ歯にしたいのではなくて、できる限り自分の歯でしっかり噛みたいんですよね。
戸建住宅の所有者は100%自己所有だからこそ、そこは「裁量」を行使すべき分野かと考えます。また、そういった思考を共有できるパートナーとして工務店を選択できることが理想です。
「人に頼むメンテナンス」の代表として庭木の定期的剪定の実際をご紹介しました。自宅では4年に1回お願いしています。
↑以上、オリンピックイヤーの『庭木剪定』 からご紹介
次に「自分でやるメンテナンス」の代表としてデッキのメンテナンスの実際をご紹介しました。気がついたら「ちまちま」と無理のない範囲でやっています。
↑以上、ヴィンテージデッキの『修理レシピ』1 からご紹介
↑以上、ヴィンテージデッキの『修理レシピ』2 からご紹介
生活価値を高めるリノベ的アフターへ
以上のように、かしこく合理的に「人に頼むメンテナンス」と「自分でやるメンテナンス」を組み合わることで、本来の問題である「いごこちの低下」を回避「いごこちの向上」へ導く資金と知恵を獲得してもらいたいものです。どうせメンテナンスをするのなら、いごこちの工夫もする。いごこちが目的で工事は手段であるべきです。「生活価値を高めるリノベ的アフター」とはそういうものを指しているのです。
具体的な「生活価値を高めるリノベ的アフター」の実例は、弊社ウェブサイトのコラム(テーマ:続・家づくりの玉手箱)で多数ご紹介しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
住まいの「生活防衛」は経済的な面に限らず、「いごこち防衛」も重要な要素です。その概念を実践できる工務店は必ず指名されるようになります。お客様から選ばれるのです。
>住まいの『アフター』考(その4)につづく
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