目標「値」をきちんと定義する
クライアントと一緒に事業の目標を考える時、私は必ずといって良いほど数値にこだわります。売上高や利益率など、比較的簡単に追えるものだけでなく、社会への波及効果や視認率、顧客の満足度や行動変容など、一見して数値になりにくいものでも極力数値に置き換えるように、とご案内しています。理由は簡単で、それがビジネスにおける目標である以上、達成度を客観的に比較するための手がかりが必要だからです。
最近は特に、数値化しにくい変数を求められることが増えて来ました。一見すると定量的な観察が可能に見えても、定義をしっかりしておかないと計測しづらかったり、関係者間で認識がズレてくるというのは良くあることです。たとえば「リサイクル率100%」と言われて皆さんはどんな指標を思い浮かべますか?廃棄物の全てがリサイクルされている様子でしょうか?あるいはとある製品がすべてリサイクル材から作られている様子でしょうか?
前者は金属資源の循環などを説明するときに良く使われる考え方で、廃棄するものをゼロにしていますよ、ということを謳っているのですが、再生工程のどこかでリサイクル材が新品素材と混合されて使われているというケースも少なくありません。そうすることによって全体の材質を合格品質に保ち、結果としてリサイクルが進むことになるため、金属の業界ではごく普通に行われています。
でもそうすると、その工程からできた製品には一定量の新品材料が混ざっているため、製品のみを見たときにリサイクル率100%とはちょっと言えなくなるわけです。逆に、製品のリサイクル率を100%にするということは、廃棄物を使えるものと使えないものに分別して、使えるものだけでその製品を作ったという説明とほぼ同値になります。この場合、使えないと判断された部分は廃棄されてしまうことになります。
話をカンタンにするため、とある材質のプラスチックを対象として考えてみます。今、「100%リサイクルプラスチックでできたプラ容器」というものがあったとします。廃棄されたプラスチックを選別し、使えるものだけで再度容器を作るわけです。この場合に工程で不合格とされた廃プラは・・結局燃料になったり、埋め立て処分されたりすることになります。
逆に、廃棄物の再生工程におけるリサイクル率を100%にする(無駄な廃棄物を出さない)ためには、新品のプラスチック材を混ぜるなどして一定以上の品質を確保することが必要になったりするわけです。
こんなズレを予め見つけて排除しようと思うと、変数の定義をしっかりと見直しておくことがとても重要となります。
一事が万事、目標「値」がいったい何を物語っているのか、周囲からの誤解を招いてしまうような表現や変数定義をいつの間にかやってしまっている事例はないか、管理者は常に高い関心を持ってレビューするように心がけてください。
目標値への取り組みに重きを置く経営者を、当社はいつも全力で応援しています。
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