売上が増えても、資金が減っていく会社の共通点
どんな社会情勢であっても、社長の悩みは尽きないものです。特に、事業永続のキーポイントである「資金」「キャッシュ」「お金」は、最も根が深く、時に深刻な悩みが多いものです。
悩むことは、自社の課題と真剣に向き合っている証拠なので、決して悪いことではありません。経営者として、むしろ素晴らしいことです。
ですが、「悩む」を放置してしまえば、時間とともに状況は悪くなるだけです。いかに問題点を適切に捉え、正しく手を打つかが重要になってきます。
会社のお金の悩みを解決するためには、社長自らが「財務」の実務を身につけるしかないのですが、ここに勘違いがあります。
多くの社長は、「売上を増やせば、潰れない会社になるはず」「人を育てて組織づくりをすれば、会社は潰れない」と考えます。ですが、これは全て間違いです。売上を増やすことと、倒産は、別次元の話です。
それにも関わらず、多くの社長が「お金が足りなくなったら、銀行から借りればいい…」と考えたり、実際に、銀行からお金を借りて資金ショートを回避したりします。
大切なことは、目先の資金繰りを工面し、資金ショートを回避することは、単なる対処療法にすぎないということです。
根本的な課題が解決しない限り、また同じような事態に陥ることは明らかです。最も大切なことは、根本的で本質的な「自社の真の課題」と向き合うことです。
自社の根本的な問題点と向き合わないまま、「売上至上主義」の考え方から抜け出せず、資金繰りを含めたあらゆる経営課題を「売上を増やす」ことだけで解決しようとすると、「売上が増えても、お金が減っていく」という状況に陥ります。
なぜなら、「売上を増やそうと思えば、先にお金が出ていく」という、経営の原理原則があるからです。
例えば、店舗系のビジネスを営んでいるとしたら、新規出店のための費用・商品仕入のコスト、お店を知ってもらうための広告宣伝費、スタッフやアルバイトの人件費など、事業の成長のために先にお金を投下しなければなりません。
その後、利益が出れば税金も発生しますし、借入金の返済などもあります。ですから、売上を増やそうと思えば思うほど、お金は減っていくという落とし穴があります。
さらに、売上で全てを解決しようと考えると、時に「赤字受注」を繰り返して、自分で自分のクビを締めてしまうことがあります。
戦略的な赤字受注であれば話は別ですが、何の考えもなく、赤字受注をすれば、売上は増えても赤字は増えるに決まっています。ひどい場合には、赤字受注になっていることさえ気づいていないこともあります。
アタマではわかっていても、自社の経営課題に正面から向き合う勇気と覚悟がないと、問題を見て見ぬフリをしてしまうものです。
自社で顧客を獲得する力のある会社や、社長自らがゼロから顧客を獲得する気持ちのある会社であれば、強引な値下げ要求をする取引先とは縁を切り、新境地開拓のために一念発起するものです。
ところが、企業風土として「下請体質」が染みついていたり、社長自身が問題の本質を甘く考えていたりすると、抜け出すためには、相当な時間と努力・根気が必要です。
問題の本質と正しく向き合わない限り、経営を続ければ続けるほど、資金がドンドン不足していって、最後は倒産という負の連鎖に陥ります。
ここで明らかなことは、何の戦略もなく、目先の資金不足を乗り切るためだけに銀行を頼る…という考えでは、いつまで経ってもお金は残らないということです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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