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戦略の組み立て時に起こしやすい大きな勘違い

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

当社のメインビジネスはIT化戦略立案コンサルティングですが、IT化戦略と経営戦略は切っても切り離せない部分が多いので、純粋な経営戦略のご相談を受けることが多々あります。その相談の中で、社長が大きな勘違いをしている、ということに気がつくことが多々あります。中でも「問題を問題として放置して戦略を立案している社長が多い」ということです。

企業の成長は、金銭的には「顧客単価、顧客数、変動費、固定費」の式を組み立てて管理することは当たり前ですが、ある時話をした社長が持っていた問題が「下請け仕事主体で利益率が低すぎる」でした。このような時、公的機関に経営指導してもらうという選択肢はあるのですが、その指導をしてもらった後に完成した「経営戦略書」があまりにも未完成な状態だったのです。

どのような状態だったのか、差し障りない範囲でご紹介すると・・・

 平均利益率を上げるため、利益率の高い仕事に集中する

という目標(?)が掲げられていたのです。これでは全く目標になっていませんし、目的にすらなっていません。当然それ以外にも様々な施策が記述された戦略書ではありましたが、それらも全て考え方を書いているのみで抽象的。どれも計画に落とし込むことができそうにないことばかりでした。目標が漠然としていますし、それが正解かどうか誰にも解らない状態なので当然です。社長に、「この戦略書を今年の経営計画に落としていますよね?それを見せてください。」とお願いして出てきた書類にも、具体的施策は無く考え方しか記載されていませんでした。

要するに、

 利益率が低いことを単純に下請けが主体だから、に置き換えてしまっている

 下請けから脱却できれば利益率が高くなるなら、その脱却の方法を考えなければならないのにやっていない

 年次計画に展開する際に、考え方をそのまま転記しているだけで、具体的なアクションに繋がらない

という状態でした。このコラムをお読み頂いている読者であればさすがにこのようなことは無いと思いますが、要するに問題を課題に転換しなければならないのに、

 問題に関する分析ができておらず、直感的な考え方のみを記述し、それで満足してしまっている

状態に留まっているのです。

これは、この会社だけで見られる特有なものではなく、様々な企業の戦略立案段階で見られる落とし穴です。問題を分析しきれていないので、日程計画にできる課題やタスクに分解できず、それが故に何年も問題は解決できていない…。様々な経営指導機関に指導してもらっても、経営指導員はその業界や業種に詳しい専門家ではないので、どうしても分析手法やとりまとめ手法の説明に留まってしまう。

ところが教えられた手法通りに(穴埋め式に)資料を作成してゆくと、完成したものの体裁が整っているので、見た瞬間にその資料の外見だけで満足してしまう…。これが私の言う「戦略立案段階での大きな勘違い」です。

このような戦略書を見せられてIT化の指導を依頼されても、結局具体的なアクションが何も書かれていませんからうまくいくはずもありません。IT化だけでなく、あらゆる打ち手が取れる状態にはないので、戦略書があっても棚に置いておくだけのお飾りになってしまうのです。

非常に残念な状態の話を書きましたが、経験上とても多いことです。経営戦略を作って社長自らがそれに満足してしまっている、でも何年たっても何も改善されたにジレンマに陥っている、改善できていない理由がわからず悶々としている、という状況を見かけることが多いので、是非皆さんもこんな勘違いをしないようご注意頂くのがよろしいかと思います。

 

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