ローカリゼーション(現地化)とは何か?
皆さんは「天地人(てん・ち・じん)」というNHK大河ドラマを覚えておられるでしょうか?2009年に上杉家の家老・直江兼続(妻夫木聡)が主人公となり放映。このドラマでは少し異なる意味合いで使われていましたが、もともと「天地人」とは、中国古代に起こった思想の一つ。「天・地・人の3つは、それぞれ完結した世界を形成しながらも、相対応して同一の原理に支配されているという思想」です。もう少し簡単に言えば、「世の中の万物を形成する要素がこの3つであるという考え方」です。
最近、多くの経営者の方から、「海外市場に進出する際、製品のローカリゼーションをどう考えればよいのか?」というご相談をいただきます。それらの企業は日本市場ではこれまで成功されており、一定の売上・利益を挙げられています。しかしながら、海外市場に挑戦するにあたり、前述のような悩みが生じるのです。
そのご相談に対しての回答を一言で述べれば、「(あまりにもそっけない答えですが)自社の既存製品で変えるべき部分と変えなくてよい部分を間違わないということ」が回答となります。当方もこれまで多くの海外進出企業を目の当たりにしてきましたが、変えなくてもよいにも拘わらず仕様を変更してしまったケース、(逆に)変えないと現地市場に受け入れられないのに既存製品そのままで海外市場に挑戦したケースが多々あります。何れの場合も結果は「惨敗」であったことは言うまでもありません。
それでは、ローカリゼーションの必要可否およびその度合いはどのように判断すればよいのでしょうか?そのヒントは、さきほどの「(世の中の万物を形成する要素である)天地人」にあるのです。ローカリゼーションの判断基準には3つの視点が必要です。
まず1つ目は、「地(狙う市場の風土)」の視点。その市場の気候や立地などがそれにあたります。分かり易く言えば、1年中暑く毎日スコールが降るような気候の市場に(四季の違いが特徴の)日本の衣服をそのまま持って行って受け入れられるか?ということです。
次に2つ目は、「人(狙う市場の文化)」の視点。その市場の言葉や習慣などです。具体的には、主食として麺類を食べる食文化のない市場にカップラーメンをそのまま持って行っても売るのは難しいでしょう。何らかの工夫が必須です。
最後に3つ目は、「天(狙う市場のトレンド)」の視点。前述の2つの視点は、その市場の過去からの特性を示していますが、これらの特性も常に少しずつ変化していることに目を向けなくてはいけません。俯瞰して視る(鳥の目)だけではなく、現地の生の情報を注意深く視る「虫の目」も重要なのです。多くの企業経営者と現地での市場調査にご一緒すると、「日本にいる時に考えていたイメージと少し違った」と新たな気づきを得られることが非常に多いのが実情です。
ご紹介した「3つの視点で考察した」狙う市場の特性が日本市場と大きく異なる部分があれば、その部分をローカライズするというのが極めて重要です。この考え方は商品だけでなく、サービスにおいても当てはまります。海外市場を目指す企業経営者・幹部の方は、「天地人の観点」から自社のローカライズについて一度考えてみては如何でしょうか?
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