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工務店の『アフター』考(その1)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

先日、東京ビッグサイトにて開催された新建ハウジング主催「リノベ工務店サミット」に登壇させていただきました。そのセッションのタイトルは「宝箱の鍵を開けるアフター戦略+循環型モデルの最先端」でした。その概要としては以下のような導入文が添えられていました。

 

工務店・リフォーム店にとってアフターの徹底=家守り(いえまもり)は、オーナーの協力・応援、評判向上・ブランディング、クチコミ、紹介、メンテ・リフォーム受注など様々なメリット・収益を実現する、いわば宝箱を空ける鍵。アフター・家守りを徹底し、最終的には賃貸化・再販までサポートすることで顧客満足と住宅寿命、そして自社の生涯収益を最大化する多様な手法、循環型モデルの最先端を紹介する。協賛:アイジーコンサルティング

 

このタイトルや導入文を見て、思い出されることがありました。 大阪の総合不動産会社時代に、入社間もない私は多くの役員・幹部の方から「うちは、既に数万戸の分譲実績があり、それらが順次リフォーム・仲介・建替え等の需要期に入る。将来のビジネスの種は十分蒔いてあるから安心して働けるぞ」というような言葉をよく聞かされたものです。

主要な分譲団地内には、リフォーム・仲介・建替え等の窓口となる立派な拠点が配置されていましたが、現在ではそれらは全て閉鎖されています。数万戸の分譲物件は確かに新たな需要期に入りました。しかし、どうやら分譲したその会社は、住まい手から依頼先として選ばれなかったようです。これは、私にとってはちょっとしたトラウマなのです。

 

今回は協賛のアイジーコンサルティングさん、東村山の相葉建設さんとの三者でのプレゼン&ディスカッションというスタイルでの構成で、弊社では『プロ施主』ならぬ『プロ住まい手』の目線で工務店のアフターに対する視点を話しました。その際お伝えした内容を今回から4回に分けてダイジェストします。

※プロ施主:「家づくりに真剣で工務店よりも断熱や気密などに関する知識を持っており、SNSなどでの情報発信が得意な人」

 

 

シンケンスタイルとは

 

自宅がどんな家なのかお伝えしてかないと話が見えてこないと思い、プレゼン冒頭で建てた会社(シンケン)の特徴を3点挙げました。20年住んで感じる特徴です。「特徴」とは端的に違う点であり、その会社に依頼する「理由」でもあります。

 

 

↑当日のプレゼンから「シンケンスタイルとは」3点

 

 

上記のように【経営者が生活者の目線で自ら「住みたいと思える家」を建て続ける会社】といえば「うちの会社もそうだ!」と言われる社長も多くいらっしゃるかもしれません。しかし【経営者が生活者の目線で自ら「住みたいと思える家」以外は建てない会社】と言い換えると如何でしょうか?おそらく半分以下になってしまったのではないでしょうか。言い方を変えただけですが。

そして、ふたつめの【それぞれの土地事情に対して「妥協のない居心地」を徹底追求】するために、周囲の環境や庭づくりと一体とした提案になるのです。よって建物プランは規格という訳にはいかないのです。

その後、年月が経った後の【「10年後、20年後」と徐々に増していくその居心地はまさに圧巻】というのは最近築20年を迎える自宅で実感している事です。いささかもオーバーな表現ではありません。たまにお会いするシンケンの住まい手さんと、いつも盛り上がるテーマでもあります。

シンケンとは本当にそういう会社なのです。

 

 

 

シンケンスタイルの『アフター』

 

今回の「お題」はアフター【アフターマーケティング(詳細後述)】です。施主として経験してきたアフターの在り方も紹介しました。合わせて「どんな建物なのか?」「どのような施主さんが多いのか?」といったことも「前提」としてお話しました。「前提」が違っていると、事の本質が違って見えてしまうからです。

 

 

↑アフター以前にその対象が絞られていることが重要

 

 

家を建てれば建てるほどにアフター業務は増えていきます。受注規模やエリア設定、災害頻発などによって、その負荷は指数関数的に増加してしまうことすらあります。工務店業界ではアフターにかける人材・経費が増加、負担として累積していくことを恐れる傾向にあります。

「持続可能な」というワードを最近よく耳にしますが、工務店経営に関してアフターに関連する事業の採算をいかに保つかという命題は逃れられないテーマと言えます。そこをクリアしないとやがてはどこかで「持続不可能」になってしまうからです。

シンケンスタイルのアフターの持続性は、①建物・施主の属性が絞られていて、②多数の社員が各年代の自社の家に住んでいて、③入居後いつ、何が、どういうふうに発生するのかといったファクト(事実)に基づく情報の共有が継続されているといった事で担保されているように思います。

社員宅は、実に50棟を超えるオーダーになっています。これは特異な環境ともいえますが、独自の「生態系」のようなものが確かに成立していて、合理的に持続しているのです。

 

 

工務店の社長に「感じること」

 

いっぽうで会社設立後に出会い、見てきた「一般的な工務店をとりまく環境」はまた違ったものでした。上に挙げた①②③共に全て逆の状況なのです。①建物・施主の属性が絞られていなくて、②社員はほとんど自社の家に住んでおらず、③入居後いつ、何が、どういうふうに発生するのかといったファクト(事実)自体を認識していないのです。

なぜ、そのような状態になってしまうのか?そこには社長をとりまく「前提」が違っていると感じるのです。セッションではその内容を以下のように例示しました。

 

 

↑ここ数年こういう社長と多く出会いました

 

 

今回の協賛会社である(株)アイジーコンサルティングさんは「アフターマーケティング」を標榜し、工務店のアフター業務のアウトソーシング先として事業展開されている会社です。「アフターマーケティング」というのは、引渡後、採算度外視でお客様に尽くすだけのアフターサービスから、LTV※を最大化し収益構造の転換を図るという考え方だそうです。

 

※LTV:Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略で、「顧客生涯価値」と訳される。

 

これは、ひょっとすると工務店の抱える構造的問題に対する変革となるかもしれません。 しかし、そもそも一般的に工務店が自社のアフター業務に関する「生態系」構築にかいもく見当がついていない中で、その状態から「アフターマーケティング」といってもどうやって実現するのだろう?という疑問は湧いてくるのでした。

 

 

 

 

住まいの『アフター』考(その2)につづく

 

 

 

 

 

 

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