「廃棄」をビジネスチャンスにする考え方
メーカーにとって、製品が売れることは嬉しいことです。ユーザーの手元に届いた製品が使われたり、次の製品へと組み込まれたりして、普通は時間とともにメーカーの目が次第に届きにくくなってゆきます。そしてどこかの時点で、製品は価値を生まなくなります。
いわゆる「廃棄」や「死蔵」がそれにあたります。この段階まで時間が経過すると、メーカーの目はほとんど届かなくなっていることが多いのですが、今日はここにこそ新たな価値が眠っているということをお伝えしたいと思います。
今、仮に「廃棄」や「死蔵」されてしまう製品を、メーカーが回収できる立場にあったらどんなことが考えられるでしょうか。
一つには、「廃棄」や「死蔵」によって発生する懸念やリスク(含有される有害物質などの懸念)を上手にコントロールしようとすることが考えられます。通常の場合、メーカーはユーザーよりも製品によって発生する環境負荷など様々なリスクに関してより多くの情報を持っているため、適切な措置を講じることでリスクを回避する行動を取ることが期待されるわけです。
メーカーとしても、この局面で社会的責任を果たすことは社会の負託に応える行動になると言えます。逆に、この段階で適切なアクションを取れなかったことが後々から経営リスクとなって跳ね返ってくることのほうが何倍も大きいと考えるべきでしょう。
典型的な例としては、ハイブリッドカーや電気自動車のバッテリーが挙げられると思います。多様な化学物質を含む高性能な二次電池は、適正処理を経ずにそのまま埋め立てられたりすると、環境問題を引き起こす原因になることが懸念されます。
自動車メーカー各社はこの部分への対応を怠りなく進めており、たとえばトヨタはアジアでDOWAコーポレーションと協力関係を構築するなどの事例がすでに稼働しています。廃車から回収されるバッテリーについてはしっかりと適正処理がなされるバリューチェーンが構築されているというわけです。
今一つの対応は、回収品の再利用・再活用で、実はこの部分にこそ新たなビジネスチャンスが眠っていると言えるのです。オフィスで使われているリースパソコンの例を考えてみましょう。リース品の常として計画的なリプレースが行われるため、大企業の場合だと一度に数千台オーダーで旧モデルが「廃棄」されるのですが、実際には専門の事業者によってOS
の入れ替えやハードディスクの換装(最近だとSSDとの交換)が行われ、再度リース品として海外市場などへ送り出されたりしています。
現状ではこのサイクルも2回、3回と回り続ける仕組みにはなっていないのですが、いわゆるDXが実装されてゆく流れの中では、繰り返して循環するシステムをデザインすることもさほど難しい話ではなくなっています。
典型的な例はAppleのiPhoneでしょう。市場全体として中古品を正当に評価し、新品とシームレスな市場を形成しています。「作って、売って、終わり」ではなく、「作って、売って、使って、価値を提供し続ける」そんなビジネスモデルへと自社のあり方を見直すだけで、確実に新たな成長機会をモノにできるのです。
「廃棄」や「死蔵」にも目を配り、そこに新たな成長機会を見出そうとする経営者を、当社はいつも全力で応援しています。
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