それは、営業担当者の問題ではなく・・・仕組みの問題でもなく・・・
私は、質問しました。
「この問題さえ解決できれば、年商10億円行けますか?」
その問いに、S社長は答えました。
「はい、この営業のやり方を、営業担当者に徹底できれば、必ず10億円は行けるはずです。」
ある業界向けの専門卸業S社のこの時の年商は、約7億円でした。
S社長自ら開発した営業手法を「営業担当者に徹底すること」を目標に、コンサルティングはスタートしました。
しかし、それが徹底されても、思ったほどの成果はでなかったのです。
恥ずかしながらの、2週続けての私の失敗話です。
営業担当者に徹底する前に、まずやるべきは、「設計」ができているかどうかを確認することです。
組織で何かを得るためには、「設計」と「実行」の二段階が必要になります。
「設計」とは、「やることが決まっている」状態を指します。
そして、「実行」とは、「その決まったことが、その通りにされている」状態を指します。
この2段階が実行されることで、組織としてその何かを得ることができるのです。
そのため、まず、確認することが、「設計」がされているかどうかになります。
それは、言い換えれば、「文字化されているか」となります。
S社の状況を確認すると、「意外」にも、設計がされていました。(多くの社長は、設計(文字化)されていないのに、社員が実行しないと嘆いています。)それであればと、「実行」のための仕組みづくりに取り掛かりました。
その仕組みの完成から3か月が経った頃に、S社長からその結果の報告と相談がありました。
「先生、思ったほどの成果は出ませんでした。」
私は、「実行されませんでしたか?」と訊きました。あの仕組みで、それは、あり得ないはずです。
S社長は、急いで答えます。
「いえ、そうではありません。実行された結果、成果がでなかったのです。」
営業担当者は確かにそれをやってくれました。その様子をS社長も確認しています。行動量も行動の質も十分合格ラインにあります。
それでも、成果にならなかったのです。
そうなると、もう一つ上の要因を確認する必要があります。それは、「方針」です。「実行」の上の段階である「方針」について検討する必要があります。
S社長は、言われました。
「ありがとうございます、本当の問題が解りました。」
仕組化の手間を惜しんだり、その結果に落胆したりすることはありません。仕組化を進め、実際にやってみると、初めて、その答えが解るものです。そして、次に移れるのです。いままでの仕組化されていないS社には、その答えが見えなかったのです。
検討すると、「フロント商品が、それほどお客様の興味を引けていない」という結論に至りました。すぐに、その商品の見直しと提案書の作り直しを行いました。そして、営業担当者に展開したのです。
また、それから半年ほどが経ったころ、S社長から相談がありました。
「先生、事業の限界を感じています。いまのこの事業で年商10億円は行かないのではないでしょうか。」
新たな方針を立て、営業担当者と一緒に動いてみて、S社長はこれに気づいてしまったのです。実際に営業の成果は出ています。しかし、それほど、お金が残っていかないのです。
時代の変化と共に、お客様の要望も変わってきていました。また、競合も増えて来ています。S社の事業には、明確な特徴も差別化の要因もなくなっていたのです。
S社長は言われました。
「先生、ありがとうございます。本当の問題が解りました。」
仕組みの問題ではなく、方針の問題でもなく、事業モデルの問題だったのです。
私は、このS社長の言葉を聞いて、「コンサル失格だな」と思いました。
症状を聴けば、何に問題があるのかを予測するのが専門家の役目です。それを読み間違えたのです。
「やってみて初めて、見えてくるものがあります。昔の当社なら、何か決めてもこんなに早く動けなかったはずです。」
私は、そうであればとS社長に訊きました。
「生産性って、どれだけありますか?」
これは、コンサルティングの前に確認すべき項目です。この数値で、事業モデルの良し悪しが判断できます。
S社長は、少し考え答えました。
「700万円ぐらいです。」
私は、また、自分を責めることになりました。
700万円、これは「低すぎる」数値です。これは、事業モデルに「問題有り」と判断できる値です。それは、「手間と単価が見合っていない」、「お客様(世の中)に支持されていない」、「営業担当者の人間力で成り立っている」という事業モデル自体の問題を疑ってみるべき数字なのです。
これだけ低いと、仕組みの問題ではありません。ましてや、社員の不実行が原因では無いのです。方針の問題でもありません。「最初から事業モデルの問題である」と予測を立てる必要があったのです。そして、S社が、最初に手を付けなければならないのは、事業モデルの変革だったのです。
私は、パソコンで、S社のコンサルティングの記録を開きました。
すると、そこには「生産性1300万円」の文字があります。
再度、S社長に質問しました。それで、次のことが解りました。
S社は、二つの事業を持っており、その「合算」での生産性が1300万円だったのです。
その内訳は、一つの事業が「700万円」で、もう一つの事業が「2000万円」だったのです。
だからS社長の認識は「自社の生産性は1300万円」となっていたのです。
これも、私のミスです。生産性を考える時には、事業ごとに「診る」必要がありました。
最初から、S社のこの一つの事業は、その「事業モデルに問題有り」だったのです。
そして、もう一つの事業に、大きな可能性があるかもしれなかったのです。
これから、S社の事業モデルの検討に入ることになります。
S社長は、言われました。
「先生、そうは言っても、当社は、以前とは全く違っています。仕組みで回る会社になっています。社員のモチベーションも高い状態にあります。事業モデルの変革も、それほど時間をかけずにできるはずです。」
自社の問題がどこにあるのか、それを正しく掴む必要があります。
設計、すなわち、「文字化ができていないのか。」
実行、すなわち、「仕組化ができていないのか。」
方針、すなわち、「何を重点に取り組むのかが、間違っていないか。」
それとも
事業モデル、すなわち、「誰を顧客とし、何を自社のサービスにするのかが、間違っていないのか。」
その時々で、自社の問題を正しく掴むこと、それがスピードある成長を実現することになります。
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