経営計画がない社長が陥る賞与支給の落とし穴
多くの社長にとって、夏と冬の賞与は、悩みの種の一つです。もともと人件費は、会社の維持運営をする上で最も大きなコスト(費用)なので、財務面での負担も大きいからです。
毎月の給与の支給だけでも負担なのに、プラスアルファーでの賞与となれば、どこまで許容できるのかを慎重に考えて支給をしないと、後々後悔することになります。
従業員の立場からすれば、賞与は、待ちに待った一大イベントです。社長としては、できる限り多くの賞与を支払ってあげたいものですが、一方で、絶対にこれだけはやってはいけないことがあります。
それは、社長自身が自社の財務状態を正しく理解しないで、考えることなく賞与を払ってしまうことです。
「なんとなく」「感覚的に」「毎年払っているから」という理由で、賞与を支給すると、最終的な決算の着地が成り行きまかせになってしまいます。
それにそもそも「なぜ、その賞与を支給するのか?」「どうして、その賞与が払えるのか?」の説明がつきません。
社員数が多い会社であれば、人事評価制度を構築して運用するという方法もあります。ですが、中小規模の会社であれば、難しいケースが大半です。
そのような場合、無理に人事評価制度を導入するのではなく、ある程度のゆるやかなルールを設けた上で、最終的には、社長のオーナーシップで賞与を支給することになります。
社長は賞与の原資はどのぐらいだったら良いかという数字の指標、つまり賞与のファンドを数字で具体的にしておくべきです。その賞与のファンドを従業員にどのように配分するのかというルールも明確にしておくべきです。
「賞与」と業績の関係性は、社長が明確に説明できるようにすべきですし、「賞与」をきちんとお支払いできるように、全社員が一丸となって頑張ろうという企業風土になれば、自走する会社経営が近づきます。
一方で、「税金がもったいないから、利益が出たら全て従業員に決算賞与で支払う」という話を耳にすることがあります。
決算賞与自体は否定しませんが、会社にお金を残して、内部留保をすることを考えておかないと、イザという時に資金が回らない、銀行からお金が借りられない…という事態に陥ってしまいます。
「赤字決算でも、賞与を払わないと風評被害が気になるから無理して払う。」という話を伺うこともあります。赤字であっても歯を食いしばって社員を大切にする…ということ自体、なかなかできるものではありません。
しかし、赤字であるということは、会社のお金が流出している状態なので、賞与を払うためには、銀行から借金をしなければなりません。
自らが借金を重ねて、従業員へ賞与を支給する姿勢そのものは、素晴らしいことかもしれません。しかし、その賞与も費用となりますから、赤字は、さらに拡大することになります。
もし、将来に向けて、赤字を拡大させるだけで終わっていたとしたら、果たしてそれは、「経営者」として正しい経営判断なのでしょうか。
会社の寿命を縮めることに繋がりかねませんし、大前提として、会社が潰れてしまったのでは、元も子もありません。
当然、赤字の規模や内容にもよりますが、「赤字決算になりそうだ!」ということであれば、可能な限りその赤字を拡大させないための方策を最優先すべきです。
大切なことは、社長自らが数字で自社の財務を理解し、「未来を創るための一手」を、数字で、具体的に考えられるようにしておくことです。 そのためには、経営計画が必要です。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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