組織内に高みの見物席を1つも作られないポイントとは?
「伊東さん、防犯カメラをいくつも設置している店をみかけますが、あれはマネジメントに効果的なんでしょうか?」
変わった質問をいただきました。
理由をお尋ねしてみたところ「他人に口出しはするが、自らは挑戦しようとしない人」を指導する際にこの方法が使えるかもしれない、とお考えだったようです。
業績を大きく上げられている企業の社員やスタッフはどんなことをしているのか?
それは挑戦です。
「もしかしたら大失敗してしまい、自分の身が危うくなってしまうかも?」
「いや、それでもやり遂げるぞ!」
高いリスクを乗り越えてでも、成し遂げたい!という勇気ある姿勢が会社の数字をグングン押し上げてくれます。経営者としては全従業員がこういった挑戦を繰り返してほしいところです。
ところが、いくら「挑戦が大事だ!」と常日頃から言い続け「やっと増えてきたかな?」となっても、そんな経営者の積み上げてきた努力をせっせと片っ端からドブに捨てていくかのごとくマイナス方向に汗を流す人がいます。
それが「他人に口出しはするが、自らは挑戦しようとしない人」です。
彼らはどんな企業にでもいつのまにか生まれてきては、挑戦を繰り返すかわいい従業員達にこんなことを言ってきます。
「こんなひどい結果を出したの誰かわかる? 実は〇〇さんなんだってさ」
「だから私は最初からこう言ってたんだよ、やめておけって」
「彼は人の話を聞かないからね~」
「この責任、どうやって取る気だろうね」
結果が出てからああだこうだと言う事は子供にもできるのに、仲間が戦いに敗れ、動けなくなっている姿を見ているのに、まるで高みの見物席に座り「痛めつけるなら今だぞ。みんな集まれ」と扇動します。
やがて社内にはこんな風潮が芽生え始めます。
「失敗したら大恥をかいちゃう・・・」
「それだけは嫌だ」
「無難に無難に、目立たないように仕事していこう」
せっかく経営者が積み上げてきた「臆せず挑戦しなさい!」という空気をオセロをひっくり返していくかのように黒く塗り替えていきます。
さて、そんなに陰口が達者な人達ならきっと普段は、誰もが尻込みしてしまうような課題にも勇敢に立ち向かってるに違いない・・・と期待したいところです。ところが彼らの行為は無難無難のオンパレード。もし、失敗してもかすり傷程度で済む一手ばかりで、とても挑戦と言える行為とはいえないものばかり。
そんな経営者を困らせる「他人に口出しはするが自らは挑戦しようとしない人」達は、一体どこから生まれてくるのでしょうか?
実は彼らは「元々そういう人だったから」というよりも、意外にも元は人一倍挑戦を繰り返していた人が多いです。
ではなぜ豹変してしまうのか?
彼らはある2つの条件が揃った環境に長居していると次第に心変わりしていきます。その条件とは「かつて大きな結果を出した」そして「長らく誰にも指導されていない」です。
彼らは更に長い間「誰にも指導されないまま」でいると、より会社を困らせる最悪な存在へと変貌していきます。
その一つの例として挙げられるのは「私は知らない、やってない」と非を認めなくなるです。
最近、ある政党がその悪いお手本を国民に披露してくれました。
「なぜ急に旧統一教会の名称変更が受理されたのか?」を巡る騒動において「俺じゃない」「私でもない」「特別な力が働いた」などと、国を動かす大人達がまるで子供が苦し紛れに発する言い訳を平然と口にしています。
「他人に口出しはするが、自らは挑戦しようとしない人」のよくある対処法は2つあげられます。結論から言いますが私はどちらもお勧めしません。
1.トップが自ら監視し続け、見つけ次第指導する
人に任せるより正確で確実にコントロールできるのですが、どうしても目の行き届かない所が出てきてしまうところがデメリットです。また経営者が監視ばかりにエネルギーを使っていると会社の前進にエネルギーが割けず、他社との競争に後れを取ってしまいます。
2.お金をかけて何か良いできあいのシステムを導入する
自社にピッタリフィットすれば最高です。しかし、それがなかなか・・・・難しいようです。ある社長はこうおっしゃいました。
「大枚はたいたからね、このシステムを導入してかなり業務改善が進みましたよ」
しかし、その会社のある社員はこうおっしゃいました。
「このエクセルですか?」
「これは私が自力で創ったんです」
「このエクセルにあらかじめデータを入力しておくことで、システムへの入力が早く、正確にできるようになりました」
事実を知った社長がどのくらいショックを受けていたか?は言うまでもありません。
また、できあいのシステムを導入するということは、ライバル企業にも採用、導入されている可能性があるということです。他社に大きな差を付けるのはただ導入、ではなく工夫が必要になってくるでしょう。
では私がお薦めする「他人に口出しはするが、自らは挑戦しようとしない人」のマネジメントとはどういった方法なのか?
会社の業種や規模などによって最良な方法は異なってきますので、どの企業も参考にできるようポイントとして表現させていただきます。
それは「自力でマネジメントを透明化する」です。
どのくらいの透明度が必要かと言いますと、理想は高みの見物席に座ってもいない段階、そろそろそんな席を創って「さて優雅に腰をおろして、口出しばかりし始めようかな?」と考えただけで「上司どころか、社長にまでバレちゃうじゃないか!」となるくらいです。簡単ではありませんが、まずは透明度を極限まで高めようと動くことが重要です。
そんな高い透明性を備えられているマネジメントを実現していて、各社が参考にできる企業があります。それはワークマンです。
8日の発表では2022年4~6月期の単独決算で税引き利益が前年同期比3%増の47億円でした。コロナ下でも好調な業績を出しています。
注目すべき点は2点です。
1.少人数運営で本部も把握しやすい
店舗スタッフがムリをしなくても店が回るようにしているに拘っていて
・自動発注システムの開発で発注業務の負担軽減
・商品は夜間に配送、営業時間中の受け渡しがない
などを取り入れています。
これによって加盟店オーナーや、店舗スタッフの負担が少なく、多くの人手を必要としません。人が少ないということはそれだけでマネジメントの透明度が高くなるものです。チェーン本部のマネジメントは常に省エネルギーです。
企業として「加盟店オーナーは閉店後5分で帰っても年収1,000万円以上」と公言してる程ですので、これまでのチェーンビジネスとは違った路線を打ち出し、他社との差別化も同時に実現させています。
2.社員やスタッフではない協力者を商品開発に起用している
8月10日(水)の日経新聞には「ファンと開発」PBの50%に
とありました。
協力者とはユーチューバーやブロガーです。
彼らは社員ではありませんので「高みの見物席に座って、口出しだけし続ける」という概念自体がありません。何を見て、どう考え、今後どうしていくのか? チェーン本部がわざわざ監視せずとも彼らは実現していないアイディアの段階でさえも本部に報告してくれるとてもありがたい存在です。透明度自体を高める必要がなく、元からクリアです。
自社のマネジメントを自力で透明化することには様々なメリットがあります。
その中で1つご紹介しますと「挑戦しなさい!」と背中を押してあげなくても誰もが勝手に挑戦し続けるようになるです。
ある社長がおっしゃいました。
「伊東さん、彼がこんな良い結果を出せた理由がこちらなんですよ」
彼は「40代になるまで今まで社会に一度も出ていなかった、人付き合いが苦手なM先輩が、日々彼なりに挑戦している姿を見ていて自分も影響を受けたから」
「正直、私は人事考課の時期になる度に頭が痛かったんですよ」
「一体君はこの1年間何をしてきたのか!」と言いたくて言いたくてしょうがなかった。ずっと我慢してたんです。今や我慢しなくても勝手にみんなが挑戦し続けてくれてますからね。
「できることならば大きな結果を出してもらいたいものですが、私はその人がその人なりに高い壁を乗り越えようと努力しているのなら、結果が小さくてもいいんです」
「自力でマネジメントを透明化する」は様々な方法があります。
A,B,Cのうちのどれにしますか?という限られた選択肢の中からしか選べない狭い世界ではありません。
どんな形になるか?は透明化を進めた方によって違いますので無限大です。
企業ごとにできあがった形が違うからこそ、それが強みにもなり、マネもされなくなり、誰もが挑戦したくなり、業績UPが加速していきます。
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