ワクワクする買い物をしている社長には不況なし! の本質
クライアント企業の商品リニューアルにおいて、気になる商品やサービスを実際に買って、使って、良い点も不満もそこから学び、自社のタネに生かしていくことを日々実践していただくようご指導しています。この時、ものすごく大事なことは、社長であれ、社員であれ、専門家であれ、「自分の財布」で買ってみることです。
前職は洋菓子メーカーにおりました。年がら年中、他社研究のために菓子を食べ続ける日々です。もちろんこうしたルーティーンにおいては、会社が参考商品代として菓子代を負担します。
一方、こうした試食目的ではなく、生活者として自分のお金でスイーツを買うこともあります。すると、自腹で買う場合には、会社の試食とは商品に対する感受性が異なることに気が付きます。
その違いは、喜怒哀楽、すなわち感情の「揺れ幅」です。自分で買った商品に対しては、うれしい! 楽しい! ワクワクするというポジティブと、その反対の気分が漣のように訪れます。
スイーツの場合、その味がイメージ通り、期待していた通りのおいしさであれば、満足します。しかし、「おいしくなかった」「商品が食べにくかった」といった不満があれば、がっかりです。
ネガティブをきっかけに、買い物時のことまで思い出し、「接客対応が良くなかった」「値段が高すぎる」など、不愉快になったり、イライラしたり、自分自身の気持ちが傷ついていることを知ります。不満が「痛み」となって、「痛みの記憶」として定着します。
このように、自腹で商品を買うことをしない限り、お客さまの心理にはぜったいに近づけません。お客さまの「痛み」や「傷つく気持ち」に近づくことができないからです。
お客さまの気持ちに想像力が及ばない人は、商品開発に最も向かない人です。ましてや、人々の心をつかむヒット商品、「売れる商品」をつくることはできないのです。
自社のビジネス習慣で、参考品を購入するときに、まだまだ「経費で買う」ことになっていると中小企業がほとんどです。それどころか、先行きが不透明の時代に、参考商品を買って試すという発想自体が消滅しているかもしれません。
商品戦略を練ることよりも、「金繰り」に注力する中小企業がほとんどですので、今ある商品のリニューアルは、今後のビジネスにおいて突出するための一手となります。どんどん外の世界に出てゆき、お買い物されることを強くオススメします。
とはいえ、「闇雲に買い物しなさい」ということをオススメしているわけではありません。「自分軸」で買うことが、大切です。
自身の「欲しい!」という素直な気持ち、ピュアな気持ちで買うことが求められています。あなたが欲しくないなら、買わなくていいのです。学校のお勉強でやるテストではないのです。正解などありません。
正解はない、と頭でわかっていても、「正解」を求めるのが人間です。正解探しをはじめると必ず「ヒットしているものを買おう」となります。そして、「じゃあ、真似してみよう」となり、どこにでもあるような商品が生まれます。
もっと困った問題が生まれます。そもそも自分起点でなければ、「売る」のも他人事になってしまいます。果たして、在庫の山となります。そうなれば、次に待っているのは在庫一掃の「SALE」です。
そして、セールで売れ残った商品は、捨てるしかありません。廃棄処分です。これは時代とは真逆の方向性です。環境負荷軽減の時代に、真逆の商品開発を行い、自社ブランドの価値を落とすだけ、残念な商品リニューアルになってしまいます。
商品を買う。買い物ひとつとっても、考え方で大きな差がでるという一例です。経営者である前に、あなたは生活者です。社長である前に、あなたは利用者です。その商品サービスの使い手です。「自分が欲しい」「自分が買いたい」商品からの発想だからこそ、一生懸命プロモーションすることができるのです。
この感覚、感受性を磨くために、意図して買い物してください。自腹で買い物を体験することによって、お客さまの気持ちが沁みるようになります。そして、その買い物体験の積み重ねによって、自社の良き点、そして間違いへの発見につながるのです。
もしも、あなたが、気持ちが内側に向かっていて、「外出したくない」「節約したい」「ネットで買いたい」「価値はわかっているけれど、1円でも安く買いたい」と思っているとすれば、そこから、どうやってお客さまに気分を上げていただくか、自分事になって、考えられるようになるはずです。
商品リニューアルの上手な会社は、この「自分起点」に気が付き、習慣化し、行動できる会社です。わたくしどもでは、口を酸っぱくして、何度も、何度でも社長にお伝えしています。ネチネチとしつこく「自分起点」をご指導しています。多くの社長が、正解を求めて間違ってしまうことを痛いほど知っているからです。
どんなビジネスも、自分で痛みを感じること、そのショックがきっかけとなって、新しい発想を得て、アイデアが肉付けされてゆきます。わたしたち自身の体験と実感が、明日への商品サービスを創造しています。商品リニューアルの道もまた、清濁込み込みで、社長ご自身がワクワクしながら買い物をすることが、いちばんの近道なのです。
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