店舗ビジネスの寿命
店舗ビジネスの廃業率をご存じでしょうか。厚労省のデータを確認すると、ざっくり5%前後となっています。例えば前年度に100店舗あったとすると、そのうちの5店舗が廃業している計算になります(ちなみに開業率は5~15%と業種により幅があります)。
単純化するために開業率と廃業率が同じ5%だと仮定すれば、10年で半分、20年ですべての店舗が入れ替わります。もちろん、現実的にはすべての店がなくなることはありませんが、感覚的には理解できる数字ではないでしょうか。
私はアパレル業界で仕事をして25年、店舗ビジネス経営者としては16年が経ちました。自身の店舗も含め、さまざまな店舗の栄枯盛衰を直に見てきましたが、業種業態を問わず、20年以上続いている店は数えるほどしかありません。皆さんも、身近にある店舗を思い浮かべてみてください。20年以上の老舗を何店舗くらい挙げられるでしょうか。
さて、ここで気になるのは、長く続いている店舗の共通点です。この点、私が最も重要視するのは「リピート率の高さ」です。つまり抱えているリピーター(顧客)が多い。商品やサービスにもよりますが、相当の頻度で来店し、利用してくれる顧客を多数保持する。だからこそ、何十年もの長きに渡り安定した店舗経営が継続できるのです。
ではなぜ顧客はリピートするのか。それは、顧客自身の「期待値」を上回っているからです。商品やサービスを購入して価格以上の価値を感じた。このことが「次も行きたい」という感情を誘発します。
価値観は人それぞれですが、多くの顧客が「期待値を越えた」と感じる商品やサービスを提供することは、長く続く店としての絶対条件です。見方を変えれば、「お客にどう期待させるか」ここが最も重要な店舗の仕事の一つです。
期待値のマネジメントは難しく、集客のためにあまりに煽るようなやり方は、結果的にお客を幻滅させます。かといって必要最低限の情報提供だけでは魅力が伝わりにくい。このバランスを取りながら、まずは一度来店していただくための試行錯誤を繰り返します。
「ここまでやってくれるとは!」と思っていただければ、ほぼ確実に次の来店が見込めます。「なんかよかったな」でも大丈夫です。「悪くないな」はギリギリ及第点でしょう。とにかく、お客が何を期待しているのか、店舗の全員が把握しておくべきです。
つまりは徹底した顧客志向。自分たちが提供したいモノやコトではなく、顧客のニーズやウォンツを満たすモノやコトに集中する。「思っていたのと違う」という小さな不満が積み重なると、リピート率は大きく下がります。リピート率が下がれば当然客数は減少し、一見客の割合が増えれば客単価も下がります。それが2年3年と続くと…
経営者の皆さん。顧客は何も言わず、黙って立ち去ります。店舗ビジネスで長く支持され、適正利益を出し続けるには、徹底した顧客志向であるようにしましょう。やるべきことは自ずと固まってきます。
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