「常緑樹」で日照調節する方法
植物と暮らす価値観
戸建住宅であれマンションであれ「植物と共に暮らす価値観」が弊社の住宅に対する基本概念です。ご指導させていただいているクライアントは皆様同じ「価値観」です。共通して耳にするのは「価値観は同じなのですが、お客様にどのようにして提案すればいいのか?現場でどのように実践すればいいのか?がぼんやりしていて。。。」という言葉です。
それはそのはず。日常こなしている仕事の内容にそもそも「植物」の要素が入っていなかったり、入っていても共に暮らすための「仮説」がないとその「てんまつ」が生きてこない。そういう「もどかしさ」には私にも覚えがあり、モヤモヤしたその感覚はよく分かります。2000年に鹿児島に引っ越してきた頃がそのような状態でしたから。
その後自宅を建ててもらってから20年間「植物」と共に生活する機会を得ました。生活体験の中で「お客様に何を提案するべきか」「現場で何を実践すべきか」といった事がはっきりとしてきました。「日除け」「目隠し」や「聞こえる音」「見える色」「香ってくる匂い」など。室外に生えているのも、室内で成長しているのも、それぞれに感じさせてくれる「大切なもの」が確かにあります。また、その「情緒的なもの」にも再現性(ロジック)が存在します。
冬場の陽射しは欲しい
今回のテーマは常緑樹での日照調節法についてです。多くの方は「日除け」といえば「落葉樹」、「目隠し」といえば「常緑樹」という整理をされていると思います。しかし、実際には「常緑樹」でも機能することが分かりました。毎年毎年夏は「日除けをする」冬は「陽射しを得る」といった、本来「落葉樹」のものとされる役割を果たすのです。
自宅で活躍する「常緑樹」の「冬場」「夏場」の様子をご紹介します。まずは「冬場」から。冬至の頃、お正月も近づいてきて、夏場に伸びきって陽射しを遮ってくれていた枝を、慌てて剪定しました。鹿児島の師走は暖かいので、ついつい毎年切るタイミングが遅れてしまいます。
↑12月22日(冬至の頃)の剪定前の様子(枝が伸びきっています)
↑12月22日(冬至の頃)の剪定後の様子(冬の西日が入るようになりました)
↑12月22日(冬至の頃)の西陽の位置(この時期以降の西陽はありがたい存在です)
冬場の西陽はダイレクトゲインによる「暖かさ」もさるこちながら、短くなった日中の終わりに「明るさ」をもたらしてくれる事もありがたいものです。長く伸びた陰が、なぜだか思い出される「懐かしさ」を誘います。夜が長い時期の思い出には、特別なものがあるのかもしれません。
夏場の陽射しは遮りたい
変わって「夏場」です。冬には、いとおしかった「西陽」が猛烈な熱さを帯びていきます。意外なことに冬に剪定した「常緑樹」でも、成長が早いものなら夏に間に合うのです。
実際に「暑さ」を強烈に感じるのは「梅雨明け」からです。今年は梅雨明けが早かったのですが、平年では7月15日頃です。例年夏休みに入る頃には、ボウボウになって十分に日除けができるのです。そしてまた、年末までにはバッサリ剪定するのです。
「落葉樹」は葉の散り方が少しづつで、ちらりほらりと散っていきます。葉っぱも薄く軽く北風に乗ってすぐに遠くまで飛んでいってしまいます。風流ではありますが、毎日のように掃除にも追われます。
その点「常緑樹」の葉っぱは、散らないわけではないのですが一時にどっと落ちる傾向があります。落ちた葉っぱもしっかりしていて、落葉樹ほどは吹っ飛んでいく感じではありません。日常的なことで考えると、より付き合いやすいのです。
↑7月9日(夏至近く)の様子(ぐんぐん伸びて半年で復活してくるのです)
↑7月9日(夏至近く)の西陽の位置(早くもうちょっと伸びてほしい!)
ご紹介した「常緑樹」樹種は「シマトネリコ」です。樹齢10年を超えてくると、剪定後の復活力が安定してくる気がします。逆に言うと、それまでは夏冬の「日除け」の使い分けは叶わず「ガマンの夏」を過ごすことになります。
シマトネリコ:シマトネリコはモクセイ科・トネリコ属の常緑樹。以下のような特徴があります。
* 剛健で土を選ばず、夏の暑さにも動じない
* 列状葉が爽やかな洋風の雰囲気に
* ケムシや病気発生の心配が少ない
* 成長がとにかく早い(予め大きな庭木であるという認識が必要)
* 剪定をしても小さく維持出来ない
* 寒さに弱く葉を落とす(確かにそうです。実は半常緑という分類なのだそうです)
* 細い枝はやわらかく、強風などですぐに曲がってしまう
建物や塀の脇、狭い場所などへ植栽した場合は極めて成長速度が増す傾向があり、幹も光を求めて曲がって育ちます。また、浅い根の成長が顕著な木なので、近くに埋設配管があると干渉し損傷をもたらす危険性があります。
造園計画と外部設備配管の調整が大切になります。外部設備配管は工事の序盤段階、造園工事は工事の最終段階もしくは入居後に行われることも多いので、よほど設計者・現場管理者が調整を図っておかないとうまくいきません。
請負工事に造園が入っておらず、計画すらされていない場合がほとんどであり、戸建住宅で「植物」と共に暮らす住まいが増えていかない大きな要因でもあります。あまりどなたもこの分野に関わらないのです。それ故に、これがしっかり実践できれば大きな「価値」になるのです。
社長の会社では「日除け=落葉樹」と考えていませんか?意外に常緑樹にも日除けの役割分担は可能です。そもそも木を植える提案をされていないと、意識外のことかもしれませんが。。。
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