同族ならではの事業承継の落とし穴
同族会社の場合、後継社長が会社に入社した時点で、お父さん世代の親戚が社内に存在するものです。入社したての頃は、お父さん世代の方々に仕事を教えてもらったり、お世話になったりと、非常に頼りになる存在でもあります。
ところが、月日を経て、後継社長が「社長」というポジションになると、今度は、中高年社員の「二極化」に気付かされることがあります。
50代、60代になっても、積極的に業務に関わって、バリバリと仕事をこなし、後進の育成も熱心に取り組んでくれる頼もしい人材もいれば、逆に、「定年まで仕事を粛々とこなそう」「新しい取り組みや面倒ごとは、反対して現状維持」という困った人材も出てきます。
後継社長が社長に就任して、一番アタマがイタイのが「働かないオジサン」「働かないオバサン」をどうするか…という問題なのですが、親戚だったりすると、非常に厄介です。
もし、会社にちょっと困った、あるいは、将来的に困ることになりそうなご親戚がいるのであれば、悪いことはいいません。
可能な限り先代社長が経営の一線を退くタイミングで、一緒に退いていただけるよう、しっかりと根回しをしておいてください。
もし、それが難しいようであれば、先代社長から、同族社員間の役割分担をよくよく言って聞かせておく必要があります。なぜなら、役割分担があいまいだと、各々が声高に主義主張を展開するようになります。
そうなれば、「船頭多くして船山に上る」です。
例えば、経営の原理原則を全く知らない同族社員が、家族・親族というだけで、経営に口出しをしてしまっては、どうなることでしょうか…。家計簿の感覚で、社長に経営のアドバイスを始めたら、会社の未来は、どうなるでしょうか‥。
想像するだけで、恐ろしいことです。そうならないよう、同族会社ほど、次のような方針を先代社長が同族関係者に伝えて、よく理解させることが大事です。
「社長は長男の〇〇だから、全ての最終的な決定権は、長男の〇〇にある。」
「どこまでいっても、社長は長男の〇〇だから、立場をわきまえるように。」
「次男は営業、三男は工場の責任者として職務を全うしなさい。」
「経理を預かる嫁は、社長の経営方針に口出しをしない。家計と経営は別モノ。」
「社長は経営者として、経営の全責任を追う立場にあることを理解しておくこと。」
「各々の役割分担が不服なら、会社を去って自分の道を切り拓きなさい。」
などなど、会社の状況によって事情は異なるはずですが、社長が、オーナーシップを発揮できる環境づくりをすることが最も重要なことです。
同族ならではの人間関係を軽く考えて、安易に同族社員を入社させたり、ズルズルと雇用し続けたりすると、後々苦しむのは「後継社長」です。
同族関係者であっても、万が一の時に、経営の責任をとるのは、たった一人「社長」、金融機関から借入の連帯保証人を求められるのも、たった一人「社長」です。
同族関係者は、一族の人間であっても、経営の最終責任を負う立場にはありません。このことをよく理解した上で、「役割分担」を明確にし、各々の職責を全うすることが大事なのです。
この点があいまいな状態だと、権利ばかり主張する「働かないオジサン」「働かないオバサン」が生まれたり、社長の足を引っ張る同族社員が出てきてしまうのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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