パワハラも怠慢も発生しない、ちょうど良い目標の決め方とは?
「伊東さん、会社の目標数値って掲げた方が良いんでしょうか?」
これまで「今月は百数%必達だ!」とずっと掲げてきた社長がおっしゃいました。
「ふと思ったんですが目標数値を設定し、掲げること自体が本当に必要なのか?と」
他では目標数値の設定さえせずに「達成できるかどうか?は従業員の頑張り次第」とフタを開けるまで判らないほぼ運頼みのマネジメントをされているところがありますので、そういった企業とは別の地点での疑問をお持ちのようです。
会社が目標数値を設定することは簡単ではありません。
目標が高すぎると、各リーダーが熱くなりすぎてパワハラが横行してしまいますし、逆に低すぎると怠慢が発生し、不正やトラブルも発生しやすくなるからです。
私の返答は
「他社より稼いでいるチェーンは、目標値を掲げていない方が多いです」
その理由は会社がどのくらいがちょうど良い目標値なのか? それを探し、設定し、掲げ、マネジメントするという一連の行為を行うよりも良い方法があるからです。
そもそも各企業がなぜ目標数値を掲げようとするのか?
それは一法人として必要な経営計画だからという面もありますが、会社を経営者されている方にとっては「それよりも大事なことがあるから」ではないでしょうか?
それは「全従業員に前進してもらいたい」です。
このコラムをご覧の経営者様がもし、あるチェーン店の店長だったとしたら、こんなシーンにおいてどう感じるでしょうか?
「店長、私は来週のキャンペーンでは積極的に売り込みます」
「いらっしゃいませの声掛けと同時に『〇〇セール中です。ぜひご利用ください』とセットで何度も言います」
「売場はセットで買いたくなる商品がありますのでそれを隣に並べてみます」
「事前にPOPを創っておきましたのでこれを活用して、レジではご一緒にいかがでしょうか?と後ろにお待ちのお客様がいらっしゃらなければお勧めします」
ここまで聞きますと
「そこまでやってくれるなら素晴らしい」
「いいね、ぜひそれでお願いします」
と言いたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかしそう感心された方であったとしても、「いや、そう思ったけどやっぱりダメだな」と手のひらを返したくなる条件があるのです。
それは今までの仕事ぶりから前進が無かった場合です。
そのスタッフは
・数々のセールやキャンペーンの度にいつも今回のようなセールス行為を繰り返している
・実は前回のキャンペーンでも全く同じことをしていた
・Aさんにとっては声掛け、売場づくり、お勧め販売は特別でもなんでもない仕事。まるでルーティンワークのように淡々とこなすことも可能
さて、先ほど「素晴らしい」と捉えられた経営者は、それでもまだ「それでも素晴らしい」と同じく捉えることが出来るでしょうか?
組織のリーダーは、その人が優れているかどうか?そして結果を出してくれるのかどうか?よりも前進してくれているかどうか?を欲する方が多いです。
そして困るのは従業員が前進しようとせず「足踏み」をされること。足踏みばかりされていては、ライバルとの競争に勝てていけませんし、「じゃあ私も前回と一緒でいきま~す」など他の人にも伝播するかもしれないからです。
そこで数値目標を掲げては「必達だ!」と繰り返していたある経営者はこう考えました。
「毎度毎度目標額を設定する必要があるのだろうか?」
「私は誰もが足踏みせずに前進してくれたら良い」
「誰もが前進してくれるのであれば、きっと数値結果もついてくるはず」
「だからちょうど良い会社の数値目標をわざわざ探して、設定し、掲げ、マネジメントする必要はないのではないか?」
その結果「社員、スタッフみなそれぞれが自分が精いっぱい努力してやっと届く目標を自ら設定し、会社に逆に掲げたくなる仕組み」を構築しました。
経営陣はわざわざ「105%が良いかな?」「部長、ちょっと試算しておいて」「やっぱ違うな~、この店はどうしてこんな数字になるんだ?」「それだとヤル気だしてくれないでしょ?」「こっちの店舗にその数字まわしなさい」「計算し直して」などちょうど良い数値をあぁでもない、こうでもないと探す必要は一切ありません。
また、一部の社員達には「目標が高すぎる」と早々にあきらめられるかも? とか
一部のスタッフには「楽勝すぎる。今回は楽をしよう」などと捉えられたら・・・?
など不安を抱く必要もありません。
なぜなら
人が一番良い結果を出せて、前進もできる目標値は一体どこなのか?
誰よりも一番詳しいのはその人本人だからです。
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