「勝手に売れる」と「勝手に人が動く」 どちらに力を入れてますか?
「伊東さん、更にもう1店見てもらいたいと複数店の店長に任命するタイミングに、ポイントはありますか?」
ある社長からの質問でした。
多店舗事業において、誰もが本気を出し続ける組織を確立でき、大きな収益を上げられている企業は前例がそれほどありません。経営者に迫ってくる嬉しくも、悩ましい課題は他社を参考にすることはできず、全て自力で解決していく事になります。
「この人、かなり結果を出してるからなぁ。どうしよう」と人一倍稼ぐ人達に、より稼いでもらえるには?
タイミングを早まると負担が多くなってしまい数字を落とされるかもしれませんし、本人も潰れかねません。しかし遅くなると手持無沙汰となって余計な労力が流出し続け、本人も充実感を得られなくなってしまいます。
そんな他社とは違う地点で試行錯誤を繰り返す社長が最近興味をお持ちになったのは、今年刷新される無線規格です。ワイヤレスイヤホンなどに使う無線規格が10年ぶりに刷新されるとのこと。今までイヤホンは個人が楽しむものでしたが、多人数で利用されるような柔軟性がもたらされるようで、新たな市場が期待されます。
「いいですよね~ アイフォンみたいに独占市場を創りたいものですね」
社員、スタッフのエネルギーを上手に会社の稼げるエネルギーに変換し続けられている企業の社長は視点が違います。彼らは常に「どうしたら勝手に人が楽しんで動き、稼ぎ続けてくれるのか?」これ一筋です。
普通、新しい市場が生まれた場合「自らも1プレイヤーとしてどう稼ごうか?」と考えるところ、彼らは「プラットフォーマーとしてどう稼ごうか?」と考えます。
そんな視点で大きな利益を得られてきた企業は、過去の歴史を振り返ればいくつもの例があります。
例えば今から約170年前の1848年カリフォルニアでのゴールドラッシュでは「自分も金が欲しいぞ」と探鉱者が国をまたいでまでも続々とやってきましたが、莫大な利益を得られたのは一部の探鉱者もそうですが下宿屋、飯屋、仕立屋、洗濯屋、売春宿、酒場、賭博場などです。一部のプレイヤーはもちろんプラットフォーマーの活躍も著しかったのです。
そんなに昔ではない40年前を振り返ってみますと、代表的なのはファミリーコンピューターがあります。それまで任天堂は1プレイヤーとして様々なゲームウォッチを発売し、80年度の239億円の売上を翌年度には661億円と伸ばしていたのに、今度はプラットフォーマーの視点で「みなさん、このハードウェアを使って素晴らしいソフトを開発しあってくださいな」とソフトウェア開発企業が何社も参入できる市場を創り出し、各社は「他社に負けない名作を創るんだ!」と本気を出し続けたくなる競争の場を生み出すことができ、ロイヤリティーを得ていました。
その戦略はうまくできていてドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーなど約40年後の今でも後続ナンバーが販売されている名作と呼ばれるソフトがいくつも生まれたほどです。
その結果、任天堂はスーパーマリオの大ヒットも含まれますが、86年度の売上高は1230億円にまで拡大させています。6年で売上を5倍以上にしたのです。
そして最近のプラットフォーマーで稼ぐ例はアップルのアイフォン、グーグルのアンドロイド、アマゾンや楽天など。どの企業も新たな市場でのプラットフォーマーとなり、「誰もが本気を出し続けたくなる場」を生み出しています。
多店舗ビジネスにおいて収益を上げ続けられている企業はそんなプラットフォームを創ろうという視点をもっています。彼らが見つめているのは常に社員やスタッフです。社員やスタッフとは別の位置にいて「どうしたら働く誰もが本気を出し続けられる場がつくれるのか?」にエネルギーを注ぎます。
一方、いつまでも他社と一緒の収益体制から抜け出せない企業は1プレイヤーの視点です。彼らが見つめているのはお客様です。社員やスタッフと一緒にいて「どうしたらお客様が買いたくてしょうがなくなる場がつくれるのか?」にエネルギーを注ぎます。
見つめている先が誰なのか?
どこに力を入れるべきか?
これによって行動も変わり、結果も変わってきます。
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