成功と失敗を総括する
事の大小に関わらず、物事に取り組んだ結果には、それが成功なのか失敗なのか、評価が常について回ります。予め成功の基準を決めておけた場合には、関連する情報が手に入る限りにおいて、「それが成功か失敗か」を判断することは実はそれほど難しいことではありません。事実関係を整理したなら、あとは基準に照らし合わせて判断すれば良いからです。
しかしながら、物事と言うのはそのスケールが大きくなればなるほど「予め成功の基準を決めておく」ことが難しくなります。時間軸を長くとることで、あるいは判断の前提を見直すことで、失敗を成功に読み替えることができたという事例は枚挙に暇がありません。
よく言われる例ですが、ポストイットの開発は明らかな失敗がベースになっているそうです。くっついてもすぐに剝がれてしまう接着剤は、技術開発案件としてだけ見ると確かに失敗に見えますが、「貼って剝がせるニーズ」に気づいたところから世紀の大発明へと化けるプロセスは、「それが成功なのか失敗なのか」について経営的に総括することを考える上で大変示唆的なものです。
そう言うと、「だったら上手く行かない事例については、しばらく判断を留保したうえで状況を見て、最終的に判断するのが良いということですね。」と早合点されてしまいそうですが、実はその逆で、個別の成否はむしろ頻繁に判断したほうが良い、ということを申し上げたいと思います。
判断を留保した状態が長く続いてしまうと、組織内にはさまざまな不具合が発生します。すでに結果は出ているのに、成否が正式に決まらないと担当者は次のアクションを考えづらくなりますし、送れて出て来る判断に対して、組織はイマサラ感を禁じ得ないといった反応しかできなくなるというマイナスの効果さえ生み出してしまうからです。このように時間のロスだけでなく、気運のロスも生じさせてしまうため、いたずらに判断を先送りすべきではありません。
ではどうすれば良いのか、ということですが、判断は遅滞なく行われることが重要なのは論を待ちません。ポイントはその結論をいつでも貼りかえられるようにしておく柔軟性を担保できるか、という点につきます。
人事的にもリターンマッチを明示的に認める組織であれたなら、「一度の失敗で人生を棒に振る」といった悲哀は激減するはずです。
成功の判断は誰にでもしやすいものですが、失敗の判断を下すとき、経営者が心掛けるべきことは「その失敗をどう生かせるか」と言う方向性の明示であり、失敗を成功に塗り替える挑戦への機会提供であるべきなのです。
経営者としての判断と、失敗をも最大限に活用しようとする経営者を、当社は常に全力で応援しています。
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