社長!会社の安全保障を考えていますか?
先日のことですが、ある大手IT企業が販売しているロボット掃除機やタイマー、エアコンが制御できなくなる、という事象が発生しました。原因はこれらの機器のメーカーが提供しているサーバーでのサービスが停止した為なのですが、イマドキのネット家電は「ネットに接続できないと動作しない」というものが増えていることを如実に物語っています。要するに製品それだけでは100%の機能を発揮することはできず、ネットに繋がることで様々な機能を提供できるようになっているが故に、「サーバー側が停止すると製品も止まる」ということが発生したわけです。
今回の件は家電製品で起こったことですので、企業経営者から見ると対岸の火事といった認識になるかもしれません。それに今回は幸い単なるサーバートラブルでしたので、それほど間も無く復旧することができ社会的なダメージはほとんどありませんでした。しかし、これがたとえば以下の様なストーリーで企業で発生したら、どうなるのでしょうか?
ある日、製品の出荷に使っていた搬送機が前触れ無く止まった。数時間で復旧すると思ったが、今日の出荷をしなければならないので、とりあえず社員総出で出荷作業をすることにした。ところが夕方のテレビニュースを見て愕然とした。どうやら搬送機のコントローラーを作って販売しているメーカーの本社が、何かの容疑でその国の公安の立ち入り調査を受けらしく、サービスを即時停止したらしい・・・と。この搬送機の代理店に慌てて電話をかけてみたが、担当者も電話対応にかかりっきりで、ようやく繋がったのに「当社も情報を収集中でどうしようもありません。えっ?復旧する目処ですか?申し訳無いのですが今のところ何も言えません…。」
このままいつまで毎日社員で出荷作業をしなければならないのだろうか?他の仕事を全部止めて対応しているのに…。
このお話は完全なフィクションです。しかし、ネット家電の様にネットに繋がることで初めて機能を果たす企業用の機械類は、モノ作り系の設備ですでに増えつつあります。更に設備ではなくともソフトウェアのサブスクサービスであれば、既に海外のサービスに依存しきった業務になっている会社も多いですね。今のところトラブル以外の理由で停止したサービスにより大きな被害を受けた、という話は聞いていませんが、もしこれが「国家間のトラブルによる意図的な行為」で停止したらそれこそ復旧の目処は全く立たなくなります。
エネルギーや食料などについては「安全保障」という単語が使われて久しいですが、「情報やネットの安全保障」はサイバー攻撃の話題以外では聞きません。工場にも倉庫にも現場にはIoTの機能をもった機械類が少しずつ浸透しています。とても便利に使えますし、その会社のDX推進の中核になっているものあるでしょう。それが「国家の安全保障」という次元でのサービス停止になった時、その会社はどうするのでしょうか?
平和ぼけ、というあまり使いたく無いキーワードもありますが、企業においてネット機器・IoT機器を使うことは、大抵の場合「平和であること」を大前提にしていますし、それについて議論することも少なかったと思います。「会社の安全保障」・・・考えなければならない時代に入ってきたとは思いませんか?
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