会社の人格の磨き方
皆さんは「ビッグファイブ」をご存じでしょうか。ビッグファイブとは、パーソナリティ(人格)を5つの特性で分類する理論体系です。1.外向性(外向的か内向的か)、2.神経症傾向(楽観的か悲観的か)、3.協調性(共感的か自己中か)、4.誠実性(真面目かいい加減か)5.経験への開放性(好奇心旺盛か保守的か)の5因子があり、これらのバランスで私たちの人格は成り立っているそうです。
この理論の面白いところは、性格的な特徴を表す「言葉」に着目して分類が行われたことです。「言葉に性格の特性が反映されている」と気づいたのはジェレミー・ベンサムで、その後、さまざまな学者たちが「辞書」から性格を表す形容詞などを集め、統計学の因子分析を使い、数十年の時を経て徐々に特性が絞られていきました。結果、現在では冒頭の5つの特性に集約されたというわけです。
この「ビッグファイブ」については、世界的にも信頼性は高く、有力なモデルだとされています。実際、データ分析企業であるケンブリッジ・アナリティカは、Facebookの「いいね!」について当理論をベースに分析し、個人ごとに最適な心理操作をすることで、アメリカのトランプ前大統領の当選やEUからのイギリス脱退にも影響を与えたと見られています。
さて、ビッグファイブは個人のパーソナリティ特性を表していますが、この考え方は「会社」にも当てはまると私は思っています。人格に対して、社格(というとちょっと意味が違う?)とか社風、会社の体質、会社の雰囲気、社内文化などで表されるでしょうか。
基本的に会社には複数の人が集まり、目的に合わせて組織化されています。この点、一つの人格にはなり得ないと思われがちですが、それでも共通の性格ともいうべき「感じ」や「印象」を持ったことはないでしょうか。
「この“会社”はいつも明るいな」「この“会社”は全く譲歩してくれないな」「この“会社”は支払いが遅れがちだな」「この“会社”は常に新規事業に挑戦しているな」など。あたかも個人に対して思うような印象を、私自身は会社に対して持つことが少なくありません。
そして会社の人格を決めるのは「経営者」以外の何物でもありません。無論、世界的大企業と個人事業ではその影響度は違いますが、それでも経営者が会社に与える影響は大きいと考えた方がいいでしょう。社員はしっかりと経営者を見て意識、無意識的に真似をし、価値観をインプットしています。
つまり、経営者の人格が会社の人格になると言っても過言ではないのです。とはいえ、経営者が完璧な人格になるのはまず無理でしょう。というか、そもそも完璧な人格などありません。
翻って、会社は複数の人が協力し合い、共通の目標を達成するためにつくられています。どんなビジョンを目指し、どんなミッションのもと、どんな価値観で経営を行っていくのか。これらの「理念」は会社の目指す「人格」が言語化されたものでもあります。
経営者の人格は会社全体に影響を与えます。しかし、理念が言語化され、経営者も社員も理念に基づいて考え、行動をすれば、一人の不安定な人格に左右されることがなくなります。会社の人格も理想の姿に近づいていくでしょう。
経営者の皆さん。あなたはどんな性格で、それが会社にどう影響を与えているのか見えていますか。会社の人格を磨くためにも、理念を言語化し、浸透させる努力を怠らないようにしましょう。
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