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FAXによる受発注処理の呪縛から逃れるただ一つの方法

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

皆さんもご覧になったかもしれませんが、最近ある経済誌に「中小企業のFAXや紙による受発注業務をEDI(電子取引)化すれば総労働時間を6%短縮できる可能性がある」旨の報道がありました。当社の経験では、会社の規模や業種・業態にもよりますが、システム導入によって事務仕事全体の5~10%程度は合理化できると掴んでいましたが、それを裏付ける数字が出てきたことになります。ただ、記事では「EDI化により合理化が達成できるがそれが進んでいない」という論調となっていたことには、少し違和感があります。

全ての業種において日本全国くまなく共通なEDI化ができれば確かに便利ですし一気にデジタル化が進むはずです。大きな合理化もできるでしょう。しかし、それは現実的なことなのでしょうか?

2000年を迎えた前後で、大手企業のEDI化が加速し、それにともなって中小の取引先も「そのEDI仕様」に合わせる様に圧力を加えられました。しかし、業種によって注文書の内容は千差万別です。明細行に別れる注文もあるでしょうし、企業独自の商品コードが使われることもあるでしょう。JANコードが利用されるケースもあると思います。単位も個だけではなく「100個入り1袋」とか長さや重さなども存在します。それらが混在しているケースもあります。

これらを汎用のEDIで実現できれば良いのですが、かなり複雑なので相当高いハードルになりますし、仕事のやり方への影響も考えられます。これらを全て標準化し、EDI機能も標準化する、ということになると2000年以前から取り組んできてもう20年以上も経過していることを鑑みれば、もっと時間がかかることは自明の理です。

それを待たずして合理化の果実を得るただ一つの方法は・・・「簡易的でもファイルのやりとりによって処理をデジタル化する」ことに尽きます。少なくとも大手企業であれば、EDI化以前に注文情報を何らかのファイルにできるはずです。それを現在印刷してFAXしてきているかもしれませんが、それをメールでもクラウドストレージでもなんでも良いので電子ファイルとしてもらう様にお願いすれば、ほとんどの場合は受け入れてもらえるはずです。彼らもわざわざ印刷するなどの手間を省きたいはずですから…。また、取引先が中小企業の場合でも最近は社内でExcelぐらいは使っているはずですので、それをファイルでやりとりできるように依頼することもできます。

ただ、ここまで読んで頂いて、「いやいや、ファイルでもらっても、それをコピペしたり印刷したりすることになるので、手間はほとんど変わらないよ」とお考えになることでしょう。私が言いたいのはここからです。

各社からファイルで届いた受注情報を自動変換して自社フォーマットの受注に自動変換することを考えましょう」です。理想的には取引先各社と同じフォーマットでデータをやりとりできれば良いわけですが、EDI化がうまく進まない理由はここにあるので、これでは堂々巡りです。そうではなく、各社のフォーマットを使っても良いので、それを個別に認識して自社向けのデータに変換できるように仕組みを構築すれば良いのです。

このように発想を転換すれば、中小企業単独での受発注デジタル化がぐっと近くなりますし、RPA等手当たり次第に安い仕組みを使えば規模もそれほど大きくならないので現実的です。ただ、、、その後の処理がデジタル化できていないと意味がありませんが…。

EDI化だけに限らず、報道されていること、大企業で常識になっていること、は中小企業にとって高すぎるハードルになってしまうことは多々あります。諦めてしまう前に発想を転換することで簡易的にデジタル化を果たす・・・これが中小企業の経営者にとって必須のDX推進思考パターンなのです。

 

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