不正を大目に見てきてしまった企業にこそ強みがある
5月18日の日経新聞に気になる記事がありました。
【 ロシアで万引き2割増 侵攻長期化、国民生活に負担 】
経済制裁などによる物価高基調が続き、価格が上昇する医薬品を急ぎ買い求める動きや万引きも増加している
「それみたことか!」と気になってご覧になった方はいらっしゃると思いますが、私の場合はある企業を連想したからです。
その企業のY社長は「伊東さん、今度は新しい飲食事業を考えたんです、こんなのはどうでしょう?」と、もっと会社の業績を押し上げるには?と常に他社にはない次の構想に暮れている前のめりな方です。
なぜそんな前向きな企業を万引きで連想したのか?
それは社長と初めてお会いした際「どこから手を付けたらいいのか・・・」と社内の不正が尾を引いていて、今後の前進に苦悩されていたからです。
Y社の例はめずらしくありません。マネジメント面においては
「不正をした人に厳しくしたら、再起できず潰れてしまうかもしれない」
「逆に優しくしたら、当人以外の人達に反感を抱かれるかもしれない」
さてどうしたものか?と、次の一歩を踏み出せずに踏みとどまっている企業はけっこう存在します。また企業が人手不足の状態にありますと更に深い五里霧中状態へと加速させてしまいます。
会社側は「今人が減ってしまうのはかなわない」と、普通はクビにすべき案件でも「今回は特別に許すけど、次は無いからね」など譲歩を選択したくなるもの。
しかしその結果
「どうしてあんな悪事をしでかしたアイツがのうのうと仕事していられるの?」
と他の従業員の仕事に対する姿勢が低下してしまうのは避けられません。
譲歩を多用していますとやがて不正の頻度が増していき、問題発生は日常茶飯事となっていきます。
過去に、日々課題解決に勤しむ社長から「あれ?急にやることなくなったぞ?と感じてしまう時って、たまにありますよね~」と賛同を求められたことがありました。
稼ぐ組織のリーダーはいかに有効な次なる一手を打てるか?と考えて常に未来を見てますが日々、課題解決ばかりがメインとなっている組織は業績は伸ばせていけません。
ただ、譲歩を選択したリーダー達は明るい未来を考えていないわけでもありません。
「彼らはきっと『会社がこんなに優しくしてくれるなら期待に応えないと』と心機一転し、仕事に励んでくれるんじゃないか?」
という期待を抱いています。
ただ現実は厳しいもので、改心するどころかその優しさに付け込んで
「どうせ強く言われることはないんだから平気だろ」
などと手を抜かれ、甘え続けられるケースが大半なのです。
Y社もかつては譲歩を選択し続ける企業と似たような境遇だったようで
「伊東さん、当社は●●を続けてきたからか、何をするにしても■■な状態なんです」
「それでも結果を出していけるでしょうか?」
私は「社長、すごくいい状態じゃないですか」
嫌味を言ったわけではありません。本心です。
なぜならそんな企業には他社にない強みがすでに備わっているからです
その強みとは
会社と従業員の関係に「貸し借りがある」とお互いに認識しあっている ところです。
これから会社が改革を進めていくという過程において
会社側は 「君には貸しがあったよね?」
従業員側には 「会社には借りがある・・・」
という関係のまま突入できるからです。
通常、組織が改革を進めようとすると残念なことに
「会社がおかしな発言をしようものなら、すぐ世間に晒してやるからな!」
などあらぬ方向に貴重な労働力を注ぐ人が現れることがあります。
しかし貸し借り状態の企業は、その関係自体が逆転するほどです。
「休憩は時間通り取ってるよね?」
「もういいからそんなに働くな!、明日にしなさい」
など頑張り過ぎに目を光らせていなければなりません。
一方、不正を大目に見てもらってきた当人達の周りで働いていた人達はどうなるのか?といいますと彼らもまた「一刻も早く改革したい」と本気を出します。
普通であれば彼らは会社側に借りもなく、不正を働いてきた人達に振り回されてさんざん苦労させられてきた方々なのですが、彼らには人並み以上の我慢強さが備わっています。
「なんでアイツに甘くするんだ? こんな会社おかしいんじゃないか? なぁみんな」といった声が挙がってもそれに振り回されず、自分の意見を貫き通せる人達です。
「いつかこの会社は良くなる、自分が良くしていきたい」と、会社が正しい方向に進む日が来ることをずっと信じて、自らの人生という貴重な時間を賭けてまで残ってくれた一蓮托生の戦友です。
今春、私はかつてさんざん会社の仲間からつまはじきにされてこられて、その後大成功している、ある方と長く話せる機会があったのでこう聞いてみました。
「なぜあなたはそれでも頑張ってこれたんですか?」
「過去には、生きるのをやめようと考えたこともありましたよ」
「でも結局、自分は人が好きだったからでしょうね」
「急場しのぎとはいえ、当社は譲歩に次ぐ譲歩を重ねてきてしまった」
とお考えの社長にお伝えしたいのは全く嘆く必要が無いという事。
「こんな状態では再起できないんじゃないか?」などと考える前に
「そんな我社にこそ武器があるんじゃないか?」と捉えるべきです。
なぜなら他社に比べて圧倒的に成長していく企業は
「今当社にある武器や強みでなんとかできないか?」
と工夫に工夫を重ねてきた企業ばかりだからです。
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