社長は現場に直接口を出してはいけない、を信じて大崩壊したK社。その根本原因とは?
特殊設備メーカーK社長から、この日は、対面でのコンサルティングの申し出がありました。席に座ったK社長に、いつもの明るさはありません。
「先生、当社は崩壊をしました。」
この時までのK社の月商は、4千万円ほどありました。それが、直近3か月では、半分の2千万円ほどになっています。
事業の特性からすると、そんなに大崩れするはずはありません。状況を確認すると、原因はすぐに解りました。
先輩経営者からの「社長がいつまでも現場に口を出すから管理者が育たないんだ」という言葉を、真に受けてしまったのです。
飛び越し指示はダメ。
これは、組織としての原則です。
社長が、部長や課長という管理者を飛び越し、作業層である社員に、直接指示を出せば、組織の指示命令系統を破壊することになります。
その行為は、「管理者の存在意義を否定したこと」になります。
その結果、管理者がやる気を失ったり、責任感を無くしたりすることになります。また、自分で考えることをしなくなります。
そして、作業層である社員は、その管理者ではなく、社長を「自分の上司」として認識するようになるのです。
社長が現場に直接口を出すことで、管理者が機能しないや、管理者が育たないという弊害を生むのです。
社長には、現場では、自制が必要になります。社員の態度や案件のことで気になることがあっても、直接言ってはいけません。面倒でも、管理者に伝え、管理者から言わせるようにします。
または、その管理者と社員を呼び、一緒に指示を与えることをします。
これが原則です。
社長は、「現場には直接口を出さない」のが、理想ではあるのです。
しかし、ここには、前提があります。
それは、「当たり前に組織が回っている」ということです。
「当たり前に組織が回っている」とは、「組織の四階層が機能している」という状態を指します。四階層とは、経営層―管理者層―判断層―作業層です。そして、それが機能しているとは、其々の層が、やるべきことをやっているということです。
この中の管理者層が機能するためには、管理者を動かす仕組みが必要になります。また、判断層が現場のリーダーとして機能している必要があります。
これは、最近のコラムでもお伝えした通りです。「案件が管理できる状態にあること」、「一つひとつの業務の基準が明確である」、そして、「管理者業務がルーチンワーク化されていること」、この状態にあることで、初めて、管理者層や判断層が機能することができるのです。
この状態にあることが、前提となります。
だからこそ、「社長は、現場を離れること」ができるのです。だからこそ、「社長は、現場には直接口を出さない」が適用できるのです。
K社は、まだ、その段階にありませんでした。この時には、コンサルティング開始から3か月であり、飛躍できる事業モデルが見つかったばかりです。仕組みづくりも組織づくりも、全く手を付けていない状態です。
すべてが属人的な業務の回し方であり、社長以下横一線という超文鎮型組織なのです。
管理者を動かす仕組みは、全くできていません。そして、管理者に、管理者業務を全くさせていません。(させられない。)
営業も製作も、すべて社長が管理し、その都度指示を出してきたのです。
これからそれを作っていくというタイミングでの、業績の悪化です。それが、冒頭になります。
数か月前に、K社長は、同業の先輩経営者と飲みにいきました。その方の会社は、年商40億円であり、社員は100名を越えています。
その社長から言われました。「K君、君がいつまでも現場を仕切っているから、管理者が育たないんだ。経営者が口を出さなくなれば、管理者は育つものだ。」
このアドバイスを、K社長は、取り入れることにしたのです。
その結果としての、大崩壊です。
営業部は、お客様への見積もりの提出が遅くなりました。いままで、3日以内で出していたものが、1週間になりました。その見積りの精度も悪く、粗利率は低くなっています。
そして、見積提出後のフォローをしっかりやっていません。「どうでしたか?」の電話をしていないのです。
受注後の材料の手配も遅くなっています。今日すべき業務を、明日、明後日に回すようになっていたのです。材料の入荷が遅れる分、製作も遅れることになります。
工場のスペースは余裕が出始めています。そして、組立ラインもゆっくり仕事をやっているようです。(残業は減らない)
この状態を、K社長は、しっかり把握もしていませんでした。なんせ「管理者を育てる」ためですから。心配に思うこともありましたが、様子見を決めたのでした。
これは、完全なる間違いなのです。
管理者を動かす仕組みの無いK社が、「社長が現場に口を出さなくなれば」崩壊するしかないのです。管理が無くなれば、社員は緩くなって当たり前なのです。
「社長は、現場に口を出してはいけない。」
同業の先輩経営者のアドバイスは、間違いでは無いのです。また、悪気があったわけでもありません。その先輩の会社にはすでに「前提」があり、K社長の会社には、全く「前提」が無かっただけなのです。
その後、K社長は、現場に戻ることにしました。すると、2か月後には業績を回復することができました。お客様からは、お叱りを受けることにはなりましたが、取引停止は、避けることができました。
今、仕組みづくりを進めています。あと半年ほどで、K社長も現場を離れる「前提」を得ることになります。
本質を理解することです。
どんな良いアドバイスでも、受け取る側が本質を解っていなければ、それが害にもなるということです。
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