考えられる社員が全くいない会社が、まずはやるべきこととは!?建設業S社の事例
この日は、ホテルのロビーでの面談です。
地域で一番のホテルのはずですが、その雰囲気からも過疎化が進む都市であることが解ります。
建設業S社長は、大学から東京に出て、出版業界で働きました。
そして、20代後半で父の会社を継ぐために戻り、今40歳です。
ちょうど5年前、社長に就任したタイミングで矢田の本を読み、「自社には管理者が全くいないこと」に気づきました。それから、手を付けました。その一つの施策が、「改善提案制度」です。
私は、お尋ねしました。
「それで、5年経った今、管理者は育ちましたか?」
S社長は、答えます。
「いいえ。全くです。」
改善提案を社員に出させる、これは、非常に良い施策です。
これにより、「社員に問題意識を持たせること」ができます。
「出す必要がある」という前提が、「問題を見つけなければ」という強制力になるのです。
他にも効力はあります。
「メモをとる習慣」が付きます。アイディアや思いついた問題などを、瞬時に残す癖がつくのです。
そして、「論理的に仮説を立てる思考」が養われます。
また、「ビジネス文章の基本」も身に付けることができます。
これらの効用(目的)から考えると、改善提案制度の対象者は、入社1~3年生となることが解ります。一業種の通常業務を身に付ける期間、すなわち、訓練の期間から「仕組み」に対しての意識を持たせることができます。
早い段階から、仕組みについて意識させることで、その後に「本格的に仕組みづくりに参画させること」が可能になります。
その後には、いよいよ具体的なテーマを与え、チームの中心になって、その改善を進めてもらいます。そのテーマは、「仕組みの改善目標」として経営計画書に載っています。
改善提案が「思い付き」なのに対し、改善目標は「計画的」になります。
実際には、改善提案は無くても、会社の業績には大きな影響はありません。
後者の改善目標は、その部や課にとって、すなわち、会社にとって必達になるのです。
それに取り組ませることで、管理者に育てていくことになります。
「通常業務としての仕組みづくり」という管理者として当たり前の状態にできるのです。そして、それをクリアすると、より大きなテーマを与えます。それにより、より会社の未来に貢献する管理者に育てていくのです。
その入り口としての改善提案制度です。非常に良い取組みと言えます。
ここから、世の年商数億企業が持つ、大きな問題が見えてきます。
それは、次の言葉に集約できます。
「仕組みに関する仕事を与えていない」
入社すると、一つの業務を覚えてもらいます。
そして、覚えたら、そのままずーとその業務をこなしてもらいます。
営業したり、製作したり、事務作業したりです。
その状態を何年も繰り返します。それにより立派な作業員を育て上げます。
そこには、「常に新しい業務(次の階層の仕事)をやらせる意識」がないのです。また、その与えることを仕組みとしてコントロールできていないのです。
その結果、社員に毎年毎年、同じことをやらせることになっています。
それで、「人が育たない」という「当然」の結果を手に入れているのです。
冒頭のS社は、まだマシです。訓練期間中から改善提案をさせることをしているのです。しかし、残念ながら、その後が全く出来ていませんでした。「仕組みの改善目標」までは与えられていなかったのです。
S社長は、この説明を聞いて、感想を言われました。
「だから、当社には、管理者が居なくて当然なのですね。」
そして、長年、感じていた疑問を矢田にぶつけます。
「先生、なぜ、彼らは考えないのでしょうか?」
S社長は、東京の良い大学を出て、東京で働いた経験を持ちます。それも、名のある大手出版会社です。いままでのS社長の周囲には、考えることに適性がある人ばかりだったのです。その時の「前提」が残ってしまっているのです。
私が答え終わる前に、次の質問が来ます。
「先生、仕組化が進めば、考えられる社員が出てくるでしょうか?」
勉強熱心なS社長です。私の本のその一節をしっかり覚えていました。
仕組化(見える化と標準化)が進むと、社員が仕組化に参画できるようになる。その結果、社員の中から考えることに適性がある社員が浮き出てくる。
私は、正直に答えることにしました。
「御社がそう成るかは、解りません。」
過去に数件、そう成らないケースもあったのです。
それらの会社では、「作業系」を中心とした事業をやっていました。また、社歴が長いのです。その長い期間に、その「社風」がどっぷりしみついています。そんな会社には、考えられる人は寄ってこないし、居続けることもないのです。
S社の事業も状況も、その数件に近いものがありました。
私は、先の質問に答えることにしました。
「考えられる人は、呼吸をするように考えます。それが自然なのです。同様に、考えられない人にとっても、それが自然なのです。だから、彼らには、考えるという訓練が必要になるのです。」
この時のS社長は、完全には腹落ちしていないようでした。
これから、S社の仕組みづくりが始まります。
考えられる社員がいれば、必ず出てくることになります。
いなければ、採用していくしかありません。そんな人材を採用するためにも、仕組みという基盤が必要になります。
仕組みづくりに社員を巻き込むためには、最低限の仕組みが必要になります。
最低限でも仕組みがあるから、それなりの人が採用でき、定着もするのです。
どんな会社も、仕組みをつくることがスタートになります。それ無しには、素晴らしい施策を打っても、その効力を発揮することは無いのです。
まとめ
- 管理者が育たない一番の原因は、作業漬けの毎日で「仕組みに関する仕事を与えていないこと」。
- 新人には改善提案。覚えた頃から仕組みづくりのテーマを与えること。
- 改善が出来るように、基盤となる仕組みをつくる。会社として、改善が管理できるように仕組みをつくる。
- それができれば、「考える人」の多い会社になる。必ずそうなる。
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