管理者に任命するとその社員が辞めてしまう。または、管理者になりたがらない。そんな会社がしている4つのこととは?
「先生、また社員が辞めると言ってきました。」
席に着くなり、H社長は、話し始めました。
その社員は、数か月前に管理者に上げたばかりの社員です。
H社では、ここ一年、このような退職が続いています。
早く後任の管理者を決めなければなりません。しかし、その依頼も断られてしまったとのこと。
「先生、なぜ今の若い人は管理者をやりたがらないのでしょうか?」
管理者が辞める、そして、管理者をやりたがらない。
この理由もその対策も明確です。
社員に対しての『支援』は必要です。
それを、「相手」を観て、適宜、社長はしなければなりません。
その「相手」とは、次の一言に尽きます。
『未熟者』です。
未熟者:技術・教養などが熟練していない者。一人前でない者。
新入社員は、総じて未熟者と言えるでしょう。
また、中堅社員や管理者にとっても、「未経験な業務」や「達成するのが困難な目標」の前では、未熟者となります。
人は、自分が未熟である時に、心が折れやすくなります。
それは、どうしようもない事なのです。
そして、その心には、『強度』があります。
心の強度の弱い者は、当然、折れやすくなります。だから心の支援が必要になります。強い人は、自分で動くことができます。しかし、それは本当に極わずかな人です。そして、そんな人でも、かまってあげなければ、やる気を失います。
必ず、支援が必要になります。
その支援の内容は、大きく二つになります。
一つは、『実務』です。具体的な行動を示すということです。未熟者は、具体的にどう動けばよいのか、自分の行動のプロセスを組み立てることができません。それを、一緒に明確にしていきます。
もう一つは、『心』です。「どうですか?」と進捗を確認します。「来週、打ち合わせしよう。」とアポを入れます。これが、心の支援になります。
この「自分のことをきちんと観てもらっている(一人ではないのだ)」という思いを相手が持っていることが大切なのです。
この実務と心の支援によって、その困難な業務をやり遂げてもらいます。
そして、また、次の困難な業務を依頼します。同じレベルの仕事で留まらせることがありません。
困難な業務を与え、支援し、クリアさせる、を繰り返していくと、その社員の心は強くなっていきます。ここまでくると、解らないことがあれば、相談してきます。また、自分の心を自分でケアしていきます。そして、自分の後輩にも、そのように接するようになるのです。
それが、人間であり、人間社会というものです。
我々は、子供に何かを教える時に、これを当然のこととしてやっています。
水泳を教える際には、バタ足や息継ぎの仕方を教えます。そして、泳ぐ横を歩きます。結果はどうあれ、よく頑張ったね、と声をかけます。
具体的なやり方も教えなければ、できるようになるはずがないのです。
その相手の気持ちの状態も、気にかけることもない、それでは潰れて当然なのです。
大人は、子供とは違う?
いえ、全く同じなのです。我々は、やり方がわからなければ、動けないしやる気も無くなる生き物なのです。そして、そのやる気も、そう長くは続かない生き物なのです。それが、「未経験であるほど」にです。
支援を必要としない人も世の中には、いるかもしれません。
しかし、そんな立派な人は、私たちの会社には、居ないのです。そして、そんな人は、世の中に殆どいないのです。
支援をやらない、支援ができない社長の下では、どんどん社員が潰れていくことになります。
その支援を社長自らが行っていきます。そうして、人を育てていきます。
その結果、使える社員が増えていくことになります。
そんな社長のやることを、社員は観ています。そして、感じています。その時の暖かな感情も覚えています。
そして、真似をしていきます。自分が後輩を持った時、自分が部下を持った時にも、そのようにするようになります。
特に、年商数億企業では、「管理者」というもののイメージがありません。そんな管理者のイメージを、意図して作っていく必要があります。その一番の方法が、「社長」がやって見せるということになるのです。
社員が管理者をやりたがらない理由は次の4つになります。
その1.管理者業務を支える仕組みがない。
管理者の仕事も、多くはルーチンです。ルーチンとは、やるタイミング、やることが決まっているということです。それが無ければ、管理者は機能できないのです。
基本的にこの一つが出来ていなければ、管理者が機能することがありません。
その2.管理者自身、管理者の役目を解っていない。
驚くことに、世の管理者100%に当てはまります。管理者自身に「管理者の役目は?」と訊いても、答えられないのです。そして、社長も解っていません。
それが文章で定義づけされている会社も、殆どありません。その結果、いままで通りの「作業」を続けることになります。
そして、次が重要です。
その3.先任の管理者が叱責や理不尽な扱いをされている。
それを、社員は観ています。会社(社長)は、冷酷であるとも感じているかもしれません。こちらはそうでなくとも、そう観えてしまっているのです。
これは、先の『支援』の無い状態だと言えます。具体的な行動指示もなく、声かけも無いのです。
そして、最後、4つ目です。
その4.時間が経っていない。
その会社に入り、管理者を受けようと思うまでには、時間がかかるものです。
まずは、「会社への信頼」が積み上がっていることが必要です。方針を示してもらえるのか、何かあった時にも支援してもらえるだろうか。
そして、「自分自身への信頼」も必要です。自分でも管理者が務められると思わせなければなりません。また、周囲も認めるぐらいの成果(貢献)をしていると自分が納得する必要があります。
そういう意味では、この4つ目は、先の1、2、3の結果とも言えます。
この4の傾向は、女性の多い業種(会社)ほど、強くなります。医療介護系、コールセンター、クリエイティヴ。
逆に、考えてみてください。
この4つが無い状態で、「管理者を喜んで受ける」という社員はどのような人なのでしょうか。それは、よほど優秀であり、前職で管理者として実績を残してきた人となります。または、出来もしない癖に自信満々な人となります。
多くの中小企業では、後者を管理者に付け、失敗してきた経験を持つはずです。
そして、この4つの構築に向かわないために、この失敗を何度も、そして、今も繰り返しているのです。
冒頭のH社長にも、上記を説明しました。
H社は、一年をかけて事業モデルを変えてきました。その甲斐もあり、業績は順調に伸びてきています。
しかし、仕組みづくりは、まだ途中です。それは、まだ完成していないのです。
案件を管理する仕組みもいまいちです。また、其々の業務に基準はなく、属人的に回している状態です。
私は、お伝えしました。
「半年後には、仕組みで回っている状態になっています。」
それを、聞いてもH社長の顔は晴れません。
「そうでしょうか。」
私は、答えます。
「ええ、確実にそうなっています。」
そして、付け加えます。
「その頃には、徐々に管理者も機能し始めていますよ。」
ここにも、確信があります。仕組みができると、管理者が現れるのです。正確に表現すると、いまの社員の中から現れるのです。
そして、一年後には、管理者が辞めない会社になっています。
管理者になってと依頼しても、断られない会社になっています。
まずは、管理者業務を支える仕組みをつくることです。
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