すごい店長と普通の店長
小売・飲食・サービス業をはじめとした「リアル店舗ビジネス」において、業績を左右するのは例外なく店長です。全く売れていなかった店舗が、店長が変わるだけで爆発的に売れるようになるのを何回も目撃しました。
店長以外、場所は当然として商品やスタッフ、店舗内装も周辺環境も何も変わらないのに、本当に「劇的に」変わります。逆もまた真なりで、劇的に売上が落ちる場合もありますが。
ともあれ、店舗ビジネスでは店長がすべて、といっても過言ではないくらい最重要なポストです。経営コンサルタントの一倉定氏が常々語っていた「世の中に、良い会社とか悪い会社なんてない。あるのは、良い社長か悪い社長だけである」という言葉は、そのまま店舗と店長に当てはまります。
本部もあきらめ、売れないのが当然だと思われていた店舗でも、奇跡的な復活を遂げる。見ていて本当に不思議な光景で、競合他社であったとしても、感動すら覚える時もありました。まだ経験が浅かった頃は、こんな店長がいればな…とか、どうやって育てるのかな…など複雑な気持ちで見ていました。
一方で、業績を劇的に改善させるようなスーパー店長は、実はほとんど存在しません。あらゆる店舗の店長のうち、1%にも満たないでしょう。よくある2・6・2の法則にしたがい、2割はイマイチ、6割は普通、2割は優秀(のうち0.数%がスーパー店長)のような感じでしょうか。
スーパー店長の存在は、実はいいことばかりではありません。多くの場合、その次の店長で業績は悪化し、元に戻る、あるいはさらに悪化する場合もあります。で、結局店舗は撤退…になることもあります。
スーパー店長が長くいてくれればいいのですが、とにかく希少な人材なので、本部がほっときません。旗艦店か、あるいは伸びしろが大きそうな店、はたまたデベロッパーから要請を受けた不振店に回されていきます。
行く先々で業績は伸びますが、異動後は先述の通りです。イメージ的には、いわゆるカンフル剤的な感じでしょうか。どの業界にもある、スーパー店長のジレンマです。
もしあなたの会社だった場合、どんな戦略で、どう配置しますか。
この問いに正解はありません。唯一言えるのは、「スーパー店長に依存しない」という当たり前の結論です。経営者がすべきは、イマイチな店長を減らすことと、普通の店長を増やすこと、そして普通の店長を少しだけレベルアップさせることです。
あらゆる企業に共通する使命は長期利益の追求です。そのためには、一部のデキる人材に頼らないことが重要なポイントです。限りある経営資源をどう配分するか。ここに経営者のセンスが表れます。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。