新入社員を受け入れる際に、多くの会社が間違えてしまっていることとは!?
4月1日、この日、東京はフレッシュマン集結の地になります。
満開の桜の木の下を歩いていると、スマホの通知があります。
T社長からメールが入っています。
「先生、ありがとうございます。今年は、ばっちり準備をして、新入社員を向かい入れることができます。」
T社は、ある業界向けのシステムを展開しています。
ここ数年の業績は順調で、新卒採用も積極的に行っています。
昨年、新卒採用者の中の一人が、入社数か月で辞めてしまったのです。
そして、なんと、教育担当に任命した先輩社員までもが辞めたいと言ってきたのです。
昨年の反省を活かし、今年はしっかり準備をしました。
分業を支えるためには、情報伝達が必要になります。
その情報伝達の方向は、3つ+1つです。
上から下:上の決定事項を下に伝えます。それにより、構想が現実のものに成っていきます。
横:部門同士、担当者間の相互のやりとりにより、すべての日常業務は回っていきます。
下から上:現場情報を上に伝えます。業績、顧客満足、仕組みの実際の状態から、方針の決定をします。
この3方向の情報伝達によって、分業が成り立ちます。これらの構築を、「分業」に取り掛かる段階で行う必要があります。そのタイミングは、通常、年商数億、社員十数名の時になります。
この整備が遅れ、一つでも機能しなければ、当然、多くの問題を抱えることになります。
そして、プラス1つ。
過去から未来:会社が得たナレッジやノウハウをしっかり蓄えていきます。それにより、全てのポジションにおいて、次世代はより進化することになります。
この情報伝達は、他の3つとは全く異質なものです。当然です、次元が違うのです。
先の3つは、同じ時間を生きています。そのため、何かと「調整」が働きます。
しかし、「過去から未来」は、それが起きません。会社やそのポジションから人が居なくなる、イコール、ノウハウの消滅になります。
これら、4つのものには、其々に仕組みが必要になります。全く別のものになります。その会社で起きる問題を聞けば、どの情報伝達に問題があるかは、容易に想像がつくものです。
多くの会社で、最初に問題になるのが、「上から下」の情報伝達です。
文鎮型組織から、階層組織に変更を進めます。
いままでは、社長と横一線の社員でした。それが、経営層―管理者層―判断層―作業層という四層になるのです。この四層という分業になるのです。
そのまま進めば、当然、問題が起きることになります。
・社員の一人が、汚いユニフォームで出社してきます。
・現場が勝手な判断をして、損害が出ました。
・管理者は、いままで通り案件をこなすだけで、その役目を果たしていません。
これらの問題が起きます。その原因は明確です。
伝えていないからです。伝えていないから、彼らは、そう成っているのです。
自分のその多くを、いままでの習慣で無自覚で行っています。何を基準に判断すればよいのかが解りません。そして、自分が何を期待されているのかを知りようがないのです。
この問題の解決方法は、明確です。「伝えること」です。
伝えれば、直っていきます。そして、まだズレがあるようならば、再度伝えるだけです。
その仕組みを整備していきます。
経営計画書、方針書、マニュアル、規定、人事制度、これらすべてが伝えるツールです。そして、会議、朝礼、面談、これら修正の機会を仕込んでいきます。
この時、間違っても、いままでのような「口」という選択をしてはいけません。
また、「社長自らの個別面談」も愚の骨頂です。その時は、治まっても、時が経てば、必ず再発します。仕組みになっていないからです。
口頭はダメ。
観て盗め!もダメ。
気づけ!は最悪。
そして、次が重要です。
人に言わせてもダメ、です。
先輩社員が後輩を指導します。
「そのユニフォームは、毎日、きれいなものに変えてきてください。」
この言葉の後ろには、「社内規定」があります。
管理者が現場で、「今回の件は、こう対応しよう」と判断し、指示を出します。この判断の根拠には、「理念」や「方針書」があります。
その言葉は、人の口から出ています。しかし、その裏には必ず仕組みがあるのです。だから、本人も自信を持って言うことができます。その時の周囲の目も、こちらの見方になってくれます。
後輩も現場も、受け入れやすくなります。そして、それを、逆恨みしたり、面と向かって意義を唱えたりすることも少なくなります。
冒頭のT社は、昨年、この間違いをしてしまいました。
新入社員の教育担当者に、Aさんを任命しました。Aさんは、非常に真面目で仕事も丁寧にこなす社員です。年齢も3つ違いとちょうど良いと判断しました。
振り返って、T社長は、言います。
「あれは、完全な丸投げでした。」
その時には、何の仕組みも整備されていませんでした。
入社式が終わると、すぐに、部署に配属です。T社長も、新入社員の様子を気にかけて、遠くからは観ていました。いつもAさんは、新入社員の隣に座って説明をしています。
3か月目に入った時、その新入社員が辞表を持ってきました。それには、T社長も驚きました。順調に行っていると思っていたのです。
その理由を訊くと、「仕事が難しすぎる。自分には無理だ。」という答えが返ってきました。
しかし、そんなはずは無いのです。確かに難しい業務もあるが、十分こなせることもあるはずです。それに、この時期で、そこまで新入社員に期待もしていません。T社長は、Aさんと話をすることにしました。
Aさんも、ショックを受けていました。T社長は、この2か月間に、何の業務を教えてきたのかをヒアリングしました。
すると、思うことがありました。「これは、詰め込み過ぎでないか。」
Aさん自身が優秀です。自分を基準にして教えてしまったのかもしれません。
また、自分がしっかり育てなければという気概を強く持ってしまったのかもしれません。そして、一つひとつに完璧を求めすぎて、細かく言い過ぎたのかもしれません。
Aさんは、言いました。
「私も、教えることに緊張していました。そのため、口調が強くなっていたのかもしれません。」
T社長は、反省しました。教育担当に任命したAさんも、まだ社会人3年生なのです。そんな彼女に、丸投げをしてしまったのです。
そして、数日後、Aさんから「会社を辞めさせてほしい」とT社長に申し出がありました。T社長は、必死に止めました。そして、お詫びをしました。
「完全に、私の落ち度である。マニュアルなども整備されていない、訓練プログラムもない。その状態でやらせてしまった。二人には、非常に申し訳ないことをした。」
Aさんは、会社に残ることを決めてくれました。
T社長は、この反省を今年に活かしたのでした。
今年もこの4月、多くの会社で新入社員を向かい入れていることでしょう。
その社員を、早く一人前とまでは言わないものの、最低限の態度を持った、最低限の作業ができる社員に、育てなければなりません。
そのために、訓練プログラムを準備することになります。
その時に忘れていけないのは、「主人公は、教育担当の社員である。」と言うことです。決して、その新入社員ではないのです。
教育担当の社員には、「新入社員の育成」を任せるのでなく、「訓練プログラムの実行」を依頼するのです。「このプログラムに沿って、〇〇君に教えてくれ(伝えてくれ)」となります。
訓練プログラムとは、先輩社員やその職場に対する依頼書なのです。
そこには、教える内容と標準時間が書かれています。
そして、一緒に、教える側の注意事項も書面でレクチャーします。
・名前で呼ぶ。名前で呼んでもらう。
・緊張をお互い解く。まずは、こちらがリラックスする。
・朝は、雑談から始める。
・怒る必要は全くなし。大げさに褒める必要もなし。いいね、でOK。
・説明を聞く時には、ペンを持ってもらう。マニュアルに直接メモを。
・一つ説明したら、疑問点を聴く。そして、自分の口で説明してもらう。
誰も人に教えた経験が無いのです。だから、教え方も伝えてあげるのです。
そしたら、すぐに、出来るようになります。意識するようになります。
そして、この時の「教育担当者」の経験が、管理者になる準備になります。
また、その「新入社員」は、「良い教育担当者」の準備になります。
こうして、組織の階層が出来ていくのです。
ぜひ、その環境をつくってあげてください。
(まとめ)
- 分業に取り掛かる時には、まずは、上から下に、伝える仕組みを整備する。
- 人に言わせてはいけない。仕組みに言わせるのである。
- 訓練の主人公は、教育担当者である。訓練プログラムは依頼書である。
- その結果、社内には、良い師弟関係が出来上がる。愛のある職場になる。
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