知らないと失敗する節税対策の落とし穴

人間は、誰しも「得をしたい！」「損したくない！」と思うものです。ですから、節税という言葉を聞くと、条件反射的に「税金を安くして、できるだけ得をしたい！」「無駄な税金を払って、損なんかしたくない！」と考えます。

「保険に入れば、節税になって将来の退職金にもなるはず・・・。」

「節税対策のために、ベンツやクルーザーを買って・・・。」

「赤字決算にするために、交際費をたくさんつかって・・・。」

これは、ある意味、当たり前の思考であって、自然なことです。そもそも節税自体が悪いことでもありません。法律にそった合法的な内容であれば、誰しも節税対策をすることはできます。

しかし、知っておかなければならないことがあります。

節税対策には、「節税対策をやって何ら問題がない会社」と、「節税対策をしてしまうと、節税効果以上のデメリットが待ち受けている会社」があるということです。

このことは、世の中に溢れている情報で、あまり多くは語られないことです。なぜなら、「節税商品を売りたい！」と考えている販売者からみれば、不都合な真実だからです。

それに、そもそも財務の知識がなく、そのこと自体を知らない販売者も多いものです。

節税対策をやって何ら問題がない会社であれば、気が済むまで節税対策をすれば良いです。しかし、節税効果以上のデメリットが待ち受けている会社が実践すれば、会社を潰すこともあります。

節税対策には、「お金を使わずにできる節税対策」と「お金を使う節税対策」があります。

詳細は割愛しますが、特に、「お金を使う節税対策」をしてしまうと、資金繰りが苦しくなったり、銀行依存の借入体質が加速したり、悪循環が待っています。

「お金が減っていく節税対策」は、基本的に、節税商品を購入し、意図的に赤字を作り出します。

その結果、財務体質は、強くなるどころか弱くなっていきます。

当然、銀行の格付けも落ちていき、自由にお金を借りられなくなります。

自由にお金が借りられない会社は、本当に困った時に銀行に助けてもらえません。会社の成長を加速するための投資に必要なお金も貸してもらえません。

ここで社長が知っておかなければならないことがあります。

それは、自分の会社は節税対策をしても大丈夫な時期なのか、それとも、節税対策は我慢して財務強化に注力すべき時期なのか、を社長自身が冷静に見極められるようにならなければならない、ということです。

この見極め、つまり、社長自身が財務思考で自社の状況を客観的に理解できる状態になっていない限り、無意識のうちに「ドンドン経営が苦しくなっていく…」という不都合な現実に直面することになるのです。

「節税対策」は、会社の財務体質を強くするための「一つの技術」です。しかし、正しいやり方を実践するためには、根本的に「財務」の知識が不可欠です。

なぜなら、実践しようとしている「節税対策」が、真にお金を残すものであるかを見極めるチカラが社長自身にないと、結果的に資金を目減りさせて、財務も悪化することに繋がるからです。

社長は財務の実務を知った上で、節税対策を行うべきです。もし、財務の知識がないまま保険会社や銀行などのセールスを鵜呑みにしたら、どうなることか…。

「正しく節税する」ことは、会社にお金を残して、内部留保を厚くすることにつながるため、重要な「社長の実務」の一つです。ただし、財務を知らないで実践できるほど甘いものではありません。

社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。

あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか？

ダイヤモンド財務®コンサルタント　舘野　愛