第42話 売上拡大の超重要な起点となる販路構築
「売上がここずっと低迷しており、突破口が見つからずなかなか伸びていきません。」
先日、当社へ来られた経営者からご相談を受けました。
※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。
「顧客の変化、競合の変化、世の中の変化、に対応せよ。」
と、どのビジネス書、マーケティングの本などにも書いてある名セリフ、と言ってはなんですが、本質であればある言葉ほど、じゃー、いったい自社はどうしたらいいの?なんて、悩みが深まるばかりですよね。
変化していることはわかっているし、それに対応できていないから売上が下がりつつあることも認識しているのだけれども、その変化に対して、どのように対応していったら良いのか、このことを具体的に考えていかなければ、いくら変化を見つめても、答えが出てくるわけではありません。
今や世の中的には、変化が起きるぞ、と大合唱ですね。人口減だ、少子高齢化だ、AIだ、うんぬん。新聞を開ければ、毎日毎日それらのことが書かれているし、テレビやネットの経済ニュースなど眺めても同様です。
しかしそれではいったい自社は何に取り組むべきなのか、という具体的な処方箋が書かれているわけではありません。
またはそれらの変化は、遠い世界での出来事で、日々目の前のことで精一杯だということも多くの企業がそうなのではないでしょうか。
しかし、大きな環境変化とは言わないまでも、実際に顧客の変化や競合の変化に対しては、敏感に感じ取ることは必要です。それらのことは売上に影響してくるとなれば、なおさらです。
それらに対応するために、特に考えなければならないことは、大きく2つあります。
1つは、自社の「売り物」を変化させること、もう1つは、「売り方」の変化です。
当社では基本的には、「売り物」から変化させていくことを常々コラムなどでもお伝えしておりますが、今回は、「売り方」に着目してお話ししたいと思います。
そして、その「売り方」の中でも、特に、販路や立地など、どのような場を通じて、お客様にアプローチしていくか、ビジネス用語的な言葉で言えば、「チャネル政策」についてお話しします。
ここ20年ぐらいになるでしょうか。一般消費財での販路の大きな変化は、インターネットによる販路です。いわゆるネット通販。自社サイトによるネット通販ももちろんですが、皆さんもご存じの、Amazon、楽天。これらも販路の一つです。
Amazonや楽天が成長していることはよく聞きますが、一方で、それらの販路を活かして売上を伸ばしている、という会社を、ここのところあまり聞きませんね。
いっときは楽天に出せば、売上が伸びていく企業をよく見かけましたが、今は、広告費用が足かせとなっているようです。売上を伸ばすためには、広告費をどんどんと投入しなければなりません。それでも売上が伸びていった時代がありましたが、現在は、費用対効果が厳しくなってきたという話も聞きます。また最近は、周りでも楽天でものを買うということを聞かなくなってきました。
一方でAmazon出店もあります。買い手である消費者からすれば、これほど便利なネット通販はありませんね。しかし、出店側からすると良し悪しがあります。
例えば、メーカーのオリジナリティーのある自社商品であっても、Amazonの競合である、他の小売業などとの価格競争によって、価格がどんどん下がります。
また、卸や小売店が出店して、仕入れ商品を売る場合は、他の卸や小売店との価格がサイトで一覧になってしまい、同じものであれば、安いところから購入されてしまい、これも価格競争に陥ります。
結局、価格競争を助長してしまう仕組みになっているため、量は捌けても、旨みのあるビジネスとして検討する際に、ただ単に出店すればよい、という訳でもありません。
一般消費財のわかりやすい販路ということで、Amazonや楽天を取り上げましたが、一方で、BtoB(Business to Businesu:企業間取引)などの業務用商材やサービスであっても、直接顧客に販売していく以外は、販路という視点が欠かせません。
いかにして販売を支援して頂けるキーとなる人や会社を見つけること、この視点を常に持ちながら、一番良いパートナーと組んでいくことが必須となります。
「チャネル政策」、いわゆる商材などの流通における販路開拓、また小売業などでの立地戦略は、ビジネスを拡大していく上で超重要ですが、そのことを意識的に戦略として考えている経営者は多くないものです。
しかし、そのちょっとの視点の違いで売上を大きく伸ばした例があります。
例えば、ハズキルーペという眼鏡。
最近は、CMなどでもよく見かけます。眼鏡単品のブランドで、あそこまでCMをガンガン打っているメーカーも珍しいです。
CMの効果もありながら、実は、大きく売上が上がった理由が、販路開拓にありました。当初は、眼鏡店や書店などで販売をしておりましたが、1万円もするような商品を手に取ろうとする人は多くありませんでした。
しかし、家電量販店のカウンターにハズキルーペのサンプルを置いたところから売上が大きくはねました。
なぜだかわかりますか?
家電量販店で大型家電製品を購入するときに、購入者は、配送申し込みなどで書類に記入することがあります。そのとき、特にシニア層のお客さんは、書類などの文字が小さくて見づらいときがあります。
そこで、カウンターに置いたハズキルーペを渡して、ハズキルーペで見ると文字が見やすいですよ、と店員が声をかけると、その見やすさに驚き、合わせて購入していきました。
もともと大型家電を高額で買うシーンですから、それと比較すると1万円という価格帯を安く感じる、そんな心理もあるのでしょう。
そのようにして、同じ商品でも、どの販路に流すか、そしてどの場所に置くかによって売上が大きく変わっていくという1つの例です。
当社のコンサルティング先企業である、雑貨卸売業の会社も、販路によって大きく売上を飛躍させました。
もともとは、雑貨を販売している小売店舗を中心として販路開拓を行っておりました。
そのような店舗は、数こそ多いものの、その店舗にわざわざ訪問しなければ、お客さんの目には触れません。
そこで販路戦略を変え、百貨店を中心としたポップアップストア(臨時的に期間限定で出店すること)や、催事などの出店を積極的に展開しました。
お客さんは、その百貨店や催事などに、他の用事で来ているのですが、百貨店の中でもポップアップストアは比較的目立つ場所に配置されており、目に付きます。
百貨店の意向としては、店舗の変化を演出することや賑わいを出したいということがあります。
そして、その出店展開の結果、多くのお客さんの目に触れて、その商品は、大きく売上を伸ばしました。
販路の活用という観点においてもう一つ述べます。
それは、必ずしも、単純に、これまでお付き合いのある販路ではない新しい販路開拓をすれば良いというわけではありません。
むしろ、今お付き合いのある販路に対して、自社の価値をよく理解してもらうことで、新しいお客さんへのアプローチを実現できた例があります。
これまで長らくお付き合いのあった卸問屋。
ある食品メーカーは、それまで商品サンプルを持って、その卸問屋の営業マンと、小売店のバイヤーへ同行営業を行っておりました。
当社のコンサルティング後、説明資料などに、しっかりと会社の強みを掲載し、卸問屋の営業マンとともに、新規取引を狙い、小売業へのバイヤーへ同行営業したときのことです。
これまで何度か訪問したことのある小売業へのバイヤーでしたが、取引につながりませんでした。それまでは商品単品の説明に終始していました。
しかし今回、改めて自社の強みを説明しました。そうしたら、その小売業のバイヤーから、そのようなことができるならぜひ取引したいと言われました。
実は、そのことについて一番ビックリしたのは、隣の卸問屋の営業マンでした。取引ができたことだけではなく、
「お宅そんなことできるの?だったら、もっと他に紹介したいところがあるよ。」
と言ってくれたのです。
その結果、大口の取引にもつながっていきました。
売上を上げていくことについて、販路つまり「チャネル政策」は不可欠です。
BtoC(Business to Consumer:対消費者ビジネス)でも、BtoB(Business to Business:企業間取引)でも、どの販路を開拓していくと、売上が上がっていくのか、またさらには、粗利益率を損なわない販路開拓や、ブランドにしていくための販路開拓、そんな視点も大切です。(ブランディングにつながる販路開拓は、また機会がありましたら改めてお話しします。)
そしてもう一つは、既存の販路であろうと新規の販路であろうと、しっかりと自社についての良さや強みを理解してもらう努力をしていくこと。このことから改めて取り組んでいくことも大切です。
あなたの会社は、「チャネル政策」において、戦略的に取り組んでいることはありますか?
株式会社ミスターマーケティング
代表コンサルタント
吉田 隆太
【追伸】
「チャネル政策 」の視点。つまり販路や立地戦略は、どの中小企業にも真剣に取り組んで欲しいものです。
ただ単に色々な販路にモノを流せば良いというわけではなく、いかに戦略的に有利に働く「売り方」を検討していく必要があります。
その「売り方」も含めた戦略をどのように構築していくのか、当社では、これまで10年300社以上を指導して体系化した戦略づくりのプロセスをセミナーでお伝えしております。
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