社長の元気が無くなる病。それを、脱するために必要なこととは!?
2年ぶりに、建設業H社を訪問しました。
以前、H社を、2年間ほどお手伝いをさせていただきました。その期間に、H社長は、みごと変革を成し遂げ、年商4億円を年商10億円にしました。その契約が終了してから、3年が経っています。
事務所に入ると、全体が沈んでいるように感じられます。
また、各机に、書類が雑然と積み上げられています。
応接室で社長を待っていると、奥様がお茶を持って、挨拶に来られました。
「先生、その節はありがとうございました。」
そして、言われます。
「最近の夫は、全く元気がありません。どうか、よろしくお願いします。」
ここ数年でH社は、「社長の元気が無くなる病」に見舞われていました。
その威力は覿面で、あの当時の勢いは完全に無くなっていたのです。
リーダーシップとは、『導く力』となります。
その力によって、チームのメンバーを導くことをします。
「やってやろう!」、「頑張ろう!」、「行動しよう!」、そして、「物心で満たされた状態」に導きます。
リーダーシップに対するものは、マネジメントです。
先日のコラムでご説明した通り、マネジメントとは『怠け者対策』です。
『導く力』と『怠け者対策』は、補完関係にあります。この二つが揃うことで、最強になります。
『導く力』である、リーダーシップとは、複数の要素で形成されます。
メンバーの心を「やってやろう!」の領域にするために、何が必要かを考えれば、自ずとその答えは出てきます。以下にその4つを挙げます。
1.意義のある目的:誰かを喜ばせることができる、社会に貢献することができる。そのような、やる気の出るチームの目的を、設定する必要があります。社会正義や道徳に反すること、金儲けだけの私欲ではダメなのです。
2.勝てる事業モデル:お客様に必要とされない、または、競合に負ける。これでは、やる気は起きません。勝てそうな、そして、実際に動いてみて勝てる事業モデルの設計が必要です。
3.実務能力:実行計画を立て、そして、そのPDCAをしっかり回す。ロジックであり、効率的です。言いっぱなし、やりっぱなしは、実務を担うメンバーのやる気を見事に削ぎ落します。
4.リーダーの態度:メンバーは、絶えずリーダーを観ています。目的に対し、その言動に一貫性があるか。チームに対し、オープンであり、公平か。リーダーとしての役割に向かっているか。そのリーダーに向けられた信頼が、メンバーに力を与え、かつ、メンバー間の協同を引き出します。
これらによって、リーダーシップが形成されます。
どれが欠けてもいけません。これらすべてが必要になります。
リーダーシップで導き、そして、マネジメントで補完をします。
順番は、リーダーシップが先になります。必ず、マネジメントが後です。
リーダーシップとはその進む方向であり、効果性です。
マネジメントとはそのための運営であり、効率性です。
変革に取り組む際にも、この順番を守ることになります。
事業、組織、仕組み。
事業モデルの変革には、よりリーダーシップが必要になります。それに対し、仕組みには、マネジメントが必要になります。
そのため、当社のコンサルティングでも、この順番でプログラムを組んでおります。
リーダーシップという言葉は、「カリスマ」という言葉とセットで使われることが多くあります。この時の「カリスマ」という言葉には、どこか「生まれ持ったもの」というニュアンスが含まれます。
実は、そんなことは、全くありません。先ほどの要素を見る通り、リーダーシップとは、学び取るものなのです。それは、マネジメントも同様です。リーダーシップもマネジメントも、概念であり、能力であり、手段なのです。学び習得する努力が必要ということです。
この両方を、組織を導く者は、習得しなければなりません。
社長には、両方必要になるのです。どちらかが欠けてもいけません。
リーダーシップが弱い組織は、向かう先を無くすことになります。当然、具体的な方針も目標も無くなります。それは、スピードダウン、そして、停滞を招くことになります。
マネジメントが弱い組織では、何も形になっていきません。積み上がっていかないのです。その状況に、メンバーは疲弊してくることになります。そして、職場には、怠惰、利己主義が蔓延することになります。
一人の人間が持つのは、片方だけで良いということは絶対にありません。
リーダーシップとマネジメントとは、光と影。強い光には、強い影が必要なのです。
過去に、自分はリーダーだからリーダーシップの役割だけでよいと言った社長がいました。マネジメントは、幹部に丸投げです。当然、うまく行きませんでした。マネジメントを軽視したのです。また、マネジメントの方向性を示すことも出来なかったのです。マネジメントを誰かに依頼するためには、マネジメントの能力が必要になるのです。
冒頭のH社は、完全に、リーダーシップが枯渇した状態でした。
社員は、どの方向に頑張れば良いのか解らなくなっていたのです。その結果、やることも複雑になってきます。方向性が無いために、お客様から言われることをすべて受けるようになっていました。また、業務を整理することもできません。
そして、自分達で判断できないことが、後回しになっていきます。そんな日々です、職場の雰囲気はどんどん悪くなっていきました。
そして、方向性を失った人間に、ろくなことがありません。陰口、派閥など、人間の性分の悪いところが出始めるのです。
その原因は、一つしかありません。H社長自身のリーダーシップの枯渇です。H社長は、自分の目標を失ってしまったのです。
H社長は、スコップ一つで創業しました。あれから、20年、猛烈に働いてきました。そして、念願の年商10億円を達成したのです。
十分な利益を出しています。そして、当時からは考えられないぐらいの役員報酬も、取れるようになりました。
その結果、元気が無くなってきたのです。
自分の中の緊張感が減っていくことを感じる日々でした。長い習慣であった日の出前に起き、仕事をすることも無くなりました。現場や客先を回ることも、殆どありません。
そして、このコロナ禍です。更にその状態は悪化したのです。益々、外に出ることが無くなりました。業界的に大きな影響は無いものの、H社長の元気は益々無くなっていったのです。
そんなタイミングで、私は、H社を訪問しました。
最初は、奥様からご連絡をいただきました。そして、私から様子伺いのメールをH社長に送ると、ぜひ相談に乗ってほしいと返事が来たのです。
冒頭の訪問から一年が経ちます。まだ、コロナ禍は続いています。
しかし、H社長は、完全に元気を取り戻しています。
まずやったのが、「飲み会」の再開です。
世の多くの社長同様、H社長も、経営者仲間とワイワイやることを必要としていたのです。気晴らし、そして、事業のアイディアや頑張っている人に刺激を貰います。また、そこで先輩経営者から厳しい指摘を受けることもあります。
その飲み会が、H社長に元気を与えていたのです。
そして、裏では、次の大きな目標づくりに取り掛かりました。
目標がない状態を放置してはいけません。また、いつかは目標が出来るだろうと思ってもいけません。それに真摯に向かうことが必要です。そして、足掻くことです。
考える、紙に書いてみる、人に話してみるのです。そうしていると、年商30億円にいけそうな事業モデルがH社長に振ってきたのです。それ以上に、もう少し大きくしようという意欲が湧いてきたのでした。
そんな中、ある日H社長から、電話で連絡がありました。
「先生、近いうちに飲みにいきませんか。私も、東京に引っ越しました。」
自分の不甲斐なさを一番感じていたのは、H社長だったのです。この田舎では、周囲の目もあり、自分も慣れ切っています。自分を変えるためには、環境を変えてみようと、考えたのでした。そして、まずは東京にマンションを借り、数か月住んでみることにしたのです。
すでに、業務の多くは、リモートで出来るようになっていました。そして、奥様もその後押しをしました。
H社長は、言われました。
「先生、どうなるか解りませんが、取り敢えずワクワクしています。」
(まとめ)
- 多くの経営者は、人とワイワイやることで元気とアイディアを得る。自分がそれに当てはまるのであれば、それを習慣にすること。
- 目標は、無理やりでも持つ。それを考える時間をしっかりつくること。考え続けていると、遠くないその日にストンと何かが落ちてくる。
- 自分に真摯に向かう。自分は何をしたいのか、自分に問い続けること。
- 人は、自分で自分を変えることは出来ない。自分を変えたいと思ったのであれば、環境を変えること。
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