これからの時代、管理者は不要になる!?(新しい組織論が出るたびに思うこと。)
クライアントM社長との、コンサルティング後の飲みの席でのことです。
先ほどまで、事業の今後の方針について意見交換を行っていました。
一杯目を待っている間に、M社長は、鞄から一冊の本を取り出しました。
「先生、この組織論の本に、これからの時代は管理者はいらない、と書いてありました。」
その本は、私も読んでいます。大変勉強になりました。
M社は、4年前は社員数5名ほどでした。今は40名です。
私は、お聞きしました。「御社で、管理者なしは可能ですか?」
M社長は、少し考え答えました。
「いいえ、想像できません。」(笑)
マネジメント イコール 怠け者対策。
人間は、怠けるように出来ています。
人間は、自分で目標を持ち、自分の行動を律することができる生き物です。
その反面、やはり生き物らしい面も持っています。楽を求めたり、誘惑に負けたりします。そして、波もあります。
人間はどのような状況で、怠け心を起こしやすいのか。代表的なものを下記に4つ挙げます。
その1.人数が多い
自分以外の人がいると、「任せていいかなぁ」、「やってくれるだろう」というふうに思えてしまいます。チームの人数が、4名以上になるとその意識は急激に強くなります。人数が増えるほど、「自分ぐらいはいいかな」になります。
その2.人との約束がない
自分以外の人との約束が無いと、人は怠けるものです。「上司からの依頼」も「お客様とのアポ」も約束です。企画書の作成も、上司がいるからやるのです。見積書も、お客様を明日訪問するから作成するのです。
その3.期限がない
その約束に、期限がないと覿面です。「いつでもいいよ」、「できたら連絡してね」この言葉を真に受け、手を付けるのが益々遅くなります。
その4.やらなくても、生きていける
その結果に対し、何も罰則がありません。やらなくても、済んでいきます。怒る人もいなければ、自分が明日からすぐに喰えなくなるわけでもありません。
これを、書いていて思いました。
会社とは、なんて「怠け心が生まれやすい環境であることか」ということを。
何もしなければ、会社は、怠け者の巣窟になってしまいます。
「人間とはそういうものである」という前提で、仕掛けを設けておく必要があります。
その仕掛けのことを、マネジメントと呼ぶのです。
マネジメントは、先に挙げた「怠け心を起こしやすい状況」に対して、次の通りの明確な指針を持っています。
1.人数の制限
一つのチームに、やはり上限となる人数がある。
・複雑な業務では、リーダーがフォローできるのは4名まで。例えば、営業部。
・工場での単調作業は、最大15名。(実際には中を2班に分ける)
・深くディスカッションできるのは4名まで。10名では情報共有のみ(裏の話の共有もダメ)。
2.一人で完結させない
本来、組織内で、一人で完結できる仕事は無い。上司への報告、後工程への引き渡し、ミーティングの設定。これらを明確にして、より強制力をかける。
3.期限を切る
指示にはすべて期限を設ける。「来月の中旬」や「できるだけ早く」などは、期限が無いのと一緒である。営業日報など帳票には、次の行動予定の日付を入れる欄をつくる。
4.褒めると叱る。飴と鞭。
正確には、褒めるではなく、認めるである。「サンキュー」で十分。不実行に対しては、「どうしてやらないの?」と詰めること。それを許せば、益々、軽く見るようになる。そして、評価と処遇に反映させる。
良く出来た人ばかりなら、これらは必要がありません。
彼らは、自分で、自分をマネジメントします。メモをしっかり取ります、自分で期限を切ります、ミスを犯せば再発が無いように仕事のやり方を工夫します。
でも、世の中には、そんな人は、そう多くはないのです。そして、それ以上に、自分の会社には、いないのです。いても、数人です。
それを嘆く必要はありません。それが、普通なのです。
その割合に多少の差はあったとしても、そんな会社が大方なのです。
でも、成果には、大きな差ができます。
それは、事業モデルとマネジメントの差があるからです。
ある会社は、社員を変えようと、多くの時間とお金を教育に使っています。
ある会社は、社員はそのままに、事業とマネジメントの構築に向かっています。
その結果、事業モデルとマネジメントに差が出来たのです。それが成果の差のです。
そもそも、事業とは、「優秀な人を当てにしないこと」を前提としています。
少しオーバーに表現するとこうなります。
「社長と一部の優秀な社員が必死になって作り上げた一つの必勝パターンを、ろくでもないやつを安く沢山雇って、大量に生産し、大きく儲ける。」
ここが事業のスタートなのです。
だから、怠け者対策、すなわち、マネジメントが必要なのです。
そして、お客様からお金を頂くということは、本来大変なことなのです。
他社と違うことを提供する。人がやりたくないことや面倒くさいことを替わりにやる。
それを、他社に先駆けて、または、効率よく(低コストで)やるから、儲かるのです。
ということは、社員には、少しは無理をしてもらわなければならないということです。それを、「充実」と受け取るか、「苦痛」と受け取るかは、本人の素養が半分、マネジメントの出来が半分となります。
その困難なことに取り組ませること、そして、その時に前向きな心を保たせること、失敗し心折れた時に再度取り組むように促すこと。それこそが、マネジメントの役目なのです。
そして、その機能を社内に構築する者、そして、それを行使する者が必要になります。
人間が人間である限り、事業が事業である限り、それは絶対に必要なのです。
その結果が、ピラミッド型の階層組織なのです。
そうならざるを得ないのです。その形こそが、理想形なのです。
新しい組織論が出るたびに、靡く人がいます。
フラットな組織、自由自在に変形する組織、ボトムアップ型、マトリックス型。
それらには、それらしい名前が付けられます。そして、これからの時代の組織と言われます。
しかし、それらが、実際になることはありません。
その多くは、原則に則していないからです。
ある一つの企業だけで、成り立っているケースはあります。それはその『トップ(社長)』だから出来ているのです。そこに、体系立った理論はありません。やはり、再現性は無いのです。
管理者のいらない組織が有り得るか?
答えは、NOです。民間企業に限らず、公の組織や非営利組織でも必要です。最近のミニ企業や、フリーランスを多く使う企業も同じです。
そこに人がいる限り、マネジメント、管理者は必要になります。
そのマネジメントの仕組み、人と管理者を動かす仕組みをつくるべきです。
それを、習得すべきなのです。
その原則を守りつつ、環境と自分が目指すものによって、変化させていくことです。
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